マンションを降りようとすると
甘い香りが広がった
ムラサキツユクサか カモミールの 小さな花の匂いがした
いや金木犀か
季節はずれの金木犀のにおいがマンションの階段の上に広がる
やがて四季はめぐり
繊細な五月に置いてきた 思い出は
ただ当たり前の今という永遠をめぐり
可能な現実となり現れる
最近眠くて猫を見た
夢で飼い猫に噛まれた
足元の花を踏むと昔の思い出がカサカサと音を立てる
サヨナラカモミール
未だ夢から覚めないで
空梅雨は開けただろうか
いろいろ風流な草花の名前を出したが、
突き詰めるとこの甘ったるいリンゴのにおいは服の柔軟剤だ。
この家の思い出がしみだしてきたのかもしれない。
湿度70パーセントの春の陰鬱な空気に誘われて、にじり寄ってきたのかもしれない。
ジトっとした空気もさわやかだ。これ以上ないくらい。