ギブミーチート 1話 地球にさよなら、そして異世界にこんにちは

「あぁ、チートが欲しい。」

ある日、一人の男が地球上から姿を消した。

彼の名は、市川九十九。年齢は20歳。無職。身長は155cmぐらい。散歩をするという書置きを残して出かけた後、そのまま行方不明になった。

地球の一部で報道されたニュースの内容は、それ位だった。

「チートが欲しい。」

ある日、一人の男が地球上から姿を消した。

彼は12歳の頃まで、ごく普通の学生だった。ごく普通の両親の間にごく普通に生まれ、普通とは少々変わった育ち方をして、ごく普通に学校に通っていた。

そして彼は、たった一人だけ友人と呼べる者を作ることは出来たが、あまりにも酷い決別をしてしまった。

彼の人生の内容を語るとすれば、こんな具合だった。

「チートが欲しい。」

ある日、一人の男が地球上から姿を消した。

正直、彼は人間としてあまり上等とは言えないかもしれない。少なくとも、本人は上等ではないと思っている。

頭は良い方ではなく、運動神経も良い方とは言えない。才能と呼べる物はこれと言って無く、かといって努力と胸を張って呼べるほどの努力も出来ない。

口癖は、先ほどから何度も繰り返しているように、「チートが欲しい」であった。

ここで言うチートとは、いわゆる特殊能力の事だ。レベル99、ステータスマックス、最強、そう言い換える事も可能だろう。

要するに彼は、楽して今の人生を変えたいと言っているのだ。

そんな人間が、果たして上等な人間と言えるだろうか。少なくとも、彼自身は常日頃からそう考えていた。

彼の人間性を語るとすれば、こんな具合だった。

「チートが・・・」

ある日、一人の男がこう言い残し、地球上から姿を消した。

近くに他の人間は誰もいなかった。もしいたとすれば、この事件は単なる失踪事件ではなく、怪奇現象としか言いようのない事件であると、地球上の人間が気づけたかもしれない。

なにせ市川九十九には、失踪するつもりなどなかった。失踪してもおかしくないほどの精神状態でもなかった。

ただただ彼は、暇つぶしの散歩に出かけただけだった。そして、普通に帰宅する予定だったのだ。

ある日地球上に突然現れた、異世界へと通じる穴に落ちなければ。

「・・・僕、このまま地面に激突して死ぬのかな。それとも、地球の中心・・・なんて名前だったっけ?とにかくそこに落ちて、燃え尽きるのかな。」

落ちていく、ただ落ちていく、市川九十九が落ちていく。

まるで何の道具もなしに、スカイダイビングをしているかの如く、市川九十九が暗闇の中を落ちていく。

そんな状況だと言うのに、九十九は悲鳴を上げることもなく、妙に落ち着いていた。

その理由は、不可思議な状況に陥って頭がどうにかなってしまったから、ではなかった。

「なんだか、体が少しずつ軽くなっていくような気がする・・・」

いわゆるライトノベルと呼ばれる娯楽の世界では、よくチート主人公と呼ばれる者たちが登場する。

その者たちは大抵、なんらかの理由で、チートと呼ばれる特殊能力を授かっている。どんな理由か例えるならば、召喚された際にいつの間にか持っていた、神などから貰った、などが挙げられる。そして大抵のチート主人公は皆、悠々自適な人生を謳歌することになる。

これから市川九十九が送ることになる異世界での人生も、大体は凡庸なチート主人公と同じであった。事実として、地球にいた頃は持っていなかった特殊な能力も、彼は手に入れていた。

後に彼は、自分に起きた現象に対してこう結論付けた。

自分は、異世界へと落ちる道中で体が変質し、その影響で特殊能力が発現したのだと。

事実、その結論は間違っていない。実際、件の穴に落ちた者は異世界へと向かう際中、体が変質し、他とは違う特殊な能力を得る。

具体的にどうなるのかと言うと、元いた世界と比べて身体能力が上がる速度が変わったり、その異世界に存在している全ての言葉が分かるようになったり、その異世界に存在する一部の作用に耐性があったりなど、様々だ。

要するに、飛ばされた先の異世界に適応できるような能力が得られるのだ。

ただ、だからと言ってその異世界に存在する者と同一の存在になる、ということはない。

むしろそうなってしまえば、その異世界の言葉は分かっても、元いた世界で使われていた言語を忘れてしまっただろうし、一部の作用に対する耐性を得ることもなかっただろう。

もっとも、同一の存在になっていれば、市川九十九のマナ、いわゆる身体能力が、異世界で普通に暮らしている一般人と比べて半分ぐらいしかない、ということもなかっただろうが。

「それに、フワァー・・・なんだか眠くなってきた・・・」

要するに、市川九十九の体には現在、飛ばされた先に存在している異世界人の特徴と、特殊能力を得るための変質が行われている。そのせいで、精神に影響が出ているのだ。

そして九十九は現在、落下しているさなかで眠りにつこうとしている。

「僕、死ぬのか・・・思い返せば、僕の人生ってロクでもなかったな・・・」

九十九の頭の中で、今までの人生が走馬灯のように駆け巡る。

楽しかった思い出が一つもないと言えば噓になる。事実、九十九の人生の最初の頃は楽しい思い出の方が多かった。後半の方も、暇つぶしで行った遊びの多くは楽しかった。

だがそれ以上に、九十九の頭の中に強く印象に残っているのは、嫌な思い出ばかりだ。

「本当に、ロクでもない人生だったな・・・色んな奴に迷惑かけて、色んな奴に迷惑かけられて・・・」

九十九は思い出していた。九十九が迷惑をかけてばかりだった家族のことを。いや、それだけではない。通っていた学校の教師にも、クラスメイトにも、九十九をいじめて心に傷をつけたあの男にも、周りの取り巻きにも、そして、九十九を救おうとした友人にも、九十九は迷惑をかけてばかりだった。

九十九は思い出していた。九十九に迷惑をかけてばかりだった家族のことを。いや、それだけではない。通っていた学校の教師も、クラスメイトも、九十九をいじめて心に傷をつけたあの男も、周りの取り巻きも、そして、九十九を救おうとした友人も、九十九に迷惑をかけてばかりだった。

「色んな奴が、僕の事分かってくれなくて、色んな奴と、分かり合えなくて・・・」

九十九は、思い出していた。数々の者が、九十九のことを分かってくれなかったことを。そして数々の者と、分かり合えなかったことを。

「あぁ・・・チート、欲しかったな・・・」

そして九十九は眠りにつく直前、か細い声で、心からこう呟いた。

「・・・きろ!!おいテメェ、いい加減起きろ!!」

「・・・んあ?」

乱暴な言葉遣いで呼びかける女性の声が聞こえ、九十九は意識を取り戻した。

その直後、九十九は違和感を覚えた。

確か自分は、暗闇の中を落ちていたはずだ。そして今自分は、どこかの壁に背中を預けて寄りかかりながら、足を延ばして座っている。ということは、自分はその前に地面に落ちたことになる。それなのに、落下した衝撃も何も感じなかった。まるで、何もかもが悪い夢だったかのように、九十九の体は無事そのものだった。

「起きろっつってんのが聞こえねぇのか!?ぶっ飛ばすぞクソガキ!!」

「分かりましたよ、起きますよ。そんな大声で叫ばないでくださいよ・・・」

違和感はあったが、声の主にこう脅されたため、九十九はしぶしぶ目を開けた。

するとそこには、20代半ばほどに見える、銀髪で華奢な見た目をした、色白の女性がいた。そしてその女性は、鎧兜のようなものを着けていて、耳が長く尖っていた。

先ほど、乱暴な言葉を発した声の主とは、とても思えなかった。

それ以前に、なんでこんな所に鎧兜を着たエルフのような恰好をしたコスプレイヤーがいるのか。それがその女性を見て九十九が感じた第一印象だった。

「やっと目ぇ覚ましやがったか!全く、こんな所で寝てんじゃねえよ酔っ払いが・・・」

「・・・酔っ払い?誰の事ですか?」

九十九には、ここ最近飲酒した覚えもなければ、そもそも人生で飲酒をした覚えもなかったため、目の前の女性の言っていることが分からず困惑している。

「あぁ!?なめてんのか!!テメェ以外に誰がいるんだっつうの!!アタシは酔っ払いがこの路地裏で倒れているって通報を受けて来たんだ!!ここにはテメェ以外に誰も寝ている奴なんていなかったぞ!!」

「・・・あの、話の腰を折るようで申し訳ありません。2つほど聞きたいことがあるんですが・・・」

「あぁ!?何だってんだ!!聞きてえことがあんなら早くしやがれ!!」

「・・・ここは天国ですか?そしてあなたは、女神かなにかですか?」

ライトノベルでの世界では、トラックに轢かれるなどして死んだ主人公が、天国のような場所で神に会ってチート能力を貰うことがある。

九十九は最初、この不可思議な状況もその手の類なのだろうと当たりを付けていた。

「・・・何言ってやがるんだテメェ、寝ぼけてんのか!?ここは天国じゃなくて現実だし、ましてやアタシは女神なんかじゃねぇ、衛兵のメルンダ・ギルシーバってもんだ!!」

「衛兵って、つまりあなた・・・ギルシーバさんは町を巡回したりして住人の安全を守る仕事に就いている方ってことですか?」

「他にどんな衛兵が居やがる!!あぁ、もう話にならねぇ!!おい、行くぞ!!」

そう言いながらメルンダは、右手で九十九の首根っこを掴み、持ち上げながらどこかへ歩き出していく。

「ちょ、ちょっとエルフみたいなギルシーバさん、行くっていったいどこに・・・?」

「みたい、じゃなくてアタシはエルフだ!!そして今から行くのは詰所だ!!つまりアタシが普段働いている場所だ!!」

「・・・要するに僕、逮捕されちゃうんですか?」

「そこまでしねえよボケが!!ちょっと話を聞くだけだ!!いいから少し黙ってろ!!」

ものすごい剣幕で怒るメルンダに、九十九は面食らって、言われた通りに黙ってしまった。

「今までの情報から推測すると、ここは・・・」

九十九はようやく気付いた。ここが今まで住んでいた日本ではなく、全く別の世界。要するに、異世界ファンタジーの世界であるということに。

「ここが詰所、思ったよりデカいな・・・」

相変わらず右手で首根っこを掴まれたままの九十九が目にしたのは、九十九が元いた世界で言う所の交番の、約3倍はありそうな大きな建物だった。しかも贅沢に2階建てである。

「これなら、10人ぐらいは余裕で働けそうだな・・・」

「あぁ、実際ここで働いている衛兵の数はアタシ含めて10人だ。って、んなことぁどうでも良い、とっととここに座れ!!」

そう言いながらメルンダは、左手で入口の近くにあった椅子を引き、九十九をそこに座らせた。

そしてメルンダ自身も、窓の近くにある椅子に座る。

「まったく、乱暴だな・・・ん?」

椅子に座っている九十九の目の前には、テーブルがある。そしてその上には、何やら結婚情報誌のような物が置いてあった。

九十九はそれを取ろうとして左手を伸ばす。

「この雑誌はテメェには関係ねぇ、勝手に触るな!!」

だが、手が雑誌に触れる直前で、メルンダに雑誌をテーブルの端っこに寄せられてしまった。

「ハァ、まったく・・・じゃあこれより、あの路地裏で酔っ払って寝てたことについての事情聴取を行う。と言っても、さっき言った通り、ほぼ話を聞くだけに近いが・・・」

「と言いつつ一応、書類には残すんですね・・・」

九十九の指摘通り、メルンダの手元には書類のような物がある。そして彼女は、ペンのような物を右手で持っている。

「一応、仕事だからな。あと事前に言っておくが、言いたくねぇ事は黙秘する事も出来る。まぁ、アタシ個人としてはあまりお勧めしねぇが・・・」

「あ、そうなんですね・・・」

どうやらこの世界でも、黙秘権は存在するし、黙秘してもなんやかんやで良い事はあまりないらしい。九十九は、そう思った。

「じゃあ早速、最初の質問だ。名前は?」

「えっと、苗字は市川で、名前は九十九です。」

「ツクモ・イチカワ、か?」

「・・・はい、まぁ、そうですね。」

流石ファンタジーの世界。当たり前のように名前の順番が日本と違い、名前が先で、苗字が後である。と九十九は戸惑いながらそう感じた。

「じゃあ次、年齢は?」

「えっと、20歳です。」

「20歳?てことはテメェ、2年前に成人迎えてんのか。見えねぇな・・・」

「あぁ、はい。僕の身長、万年155センチですしね・・・」

「・・・おぉ、そうなのか。」

九十九は、この世界の成人年齢は18歳なのか、という感想を抱き、それと同時にセンチという言葉が通じている違和感を覚えたが、自分が実年齢より未熟に見られたことによる絶望感に襲われたことにより、その2つがもはやどうでも良くなっていた。

「・・・次、職業は?」

「・・・え?」

「え?じゃねぇよ!!テメェは今、どこで働いてるんだって聞いてるんだよ!!」

「・・・ましぇん。」

「あ?なんだって?」

メルンダは、九十九の言った言葉が聞き取れず、長く尖った耳を九十九の顔に近づける。

「働いてましぇん、僕・・・」

「・・・働いてない?無職ってことか?」

「はい、僕無職でございましゅ。完全に無職でございましゅ。職歴もありませんでござりましゅ。これまでの人生で働いたことなんて一度もありましぇんでごじゃりんこ。りんごの皮むきも全く出来ましぇんでごじゃるまる。プリンは嫌いではありましぇんでごじゃるが、醤油をかけてもウニの味なんてしないでござじゃざる。そもそも醤油が家のどこにあるのか・・・」

「もう良い、分かった!!言いたいことは良く分かった!!分かったから落ち着け!!ていうか途中から職業とか全く関係なくなってるじゃねぇか!!」

自分が無職であるという辛い現実を再認識させられて、九十九はまるで極寒の雪山に裸で放り出されたかの如く震え出し、言ってることも訳が分からなくなってきた。

そして10分後、九十九の震えはようやく止まった。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・」

「ハァ、ハァ、手間取らせやがって・・・」

先ほどまで圧倒的な絶望感に襲われていた所から立ち直った市川九十九と、九十九の震えを止めるために何度も何度も九十九に呼びかけ続けたメルンダは、まるで極寒の雪山で雪男か何かと戦った後のように、息が上がっていた。

「とにかく、テメェは無職ってことで合ってんだな?」

「はい、間違いありませんでござ・・・」

「次!!住所は!?」

また妄言を吐こうとした九十九の声を遮り、メルンダは次の質問に移った。

「・・・え?」

「だから、え?じゃねぇっつってんだろ!!テメェは今、どこに住んでるんだって聞いてるんだよ!!」

「・・・・・・」

先ほどと似たようなやり取りをした九十九だったが、今度の質問で抱いたのは絶望感ではなく、異世界に自分の住所なんてあるのかという疑問だった。

「あの、住所どうこうの前に一つ聞いておきたいんですが・・・」

「なんだ!?」

「・・・ここって、一体どこですか?」

九十九は、不安げな顔をしながらメルンダにそう質問した。

「ここ?だから詰所だ!!アタシが普段働いている・・・」

「いや、そういうことじゃなくて・・・なんというか、ここはなんという世界ですかと言いますか、なんという国ですかと言いますか、なんという県ですかと言いますか、なんという市ですかと言いますか、なんという町・・・」

「待て待て待て!!テメェがなにを言いてえのかサッパリ分からん!!もっと簡潔に質問してくれ!!」

「簡潔に、ですか・・・?えっと、ここは詰所とか、そういう局所的な話ではなく、もっと広い分類でここはどこですかと言いますか、そもそもこの詰所は、なんていう町に存在する詰所なんだろう、と言いますか・・・」

「・・・つまりテメェ、自分の住所はおろか、この町の名前すら分からねぇのか?」

「はい、まぁ・・・平たく言えば、そうなりますね・・・」

結論を言うと、元いた地球には九十九の住所はあるが、この異世界には当然、九十九の住所などない。

そのため正確に言うと、自分の住所が分からない、という答えは少し間違っていることになる。

と言っても、素直にこの世界とは違う世界からやって来ました、と言っても信じてくれるとは到底思えなかったため、九十九はあえて訂正しなかったが。

「ハァ、全く・・・テメェはどこの田舎村から来たんだっつぅの。ていうか大体、テメェはそんな体たらくでどうやってこの町まで来れたんだっつぅの・・・」

他に言い方が思いつかなかったから仕方ないとはいえ、九十九があまりに摩訶不思議な経歴を言ってくるため、メルンダはもはやあきれ果てている。

「あーあ、このままじゃ埒が明かねぇ。事情聴取云々の前に、まずテメェがどのくらい常識を知らねぇのか確かめる必要がありそうだな・・・」

「確かめるって、どうやってですか?」

「・・・そうだな。まずは、この町の名前から説明していくか。ちょっと待ってろ。今、地図機を持ってくるから。」

「ち、ちーずけーき?」

九十九は、聞いたことのない言葉に困惑し、頓珍漢なセリフを吐いた。

「アホか、食い物じゃねぇよ。全く、先が思いやられるな・・・」

疲れた表情でそう言いながらメルンダは、詰所の奥の方に見える階段に向かっていった。

「あぁ、なんかどっと疲れが・・・」

メルンダに負けないぐらい疲れた表情を見せている九十九は、ドサッという音を立てながらテーブルの上に突っ伏した。

「というか、なんで僕は異世界に来て早々に警察、じゃなくて衛兵に事情聴取なんかされてるんだよ・・・異世界に来たときって大体、まず王様とかが目の前にいて、おお勇者よ、とか言われるんじゃないのか・・・?」

ライトノベルなどに登場するチート主人公が異世界に来たとき、最初にどこかの国の王様が目の前にいることがある。

そしてその王様は大体、元々は地球で生活をしていたチート主人公を、自国に伝わる秘術などを使って異世界に無理やり召喚した人物なのである。

なぜ、仮にも一国の主がそんな誘拐のような真似事をするのか。それは自分たちの世界の戦力ではどうにもならない存在、例えば魔王などを、チート主人公に倒してもらうためである。

悪い言い方をすると、自分たちの力不足を棚に上げて、戦いとは無縁だったチート主人公を地球から無理やり呼び出し、挙句の果てにそのチート主人公を魔王と戦わせるための都合の良い駒にしようとしているのである。

「こうやって考えてみると、どっちが魔王なのか分からなくなるな・・・ということは、今のこの状況は、誰かに召喚されるよりはマシなほうなのかな・・・?」

「待たせたな、地図機を持ってきたぞ。」

九十九がそんなことを考えている間に、メルンダが詰所の2階から、地球で言う所のタブレットのような物を両手で持って戻ってきた。

「急に現代的な代物が出て来たな・・・」

異世界ファンタジーの世界に登場するには、あまり似つかわしくない物の登場に、九十九は目が点になっている。

「現代的?この機械、結構古いタイプなんだが・・・まぁ良いか。今、この町の全体図を表示させるから、ちょっと待ってろ。」

そう言ってメルンダは、まるで地球の現代っ子のような手つきで、機械を操作し始めた。

「エルフが当たり前のように出て来たかと思えば、当たり前のようにタブレットのような機械を操作している・・・この世界の文明って、どうなってるんだ・・・?」

衛兵のメルンダによる、九十九への常識力検定は、まだ始まったばかりである。

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作家A(多分本物)

暇つぶしで小説を書いている者です。 あくまでも、まず自分自身が面白いと思えるような小説を書くことをモットーにしているため、読んでくださっている皆様の嗜好には合わないかもしれません。 また、執筆作業に飽きてしまったら、投げやりのまま途中で終わりにすることも全然あり得ます。 そんな適当な作家が書いた適当な小説でよろしければ、ご覧ください。

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