「愛しのアクアリウム」~第八話~

第八章「トラウマの再会」

「おはよー!茉莉華!手伝いに来たよ!!」と夏の日差しが眩しい中、智香達が水族館で忙しくしている茉莉華に声をかけてきた。
「おはよう!みんな!!夏の暑さで大変な中、わざわざ来てくれてありがとう!」茉莉華もにっこり笑顔で智香達と挨拶をし、話をした。
「なぁに、ウチら暇だったしね。友達として何か手伝えることないかなって!!」
「だから、みんなで茉莉華の飼育員の仕事を手伝いたいと思ってな!」智香達の協力したいという優しさに茉莉華は少し瞳がじーんときて潤んでいた。
「みんな・・・・!!中々忙しくて遊べなくてごめんね!これからもみんなで楽しもう!!ノエルも和也叔父さんも水族館の中でみんなを待ってるし、ささっ、水族館の中に入って入って!!」と茉莉華は智香達を水族館の中へ招いて案内をした。
「わぁ~・・・・!綺麗・・・・!!絵の参考になりそう・・・・!!」
「ともかっちは絵が得意だからね。魚が生きているって感じでいいなぁ~・・・!!」
「魚達の可愛さに癒されそうだ・・・・!」とみんなは水槽を見ながら歩いて魚達を見ていた。

「ふふふ、魚達可愛いよね♡」茉莉華は楽しそうに智香達を見ていた。
「このまま真っ直ぐ行けば、ノエルのいるシャチの水槽が見れるよ!ここに、和也叔父さんがいるからね!」
「はーい!」と智香達は返事をし、茉莉華の案内についていった。水族館の中は開館前の誰も客のいない時間帯の午前8時だった。その1時間後に開館のため、シャチの水槽コーナーに着き、智香達は急いで水族館の制服に着替え、名札を付けて館長であり、シャチを担当してる和也叔父さんに挨拶をした。
「おはようございます!今日一日よろしくお願いします!」
「おはよう。茉莉華から話は聞いてるよ。いつも茉莉華と仲良くしてくれてありがとう。改めて僕は館長でシャチの飼育係の浦海和也だ。わからないことがあったらいつでも聞いてね。よろしくね。」と和也叔父さんは笑顔で智香達に接した。
「茉莉華のお父さん、めっちゃ優しいね!」
「それな!マジ神対応!」
「お前の親父最高だな!」と茉莉華に和也叔父さんのことを話した。茉莉華は苦笑いで「う、うん⋯。」答えた。
(和也叔父さんは本当は血縁的に叔父何だけどな・・・・・。)
智香達は餌の入ったバケツをシャチ担当の飼育員や茉莉華からもらい、仕事を体験した。智香達は初めてシャチを間近で見るので、触るのを緊張しながら優しくお世話をした。
「シャチって実際間近で見るとすごい迫力ある~!」
「うぉっ⁉すごく鋭い牙だな・・・!!」
「さすが海のギャングだね!!そして、鳴き声も可愛い~♡」
「「キュイッ」って鳴くから可愛いよね。さ、試しに餌と氷をあげてみて!」と茉莉華はみんなに教えた。他の飼育員さんも優しく見守っていた。
「は~い。ご飯だよ〜!」と智香はシャチに餌をあげた。李衣紗や久彦も他のシャチに餌をあげた。すると向こうからシャチ姿のノエルがご飯の合図と共に智香達の方に泳いできた。
「よぉ!お前ら!今日忙しい中来てくれてありがとな!」ノエルはシャチの姿のまま話しかける。
「ノエル君!シャチの姿でも喋れるんだね!」智香達はシャチの姿で喋っているノエルに驚いていた。

「すげぇ⋯。まるでファンタジーみたいだ⋯!」
「まぢびっくり!」李衣紗も久彦も驚きすぎて口もポカンと空いていた。
「へへっ、今日は俺達のショーが午前10時からあるからな!」
「そうなのか!そのためにも頑張らなくっちゃな!」
「じゃあ最初は掃除からだね!みんな頑張ろ!」と茉莉華の合図で1時間後の開館の作業を開始した。水槽やショーのステージを掃除し、ノエル率いるシャチ達の身体も掃除をしたりした。そして時間はあっという間に開館の時間になり、お客さんも入ってきた。夏休みなので子連れの人や学生のカップルも来ていた。
「うわぁ~!すごい人⋯!」
「やっぱ夏休みは普通の日と違って、人で大混雑だね⋯。」と智香と久彦は作業しながら水族館に来る人を見ていた。そして時間は午前の9時半近くになり、シャチショーの30分前になった。茉莉華達はシャチ担当の飼育員さんの指示に従って、ウェットスーツに着替えた。ゴーグルもないので、智香達は少し不安ながらもシャチショーに飼育員として出た。
「た、沢山の人前で緊張する〜!」
「大丈夫だよ!智香ちゃん!学園祭と思えば大丈夫!」茉莉華は緊張している智香の手を優しく握った。時間はいよいよ10時になり、シャチショーが始まった。茉莉華は明るい声で司会をした。
「みなさーん!こんにちは!お元気ですか?お姉さんも元気です!これから、シャチショーの午前の部を始めたいと思います!浦海水族館の可愛いシャチ達のパフォーマンスをとくとご覧ください!!そして、今日は~、私の友達が水族館を盛り上げようとボランティアとしてお手伝いをしに来てくれてます!それでは、自己紹介を一人ひとりどうぞ!」と茉莉華からマイクを渡されると、智香達も茉莉華の手本を見ながら明るい声で観客に自己紹介をした。観客のみんなも笑顔で智香達を見守った。
「それではさっそくこの浦海水族館のアイドル、ノエル君とナナちゃん、ハナちゃんにジャンプをしてもらいたいと思います!水がかなりかかるので、濡れたくない人はスタッフからレインコートを貰って服の上に着てください!」と茉莉華の合図とともにノエル率いるシャチ達が上のボールにめがけてジャンプをした。水は観客席の上の段までかかった。観客も「おぉ~っ」と大歓声をあげていた。智香達も自分達が出来るところまでのパフォーマンスを披露した。特に久彦はスキューバダイビングの経験があるため、茉莉華と共に泳いでるシャチに乗ってパフォーマンスをした。すると真ん中の観客席から茉莉華の実の両親が水槽の前へ歩いてきてクレームを大声で言った。
「ちょっと!飼育員さん!私の美しいメイクフェイスがシャチの水しぶきのせいで落ちちゃったじゃなぁ〜い。⋯ってよく見たら茉莉華じゃない?久しぶりねw」と茉莉華の実母が茉莉華に手を振った。実父もニヤリと茉莉華を見ていた。

「え⋯、な、何でお母さんとお父さんが⋯ここにいるの!?」茉莉華は絶望な顔をしてた。茉莉華の様子がおかしいことに気がついた智香は、茉莉華に話し掛けた。
「あの人達が茉莉華のご両親なの?」と智香が言うと、茉莉華はコクリと頷いて「うん。」と答えた。
「あいつらが茉莉華の親か⋯。」
「まりかっち、和也叔父さんとはもしかして⋯。」久彦と李衣紗も茉莉華の本当の親に驚いていた。
「実は⋯、観客席の一番前まで来て大声でクレームを言ってるのが私の本当の親なの。和也叔父さんとは⋯、親戚の関係だけど、和也叔父さんは実の両親から虐待された私を養子にしてくれたの。」茉莉華は俯きながら智香達に話した。もちろんマイクもONになっているので、観客にも茉莉華と和也叔父さんとの家族関係のことも丸聞こえだった。
「なるほど⋯、そういう事情があったのか。」と茉莉華の事情を話していると、茉莉華の実の両親がスタッフの注意を聞かずに、ズカズカと茉莉華達のいるステージへと行った。
「お客様!そこは立ち入り禁止です!!我々スタッフや飼育員の方だけが入れるところです!」他の係員のスタッフが止めるも、茉莉華の両親は自分達を注意したスタッフを睨みつけた。
「うるさいわね!お客様はあんたらの神様なんだからいいでしょう?私らはただ、このシャチの飼育員の女に用があるの!」
「そうだそうだ。ショーにいるあの飼育員は私らの愛しき娘なんだ。」と茉莉華の両親はそう言い張り、ドアを開けて茉莉華の近くまで行った。
「・・・・・・・っ!」茉莉華は絶句して後ずさりをしていた。智香達も警戒していた。

「何なのあの夫婦・・・・。あんな常識知らずな奴がまりかっちの両親なんて信じられない!」と李衣紗は茉莉華の両親を睨んでいた。
「茉莉華ちゃん、大丈夫?後ろに隠れてていいからね。」
「茉莉華、心配すんな。後は俺達に任せろ。」智香と久彦も茉莉華を心配し、慰めていた。
「うん・・・・。みんな、ありがとう・・・・。」茉莉華はそう言って震えながら智香の後ろに隠れた。ノエルも水槽の中から一部始終を見て、茉莉華の近くに来て茉莉華の両親を睨みながら心配していた。
「あいつらが茉莉華を苦しませた茉莉華の実の両親か・・・・・。今でいう毒親っていうやつか・・・・・・。あいつらが何かする前に、人の姿になって茉莉華を守らなきゃな・・・・・。」とノエルは水槽に潜って人の姿に変身した。様子を見るために水槽の中から茉莉華と両親のやり取りを見ていた。智香も李衣紗も久彦も茉莉華を守るように茉莉華の両親に説得をしていた。
「茉莉華ったら偉いわね〜。お母さん達のために水族館で働いて稼いでるなんてっ♡シャチのお世話なんて手を焼くくらい大変だろうにね。w貴方もそう思わない?」
「そうだなw出来損ない茉莉華が飼育員になんて務まるわけないw大人の仕事の忙しさを思い知るがいい。w」茉莉華の両親は茉莉華を相変わらず嘲笑っていた。智香達やノエルは発言に怒りが込み上げる。
「あんたら今、茉莉華ちゃんのことを「出来損ない」って⋯!?」
「親としてその発言はどうなんだ!!それでもお前らは親か!!」
「まりかっちはおばさん達と違って、一生懸命頑張ってるよ!!」みんなそれぞれ茉莉華の両親に怒った。李衣紗の「おばさん」という発言に茉莉華の母親がキレた。
「お、おばさんですってぇ~⁉大人に向かって何て口を利くの!!この金髪不良女!!あんたらには関係ないことでしょ?」完全に茉莉華の実母はブチ切れ状態。茉莉華の母に続き、父も智香達に言った。
「私達はね、娘の茉莉華に用があってきたんだ。茉莉華とヨリを戻して家族になるためにね。だから、人の家庭の事情に口を挟まないでくれるかな?」と父も言うと、智香達は言い返せないで黙っていた。

「くっ・・・・・。確かに茉莉華の家族じゃないから何も言えないけど・・・・・、友達だから守りたいんだ。」久彦は言い返し辛さに悔しさを感じていた。茉莉華も実の親とまた家族になるのは嫌になっていた。
「ありがとう。みんな。後は私が言い返すから⋯。ごめんね。みんなを巻き込んじゃって⋯。」と茉莉華は智香達に謝りながら言った。自分の家庭のことで心配をかけさせたくないのだろう。
「ふん、茉莉華のくせに生意気だな。段々和也に似てきたかもな。言い訳もお人好しも。余計なお世話だ。水族館で飼育なんて、何って汚らしい!!」
「そんな汚い仕事が役立たずの茉莉華にはお似合いよ。その御蔭で茉莉華にお金ががっぽり入ったんだから。」茉莉華の両親は和也叔父さんの悪口まで言った。
「和也叔父さんの事を悪く言わないで!!和也叔父さんは、みんなを楽しませる為に、水族館の仕事を頑張ってるの!!私も動物やみんなが大好きだから頑張れるの!!生き物達だって、毎日生きるために頑張っているんだから!!だから、私はお母さん達の所に帰りたくない!!」と茉莉華は両親に言い返して、みんなを守った。
「いつまで歯向かう気なの?茉莉華。」
「茉莉華はこれから家に帰るんだ。こんな下らない仕事を辞めてな。」と茉莉華の言葉に腹が立った両親は、茉莉華を家に帰らせようと手を強く引っ張った。茉莉華は激しく抵抗する。
「離して⋯!もうあなた達は私のお母さんお父さんじゃない!私の家族は、和也叔父さん達だから!仕事も楽しいし、人間になれるシャチと恋人になったし、友達もたくさん出来て、楽しいから!だから私は帰りたくない!」茉莉華は両親に対する本音を言った途端、両親は更に怒り、茉莉華に叩いたり、髪を引っ張ったりと暴力を振るった。
「うるさい!我儘もいい加減にしろ!親に歯向かう気か!」
「そうよ。私達は茉莉華が好きだから、言ってるのよ!ろくな点数もとれないわ、運動の成績も駄目だわ、いつになったら満点とれるの!?」茉莉華の両親は、茉莉華を責めるように言った。李衣紗はカチンときて茉莉華の両親に怒りそうになったが、「今は茉莉華に任せておこう。」と智香達に止められた。
「確かに⋯。私は運動も勉強もダメダメだけど、諦めたくないの!日々私も努力してるし、頑張ってるの!水泳だって好きだから今でも続けてる!だからもう、2人に縛られたくない!自由に頑張りたい!!」と茉莉華は両親に暴力や悪口を言われても言い返したが、怒りの頂点がMAXになった実の父が茉莉華を水槽プールの前まで追いやった。ここでバランスを崩すとシャチの水槽の中に落ちてしまう。茉莉華はストレスで足も唇も震えていた。
「親に口答えするなんてまるでうちの娘じゃないようだな。そんなに帰りたくないなら、この汚い水の中にでも潜ってろ!!」と茉莉華の父は言い、茉莉華を水槽の中へバシャーン!!と蹴り落した。
「きゃっ!!」

「茉莉華ちゃん!!」
「茉莉華・・・・!!」
「まりかっち!!」茉莉華の悲鳴と共に智香達も叫んでいた。そんな中、茉莉華の実の両親は茉莉華を始末して、清々しい顔になっていた。
「あなた達、よくも茉莉華ちゃんを⋯!親として失格ですね!!直ちに警察に通報しますから!!」
「今おばさん達がやってる行動、観客のみんな見てるし、防犯カメラの映像に映っているんだよね〜w大人として、親として、マジ終わってるわ〜ww。久彦、和也さん呼んで来て!!」と茉莉華の両親に怒りながら、和也叔父さんを呼びに行くよう、李衣紗は久彦に頼んだ。
「わかった!呼んで来るよ!」と言って久彦は和也叔父さんに今の出来事を報告する為に館内を探しながら走った。その頃茉莉華は、水槽の中に沈んでいき、下にいくたびに意識も遠退いていく。
(ブクブクッ⋯私ってやっぱり認められない人生なのかな⋯。)
茉莉華が沈みながら絶望していたその瞬間・・・・、ノエルが茉莉華をお姫様抱っこをして泳ぎながらステージの上へと上がった。
「ノエル・・・・・・。」
「茉莉華は何も悪くないから気にすんなって!でも、無事でよかった・・・・!後は俺に任せろ!」とノエルは茉莉華を励ます。

智香達も茉莉華を心配して駆け寄った。
「茉莉華ちゃん!無事だったのね・・・!!」
「まりかっち大丈夫だった⁉今、久彦が和也さんを呼びに行ったから!!」心配していた智香と李衣紗の二人の目は潤んでいた。
「二人共・・・・、心配してくれたの・・・・?ノエルも久彦君も・・・・。」茉莉華は両親に水槽の中へと投げられたが、意識も体の状態もノエルが助けたおかげで何もなく無事だった。観客席の人達も茉莉華が無事なのを見て安堵していた。智香と李衣紗が泣きながら茉莉華をぎゅうっと抱きしめた。
「当たり前じゃん!!だって私達、茉莉華の友達だもん!」
「そうだよ!助けるのは友達として当たり前じゃん!!ノエルにとって、茉莉華は大切な恋人だからノエルは茉莉華を助けたんだよ!!」
「茉莉華が無事で良かった・・・・!こいつらの事は後は俺に任せろ。何があっても言い返すから!!」とノエルは茉莉華や智香達を守った。すると茉莉華の実母はハイヒールのそこを強く「カツン!!」と鳴らし、嘲笑していた。
「友情ごっこはここでおしまいよ。まさか、茉莉華のも庇う人が沢山出来たとはねwwwwそれで同情してもらおうという茉莉華の精神を疑うわwwwwwあー、笑える笑える。」悪びれもなく平然と文句を言っている茉莉華の両親を見てノエルは腹が立ち、ガツンと怒った。
「さっきから聞いてれば・・・・・、茉莉華とヨリを戻そうだの、我が儘だの、実の娘に愛情もなく文句ばっかり言いやがって・・・・!!それでもお前らは茉莉華の親か⁉聞いている限り、ババァとジジィは親の資格がなさそうだなァ?普通親は・・・・、生まれた子供に愛情を育んだり、褒めたり、わからないことがあれば教えたりするのが親の役目なんじゃないのか⁉茉莉華は一生懸命真面目に頑張ってんだよ!!お前らとは違ってな!!」ノエルは一部始終を見ていたので、かなり激怒していた。
「いきなり水槽から人が現れるなんて気味が悪いわね。アンタ、茉莉華の何者なのよ。人の親に向かってババァだのジジィだの乱暴な口調を使って!!教育が悪いわね!!」
「茉莉華が一生懸命⁉何とぼけたこと言ってんだぁ?テストでも運動でも低い点数を取る茉莉華が一生懸命なわけないだろwwwwあと私達は、虐待などやっていない。親としての躾なんだよ!君が茉莉華の男友達か彼氏かどうか知らんけど、人の家庭に余計な口を挟まないでくれるかね?」と茉莉華の両親も負けじとノエルに反論した。自分達が悪いと認めたくないようだ。
「そうやって、お前らは反論して反省してないようだな・・・・・・。お前らの言い分は、よくわかった・・・・。」とノエルは怒りの頂点に達し、シャチの姿に戻った。

「ノエル・・・・・⁉もしかして・・・・!!」
「テメェらよくも俺の大事な人を、こんな目に合わせたなァ!?茉莉華がこれまで味わった痛み、思い知るがいい!」と茉莉華の両親の方向に威嚇し、2人を水槽の中に投げ飛ばした。
「きゃあぁぁぁぁっ!何すんのよ!」
「本当に私達は何もしてない!お願いだ!信じてくれ!!」とビビる茉莉華の両親は自分達がやった事を意地でも認めなかった。ノエルの怒りは更にヒートアップし、2人を追いかけ始めた。念の為に、智香と李衣紗がマイクで観客に注意を呼びかけた。
「ノエル君は今、感情が怒りで高ぶっています。水しぶきが飛ぶ可能性があるので、濡れないようにカッパを貰ってない人は、スタッフから貰い、着用してください。」
「危ないですので、水槽の目の前には近づかないで下さい!」と観客に指示をし、久彦に連絡をとった。観客も指示に従って、カッパを貰って着用した。会場にいる人達は、茉莉華の実の両親に怒りを感じていた。
「この毒親め!!茉莉華ちゃんをいじめるな〜!!」
「あなた達は親失格よー!!」観客が怒っているのを見て、ノエルは更に茉莉華の両親を追い掛け回した。茉莉華の両親二人は必死になってノエルから逃げていた。
「うわぁぁぁぁっ!!こっちに来んな!!私達は茉莉華に躾をしただけだっ!!追いかけるなら、出来の悪い茉莉華を追いかけてくれ!!」
「そうよ!!追いかける相手を間違えているわ!!っていうか、アンタの大事な人が茉莉華なの⁉茉莉華の彼氏がシャチなんて、変な者が変なのを呼ぶのね。」ノエルに追いかけられている状態でも反省していないため、ノエルはジャンプして茉莉華の両親を口の中に入れて出して、尾ひれで殴った。
「茉莉華は出来何か悪くない!!そうやって真面目な大切な自分の子供を虐めるお前らの方が異常だぁぁぁぁぁぁぁっ!!もうお前らなんか茉莉華の親でも何でもねぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!」とノエルはもう一回ジャンプし、ステージに放り投げた。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
ーザパーンッッ!!ー

「・・・・・・はぁっ・・・・・、はぁっ・・・・・・。やっと安心だわ・・・・・・。もう、ブランド服がずぶ濡れじゃない・・・・・。」
「君は人様に向かってなんてことをしてくれたんだ!!私や妻のスマホや服を台無しにして・・・・・・・。茉莉華に払わせて弁償してもらう!!」と茉莉華の両親は逆ギレしていた。
「茉莉華に弁償⁉まだ口を言い返す元気があるのかよ!!それはこっちのセリフだ!!お前らがショーを台無しにした分、茉莉華を虐待した分を含めて弁償してもらう!!」とノエルも怒って茉莉華の親に言った。
「おーい!!大丈夫か⁉和也さん連れてきたぞ!!」すると久彦が和也叔父さんを連れてきて、和也おじさんはこう言った。
「そうだね。ノエル君の言う通りだよ。騒ぎが聞こえるなと思ったらやはり君達か。今更のうのうと茉莉華の目の前に現れるなんて相変わらずの毒親だな。二人の犯行は、水族館の防犯カメラとモニターに映っているからね。観客も見てるから、もう言い逃れは出来ないよね。」と和也叔父さんは温厚な性格からは想像できないくらいの険しい顔をしていた。
「は?防犯カメラ?そんなんで映されても、私達は何も悪い事してないわよ?」
「茉莉華は私達の大切な娘だ。急に何日か家出したから心配してここに来たのに。」とまだまだ悪びれる様子もない茉莉華の実の両親。そんな毒親夫婦の行動に、茉莉華と和也叔父さんは呆れていた。
「はぁ⋯っ。、君達の言い訳はもう飽きたよ。茉莉華ちゃんはね、私のとこに来た時、太ももに痣があって、泣きながらこう言ってたんだよ。「お父さんお母さんに愛されたかった。」ってね⋯。」
「心配したとか言って、茉莉華の事を悪く言う、お前らが異常だよ。」と和也叔父さんに続いて、ノエルも茉莉華の両親に言葉でクギを刺した。
「なっ・・・・・・!」
「だから、私は和也が昔っから嫌いだったのよ!!いとこのくせに生意気なのよ!」と茉莉華の両親は言い逃れできない状態に少し焦っていた。観客もそんな毒親夫婦を睨んでいた。
「はいはい。どうぞ。嫌いでも。まさか私の従妹がこんな自分の子を虐待する親だったなんてね・・・・・・。ショックが隠し切れないよ。」
「私も、お父さんとお母さんがこんな人だとは思わなかった。確かに私は勉強も水泳以外の運動は鈍いけど励ましたり、褒めてほしかった・・・・・・・。そして、愛してほしかった・・・・・。普通の家族でいたかった・・・・・・・。でも、もう二人とは家族にならない。だって、家族になってもせっかく私が頑張って水族館で働いて稼いだお金を持っていく気でしょ。お父さんとお母さんとは縁を切って、和也叔父さんと家族の一員として暮らして幸せなライフを送りたい。だから・・・・・・・・、私にもう二度と関わらないで!!」と和也叔父さんと茉莉華はショックで呆れながら本音を言った。茉莉華はこれまでの事もあって、憤りが隠しきれず軽蔑していた。
「茉莉華・・・・・・、お父さん達を見放すのか・・・・・⁉」
「何でそんな目でお母さんとお父さんを見るのよ・・・・・。今までの事は悪かったわ。だから、一緒におうちに帰りましょ・・・・・。」と大人として親として情けないくらいに開き直って茉莉華の両親は茉莉華に物乞いしていた。すると水族館の駐車場にパトカーが2台到着し、警察がステージに来た。サイレンも大きく響き渡っている。
「こんな事をしておいて、何言ってんだ。茉莉華がお前らのとこに戻るわけねぇだろ。さぁ、警察も来たことだし、一生牢屋で罪を償うんだな。」ノエルがそう言うと、後ろで警察がスタンバイし逃げようとする茉莉華の毒親両親を走って捕まえ、逮捕した。どうやら一部始終を見ていたシャチ担当の飼育員スタッフが警察に通報したそうだ。防犯カメラやモニターもあるため、全館内に茉莉華の実の両親がやっている犯行はバレバレ。もちろん、他のお客さん達もカメラや動画で証拠をおさえ、SNSにアップしていた。
「警察だ!!お前らを色んな罪の疑いで逮捕する!!父親に関しては、賄賂の疑いもあるため、詳しく署で調査して貰う!!」警察の声にビビっている実の茉莉華の両親は警察が来て都合が悪いため、茉莉華に必死に謝っていた。
「茉莉華!!悪かった!!もうお前を虐めたりしないからさ、また一緒に過ごさないか?」
「きっと和也やその人間になれるヘンテコシャチより、私達と暮らしたほうが血が繋がっているし、その方がいいわ!!」と逮捕されても反省なしの毒親両親に茉莉華は冷たい目線で両親を突き放した。
「は?何言ってんの。私は二人の誘いに乗らないよ。二人のとこに戻ったって同じ目に合うだけだし、私は、和也叔父さん達と家族の一員として暮らしたほうが幸せだし、ノエルはシャチだけどそんなの関係ない。人間にもなれるし、二人と違って心優しいし、慰めてくれるもん。私にとってノエルは人生を共に歩む大切な人だし、彼氏だから。すでに告白したし、キスもした。だから、もう私や和也叔父さん達に二度と姿を見せないで。一生豚箱の中に入ってればいいわ。お巡りさん、この二人は私の両親ではありません。縁を切ります。なので、連行しちゃってください!」と冷めた口調で言って、警察に話した。
「・・・・だそうだ。お前らの娘さんはもう二人に嫌気がさして縁を切りたいそうだ。残念だな。」
「それも因果応報。さ、署に行って詳しいことを聞かせてもらうよ。」警察はそう言って、抵抗する茉莉華の毒親夫婦を強制連行し、パトカーに乗せた。
「私らを逮捕すれば、一人で苦労するぞ~!!苦労しても知らねーぞ!!この親不孝の娘め!!」
「せっかくヨリを戻そうと思ったのに~!!」と茉莉華の実の両親は最後まで悪人らしい捨て台詞を吐いて、警察に抑えられパトカーはその場を去って走っていった。

「もうまりかっちのところに帰ってくるんじゃねーぞ!!」
「罪を償ってくださいね~!!」
「茉莉華の分と水族館のショーの妨害分、弁償しろよー!!」
「一生豚箱に入ってろー!!」と智香達とノエルは茉莉華の毒親両親の捨て台詞にくぎを刺すかのように言いながらパトカーを見送った。
「⋯⋯⋯。」茉莉華は何も言わずに無口になり、顔を俯いていた。智香達や和也さん、ノエルも心配そうな目で茉莉華を見ていた。
「茉莉華⋯?」
「まりかっち⋯?」
「茉莉華ちゃん⋯。」とみんなで心配していると、茉莉華はブツブツと呟いた。
「⋯んね⋯。」
「?」
「⋯ごめんね。みんな⋯。私の家庭の事情にみんなを巻き込んで⋯。」茉莉華の顔は涙で溢れて震えていた。相当辛かったのであろう。すると、和也叔父さんとノエルが茉莉華の肩に手を置いた。

「茉莉華は何も悪くないから、謝らなくても大丈夫だよ。君の頑張りは、叔父さんが見ているから。」
「そうだぜ。茉莉華。だから自分を責める必要なんてないんだぜ。こんな辛い環境の中、よく頑張ったな。」と二人は茉莉華を慰めた。そのついでに智香達も茉莉華を慰めた。
「まりかっち、辛かったんだね・・・・・。でも、一生懸命頑張ってて偉いよ!!」
「うんうん!茉莉華ちゃんのことは誰よりもクラスや私達、街の人、水族館に来たお客さん、和也叔父さんやノエル君が見ているから!!」
「ああいう奴、気にすんな!!もし、また来たら俺らが成敗するからさ!!」と慰めると茉莉華の瞳はさらに潤んでいき、走ってノエルに抱きついた。
「⋯っ!みんな⋯、⋯っひっくっ⋯、ありがとうっ⋯!本当に⋯、ありがとう!」智香達も茉莉華の近くに寄り添って抱きしめた。
「人として当たり前でしょ⋯っ!これからもゆっくり歩んでいこう!」
「どんなことがあってもまりかっちを守るから⋯っ!」
「俺達も全力で守るからなっ⋯!」と智香も李衣紗も久彦も貰い泣きしていた。茉莉華を抱きしめているノエルも瞳が潤んでいた。
「みんなありがとね⋯。そして観客席の皆さんもご協力ありがとうございます⋯!さて、気持ち切り替えてシャチショー再開しよう!」と和也叔父さんはお客さんや智香達にお礼を言って気持ちを切り替えた。
「うん、そうだねっ・・・・。泣いている場合じゃないもんね!!お客さんも待っていることだし、ショーの続きも笑顔で頑張らなきゃっ!!」
「よーし!とびっきりの技を披露するぞ!!」
「テンション上げで頑張んなきゃっ!!」
「打ち上げは焼肉とか食おうぜ!!」
「ファイトファイト!!」と気分を切り替えてあげて、和也叔父さんは自分の仕事に戻り、茉莉華とノエルと智香達はショーのステージに再び立ち、続きを披露した。大歓声で盛り上がり、ショーも無事成功した。色々とあったが、夏休みの最高の思い出になった。

ー続くー

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ましゅまろまかろん

アニメやゲーム、歴史などが大好きです!歴史は特に戦国時代が大好きです! 特技は絵を描くことと、卓球です。漫画やイラストなど、将来のために色々頑張ります!

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