いくつ羊を数えるよりも、あなたの言葉を確かめて
山形駅・ホーム
紡、電車を待ちながらスマホ。
哲「いってらー」
紡「はーい。(笑って)なんか緊張する」
哲「もっかい言って」
紡「学校の友達にさ、こいつら付き合ってるんだって思われるわけじゃん、緊張する」
待ち合わせ場所に向かおうとしたら、目の前にいる哲。
哲「(笑って)いいじゃん、俺たち付き合ってる」
紡「まあね、かっこいいよ」
ホームに電車が到着。ぞろぞろと人が出てくる。
紡、車内の人込みの中で見覚えのある姿が気に留まり、目で追う。
哲「待って。緊張してきた。どうしよう。俺…」
紡「待って。やばい」
紡、哲の声が耳に入らず、心ここにあらず、人を目で追う。
電車を降りたとき、顔が見える。快(25)
紡「…かっこいい」
改札に向かいホームを歩いて行く快。
哲「紡?聞こえてる?おーい」
紡、快の後ろ姿をじっと見つめていると、乗車を待っていた客に背中を押される。
紡「…快くん!!!」
と、快に向かって声を張る。
気づかずそのまま歩いていく快。
紡、思わず足が動き、快を追いかける。
哲、立ち止まる。
電話越しに紡が快を呼ぶ声が聞こえ、思わず電話を切る。
哲「大好き」
紡、快を追いかけて改札を出る。
辺りを見渡すが快の姿はない。
紡「ねぇ、あの人に話しかけようよ」
山形学園高校・けやき通り
高校二年生の紡、スマホの画面の推しを見つけて、
紡「ドナルド!」
哲、イヤホンを取りながら振り向く。
彼女だと気付いて笑顔に。
山形駅・改札前
紡、我に返り、
紡「大好きだった…」
大通り
待ち合わせの時間。紡を待っている快。
快、浮かない表情でスマホを眺めている。
紡、駆け足で快の元にやってきて、
紡「ごめんね、久しぶり。元気にしてた?」
哲「いいよ。行こ」
と、歩き出す二人。
紡「どこへ?」
哲「ベンチあるとこない?」
紡「…え」
哲「なんで乗り遅れたの?結婚」
紡「いい人いなくて、哲以外に」
哲「どういうこと?浮気?」
紡「付き合ってなかったじゃん」
哲、何も知らずに、ドキッとしてしまう。
紡「会いたかった」
居酒屋
哲、高校の頃の友達たちと飲んでいる。
哲と思い出話で盛り上がる、朝日(25)と快(25)。
哲の向かいに座っている巡(25)、泥酔してうつむいている。
哲、朝日と快に、
哲「結婚を考えている」
朝日「紡と結婚するの?」
哲「結婚式しよ」
快「え、待って。大人になってからにした方がいい」
哲「一人ずつ話を聞こう」
朝日「紡と結婚とか、哲マジで呪われるよ」
哲「呪われてもいい、いつから呪ってるか分からない」
快「哲よりいい奴いるよ、巡だけはやめとけ(なんで子供が生まれるんだよ)」
哲「聞け。てかなんで名前考えてんの?」
朝日「ありえないだろ」
哲「紡の話をしよう。今どこいんの?」
朝日「は?」
快「哲が知らないなら誰も知らないっしょ」
哲「浮気だ!」
紡を見つける哲。
デニーズ・店内(昼)
紡、小学校からの友人・郊子(25)と食事。
郊子「じゃあメニュー…」
紡「パフェ食べたよね」
郊子「紡、慎重そうだもんなぁ。巡と食べた?」
ぼんやりしている紡。
郊子、様子が気になって、
郊子「おいしいね、これ何?」
紡、食べながら答える。
紡「チョコバナナ!」
郊子「美味しかったね」
紡「(何食べたっけ…)」
郊子「(お金あって良かった)」
巡を見かける二人。
紡「近寄んな」
郊子「巡ーーーーー!!!すきーーー!!!」
紡に駆け寄る巡。
巡「気にしないで」
?「学校は?大学楽しいよ」
紡「お金かかるよね、」
郊子「生きてるだけで嬉しい」
巡「こいつはやべーな、やべーよ、やべー」
哲「紡レベルのビジュアルはいない。俺と仲がいい整形美人が…(長話)」
紡「うんうん。楽しいお話ありがとう」
?「終わってんな」
紡と哲を引き裂く運命は、変わらないままである。
この後、紡と哲に起こったことは、記録を読みながら話そうと思う。
