僕は歩いていた。
ずっと一本道を。
ふと空を見上げると黒色の鳥が飛んでいた。
恐らくはカラスの群れだろう。
僕は散歩をしていてこの光景を目にし、風に乗って飛んでいるカラスに雄大さを感じた。
カラスの群れがいなくなった後、青に染め行く空の時間と、照りつける太陽に温度を感じた。
そのまま歩いていると、人が見えた。
歩を進めるうちに段々と輪郭がはっきりしてきた。
すれ違い様にラベンダーの様な匂いがした。
香水だろうか。
ふと思い出した。
その香りに微かな記憶をかすめたことに。
そう・・・。あれは8年前、当時勤めていた職場の女性とのことに。
恋をした。
その女性を。
しかし、僕が勤めてからすぐに転勤になった。
今になって思う。
その女性が僕に与えた影響を。
微かに匂ったそのラベンダーの香水に懐かしさを感じた。
すれ違ったその人にその女性の影を想った。
これから先この香りを嗅ぐ時があるとすれば、また彼女の事を想うことだろう。
そう・・・。この花の香りを思い出しながら。