2025年4月16日リリースされた『SINGER9』。
シリーズでは久々、洋装で熱唱するジャケット写真のあやや。気心の知れたミュージシャンやアレンジャーたちと共に、今回もハイクオリティーな唯一無二の世界を展開しています。
今回のポイントとして、シリーズ中では比較的、演歌っぽい唱法への揺り戻しが若干感じられなくもない1枚となっています。
それでは早速、収録順に楽曲データや“あややバージョン”の印象(今回はちょっと控えめ)などを、綴って行きましょう。
01. HELLO(オリジナル・アーティスト:アデル)
2015年の超特大ヒット曲。アルバム『25』に収録。あややは英語で歌唱しています。
02. Subtitle(Official髭男dism)※CDのみ
2022年のデジタル・シングル。ドラマ『Silent』制作陣からの熱烈なオファーを受け、主題歌として制作されました。『SINGER8』収録の「I LOVE…」に続き、CDのみの収録(配信なし)となっていますが、理由は不明です。
03. ブルーバード(いきものがかり)
2008年のシングル。TVアニメ『NARUTO』オープニングに使用(なので、印象は薄いけれども、これもアニソンですね)。2014年には楽天イーグルスの岡島豪郎選手のホームゲーム登場曲としても使用されるなど、プロ野球の世界でも多用されています。
04. シングル・アゲイン(竹内まりや)
1989年のシングル。『火曜サスペンス劇場』主題歌として制作・使用されヒットしました。
05. 群青(YOASOBI)
2020年のデジタル・シングル。のちにTVアニメ化・実写映画化もされた漫画『ブルーピリオド』にインスパイアされた楽曲で、ブルボンのチョコ菓子「アルフォートミニ」のCMテキスト「青を味方に。」を「原作」としているとのこと。朝のワイド番組『スッキリ』の「高校ダンス部応援企画」のテーマ曲になったほか、2022年春の選抜高校野球大会の選手入場曲になるなど、多方面に拡がって行った楽曲です。
06. 粉雪(レミオロメン)
2005年のシングル。ドラマ『1リットルの涙』挿入歌。難曲であると同時にカラオケのド定番曲でもあります。レミオロメンは、この曲で紅白初出場を果たしました。
07. 瞳はダイアモンド(松田聖子)
1983年、初冬のシングル(「蒼いフォトグラフ」と両A面)。ユーミンの作曲で、オリコン1位。このシングルのリリース時期、1枚前のシングル「ガラスの林檎/SWEET MEMORIES」がロングヒットとなっており、2枚のシングルがオリコンの上位を独占する現象が起こりました。
あややのアイドル風唱法が堪能できる1曲です。
08. ロマンスの神様(広瀬香美)
1993年発売の3rdシングル(デビュー曲「愛があれば大丈夫」も、いい曲です)。オリコン1位。特段、冬が歌詞のテーマではないものの、スキー用品チェーン「アルペン」のCMソングとして使用され、彼女にとって初の大ヒット曲となり、これ以降、彼女は冬をテーマにしたヒット曲を連発することになります。また彼女は、あややのレーベル・メイト(同じテイチク所属)で先輩である川中美幸さんに「人生賭けてます」などの楽曲を提供しています。
09. 366日(HY)
2008年リリースのアルバム『HeartY』に収録。HYのメンバーで作者の仲宗根泉さんは「好きなのに別れる」という心情を理解するため、当時交際していたパートナーと一度、実際に別れて曲作りをした、というエピソードがあります。同年、ケータイ小説からドラマ&映画化(相互リンクされる形で制作)された『赤い糸』の主題歌になり、その後、同曲をモチーフとしたドラマ『366日』が2024年に放映、映画『366日』が2025年に公開され(両者は別個に制作されたもの)、特に映画は「想定外」と呼ばれるほどのロングヒットを記録しました。ちなみに、映画『366日』の主題歌は、新たに書きおろされた「恋をして」。
お聴きになればお分かりいただける通り、このアルバムの中でも、出色の仕上がりとなりました。
10. 残酷な天使のテーゼ(高橋洋子)
1995年のシングル。TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』オープニング・テーマ……というワクを超え、今も広く世界的に愛されている楽曲。故・八代亜紀さんを含め、無数のカバー、ならびにセルフカバーがリリースされています。あやや版は、オリジナル以上にスピード感のある仕上がりとなっています。
ちなみに、アニソン・イベントなどにも積極的に参加し、オリジナルのアニソン(OVA『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 第5章・激突 ルウム会戦』主題歌「宇宙(そら)よ~I Can’t Do Anything~」。“AYA”として参加)も歌唱しているあややですが、本シリーズでのアニソン(として有名な楽曲の)カバーは『SINGER4』収録の「魂のルフラン」(やはり、エヴァ関連楽曲)に続き、2曲めとなりました。
11. 歌姫(中島みゆき)
1982年発売のアルバム『寒水魚』のラストに収録された、オリジナルは8分に及ぶ大作にして人気曲。
中島みゆき楽曲との親和性が高いあややだけに、安定の仕上がりをみせています。
12. 花(藤井風)
2023年リリースのデジタル・シングル。ドラマ『いちばんすきな花』主題歌。
13. PRIDE(今井美樹)
1996年のシングル。オリコン1位。ドラマ『ドク』主題歌。
オリジナルよりも、かなり高いキーで勝負しているのが新鮮です。
14. 朝日楼(朝日のあたる家)(アメリカ民謡)
日本語詞にもある通り、かなりハードというかヘビーな内容をもつ楽曲。
イギリスのロックバンド、アニマルズのパフォーマンスで有名。日本では(この日本語詞を書いた)浅川マキ、ライブの定番曲としていたベンチャーズによる演奏、そしてちあきなおみの歌唱が知られています。
本作の「ピアノとタイマン」は、この楽曲。
シンガー・あややの魂の歌が聴ける1曲です。
15. LOVE SONG(CHAGE and ASKA)
オリジナルは1989年、シングル・リリース。「SAY YES」での大ブレイクを経た1992年にはリミックス版で再リリースされ、オリコン1位を獲得しました。
『SINGER9』版には、あややの甥っ子にあたるシンガー、TAIYOさんがコーラスで参加しています。あややとTAIYOさんは、お互いのライブに参加することも多いようです。
16. UNBREAK MY HEART(トニ・ブラクストン。原題の英語表記は、Un-break My Heart )
ラインとしてはホイットニー・ヒューストン。ただ、音域はグッと低い黒人女性シンガー。1996年リリースのシングル。映画『アルマゲドン』主題歌「ミス・ア・シング」などで“バラードの達人”とも称されているダイアン・ウォーレンの作品を、シカゴ「素直になれなくて」などを手がけたデヴィッド・フォスターがプロデュース、という鉄壁の布陣で、96年から翌97年にかけて、全米チャートで11週連続1位を記録しています。アルバム『シークレッツ』に収録。冒頭の「HELLO」同様、あややによる英語の歌唱で、本作『SINGER9』は幕を閉じます。(了)