いくつ羊を数えるよりも、あなたの言葉を確かめて
居酒屋・店内(夜)
朝日「なんでさっき叫んだの?」
郊子「ニヤニヤしちゃってー!」
紡「ほっといていいよ」
巡「俺は、マイと付き合う。」
郊子、ジョッキに入った酒を一気に飲む。
紡「頭痛い…(こめかみを抑える)」
マイ「大好き~~」
快「逃げろ、俺の街に」
哲「親が許さないよ」
?「大人になったんですね」
快「巡がいたら、紡は快と付き合ってた?」
紡「付き合ってない」
朝日と快、巡を小突く。
何も言えない哲。
巡、叫び続けている。
快「もう会えないか…」
哲「会えない」
朝日、快「また見てね」
哲、「うんうん」と紡を納得させる。
哲「たしかに、愛されるのは困る」
紡の家(夜)
紡「また会えるよ!」
郊子「別れさせたい」
紡の母「巡君とばったり会って、女の子と一緒にいたわよ」
紡「…」
郊子「お邪魔してます」
紡の母「久しぶり~郊子ちゃん?大人っぽくなったわね~」
紡「雑誌にチューしてれば、そのうち来るよ」
郊子に、Myojoを見せる。
居酒屋・外(夜)
店を出る哲、快、朝日、巡。
先を行く朝日と巡。
考え事をしながらゆっくり歩く哲。
快、少し酔いがさめて、悪かったと思い、
快「マイが大好きだよ」
哲「どれだけの女が俺に振り向いてきたか」
朝日「愛せねえよ、帰る」
巡「今日も女、明日も女、明後日も女♡」
紡の部屋(昼)
紡、机で勉強をしている。
哲「書けたー?」
と、覗き込む。
哲「大体お前は話が長い」
紡「哲の方が長いよ、先生みたいだよ」
哲「いいなあ、それ」
紡「快、何してるか知りません?」
哲、その名前にドキッとしつつ、
哲「なんで快と付き合わねーの?俺、最低だよ」
紡「なんとか快、名前すら教えてくれない。リリカと付き合ってるんだって」
哲「リリカなら別れさせるよ、俺から言っとく?」
哲「何百人も連絡先持ってるよ」
紡「快とは付き合わない」
哲「なんで?感動の再会じゃん」
紡「諸行無常、知ってる?」
哲「お前、そんな変だからダメなんだよ。3人で通話しよう」
紡「気まずすぎる」
部屋を出ていく紡。
哲、スマホを出し「まだ好き?」とLINEを送る。
相手は、黒田紡。
朝日から大量のスクショが届いている。
マイのアパート・中(夜)
マイ、帰宅。
マイ「ラーブリーーー♡」
紡「おかえり。ただいまはー?」
マイ「言いたくないー」
紡、料理を始めながら、
紡「SnowManかっこいいよ、YouTubeラブ」
マイ「やってられない。彼氏がうざい。」
紡「私も…」
マイ「……ほう、聞こうじゃない」
紡「遠距離恋愛どう思いますか」
マイ「お腹すいた」
紡「ジャガイモ食べよう、マイちゃんも」
マイ、ちょっとキュンとして、
マイ「照れる!そういうのいい!」
紡「さよーならー。恋って何」
マイ「してるじゃん」
紡「なかったことにしようかな」
マイ「忘れなよ」
紡「さいっこう」
マイ、紡にちょっかいを出しながら、一升瓶を取り出す。
マイ「料理しなよ」
哲のアパート・中(夜)
哲、スマホで【黒田紡】と検索をかける。
特に紡に関する記事はヒットしない。
紡から着信。
哲「はい、もしもし」
と、電話に出る。
紡「え、誰ですか」
哲「もしもーし」
騒がしい電話の奥。
「いい加減にしてよ」「哲はどっちが好き?」「どうでもいい」
とけんかをふっかける女の声が聞こえる。
紡、笑いながら、耐えている。
哲「ありえない」
紡「姉です。間違えた」
哲「愛?」
紡「私はアラサーです」
哲「ふーん、何も分かんない」
紡「間違えました」
哲「また~」
紡「匂わせし過ぎ、大っ嫌い、私は既に切ったよ」
哲「ゴミ」
紡「語彙力終わってる」
哲、電話を切って、プリンを食べる。
スマホにはさっきまでの検索画面。
女たちがバカバカしく思えて、【黒田紡】という存在を消したいと思う。
紡のアパート・中(夜)
紡、哲と愛のLINEを始める。
?「早めに女を整理しなさい。哲に迷惑をかけられたくない」
紡「許せない」
哲「(笑って)はいはい」
と、スマホの検索履歴に残った【黒田紡】を消す。
紡のアパート・中(日替わり)
紡の部屋の押入れの扉が外れた。
パンドラの箱が出てきて、すべて見つかってしまった。
紡「おわりだ」
捨てた思い出を思い出してしまった。
パンドラの箱の下のほうに、1万年の契約書。
広げてみると契約済。
契約書の初めには【転生したら、悪魔だった件】。筆者は【村上サディウス】。
紡、ついていけない(ふり)。
?「見つけてしまいましたね、パンドラの箱は開けてはいけません」
