映画「GRAY 凍える太陽」

今回は私の好きな演技派俳優のリーアム・ニーソン主演の「THE GREY凍える太陽」を紹介する。(2011年 アメリカ映画)

アラスカの極寒の油田地帯で作業する作業員を野生動物から守る仕事をしている中年男性がいた。彼はライフル射撃手で、実入りはいいが、それだけ大変な体力も精神的にもきつい仕事で、愛していた妻は既に亡くなっていて、孤独を感じながら、生きる意味さえ失って働いていた。

私は、アラスカに油田があることを知らなかったし、油田採掘の仕事とそこにいる野生動物からその人達を守る仕事があることも知らなかった。よく知らないので、最初のほうは、何故彼はこんな仕事をしているのだろうと思った。表情がずっと暗くて、ほとんど喋ることもない。

そんな中、仕事の期間が終わり、作業員達と野生動物から彼らを守るライフル射撃手の仲間と飛行機で帰ることになったが、飛行機が激しく揺れるほどの猛吹雪に合う。激しく揺れて、飛行機が壊れ、何人もの男達が壊れた飛行機から、吹雪に吸い出されて飛行機から落ちていった。そして、雪の上にぼろぼろに壊れた飛行機が墜落する。飛行機が止まって、主人公は、なんとか飛行機から這出たが、周りを見回すと、生き残ったのは、ほんの数人の男達だった。しかもライフル銃を全てを失っていた。吹雪の中、凍傷と飢えと絶望感に陥る男達。

しかし、この仕事のベテランであった主人公は、彼らのリーダーを担い、徒歩で助かるために歩きだす。

だが、ほどなくして、恐ろしい現実に気が付く。飛行機が墜落した場所は、野生の狼の縄張りのど真ん中で、群れが沢山いることに気がついたのだ。

男達は皆、狼の恐ろしさを知っていたので、焚火を絶やさず、武器を作って、狼に襲われないようにまずはした。しかし、夜になり、まだ吹雪いている中、1人が狼に襲われ、悲鳴と共に姿を消す。

逃げ場のない状況で、狼に襲われるかもしれないという最大のストレスと寒さの中、このような状況で生きる意味やそれぞれの人生や家族の話を男達はしだす。だが、かえって孤独や恐怖を感じだし、男達の中には絶望が広がっていく。

狼の群れが彼らを包囲していて、次々に男達は襲われ、生きのびるのは無理だと諦めるものも出てくる。狼が忍び寄る気配と威嚇のために吠える声に男達は震える。このうえない絶望感の中、ほんの少しの希望を持ち、逃げ道を探し、雪山を下るが、激流の川が差し迫り、生きたいと必死の思いの一人の男が、川に掛けた丸太を渡る最中に転落し、激流に飲み込まれていった。死んだ男達のことを構っていられない生き残った男達は狼を恐れながらも、自然の驚異にも恐れおののき、どんどん死んでいき、「仲間」の死に方にほんの少しの希望も消えていく。

結局、最後まで残ったのは、主人公の男だった。男は、ナイフと割れた酒瓶を手にして、最後まで残っていた群れの巨大なリーダーとみられる狼と一気打ちすることになった。

そして、男が叫びながら、狼に向かっていくところで、映画は終わる。

私は、え?と思った。最後は、観る人にどうなったかを委ねるってこと?と思った。エンドロールが流れて、もやもやした終わり方だな、まさにGREYな終わり方だなと感じていたら、最後に、狼が倒れ、その近くに、主人公が崩れ落ちている姿が一瞬写り、またスクリーンは暗くなった。映画だからといってハッピーエンドでは終わらないのだ。鑑賞中、スクリーンはずっとやや暗く、観ているほうも自分が襲われるのではないかと思うほど狼の目の光に恐怖を感じた。結局一瞬の最後のシーンでは、私は、中年男性も狼も互いに命を落としたんだなと思った。小さなナイフと割れた酒瓶では、大きな狼を倒すだけの武器にはならなかったのだろう。働いているときは、自分が生きている意味が分からず、考えることも諦めていたが、いざとなると、死んでたまるかという思いで、狼に向かっていく。彼は、この時他の殺された「仲間」の仇打ちとかは一切考えていない。あくまで、自分が生きれるかどうかを最後は考えている。目の前で、死んでいく「仲間」達の殺され方や死に方にどんどん絶望していくが、ライフル銃があれば、生き残る人数も多少は多かっただろう。この作品を観て、主人公に仲の良い友達がいなかったので、多分最後まで主人公が生き残るだろうなと思っていたが、その通りになった。だが、死んでしまうとは夢にも思わなかった。男達が殺されていく度に、手製の武器でこちらも応戦し、狼を殺していったので、逃げ切ると思ったのだ。

最後、狼のリーダーとの一気打ちの時、彼は亡くなった妻を思いながら、自分も死ぬのか?と頭がぼーっとする中考えるが、最後の最後は、死んでたまるかと狼に向かっていった。私は、こんなサバイバルの極限状態で、死ぬか生きるかとか考えられないと思う。人間の本能で、生きることしか考えられないんじゃないだろうか。

リーアム・ニーソンの死の最後まで、生きようとした演技はとても心に残った。だが、他の「仲間」が結構あっさり、死んでいくのはどうかなと思った。

この作品の監督は、主人公がどうなるかだけを描きたかったのかなとさえ思う。

この作品も後味が悪いが、「生きる」ことの大切さを考えることができた。

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はる組

こんにちは。 懸賞応募と海外留学などのエッセイを読むのが趣味です。 発達障害で困ることも沢山ありますが、どうよろしくお願いします。

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