suddenly⑦

いくつ羊を数えるよりも、あなたの言葉を確かめて

哲の会社・オフィス

哲、会社のデスクでスマホを凝視。

紡のLINEに【元気?】

と打ち込む。

悩んだ末、送信。

哲モノローグ「返信が欲しかった。何でも良かった。俺たちは付き合っている。紡の言葉を確かめたかった」

落ち着かない様子で仕事を再開する哲。

山形駅・改札前(夕)

紡モノローグ「会いたい。それだけで会いに行った」

紡、スマホの時計を見る。一息ついて、白いイヤホンを耳につけて歩き出し、改札に入る。

ラーメン屋・店内(夕)

哲と朝日、向かい合って座っている。

哲のスマホにLINEの通知が来ている。

見ると【紡】と。

哲「…」

紡のことが頭をよぎる。

朝日、哲の様子がおかしいと感じて、哲の目の前で手を振る。

哲、気付いて「ん?」と。

朝日「元カノから突然メール来た、みたいな顔してるよ」

と、冗談ぽく笑う。

哲「嫁だよ」

朝日「誰?」

哲、少し考えてから、

哲「昔の友達」

藤沢家・サキの部屋(夕)

サキ、哲にLINEを送る。

【友達から連絡あった?紡さん】

すぐに返事があって、見る。【あった】のみ。

サキ、溜め息をついて、

サキ「いつもこうなんだから!」

ふと気になって、グループから【芽衣子】を見つけて、電話をかける。

芽衣子「…はい」

サキ「もしもし」

芽衣子「もしもし」

サキ「久しぶり」

芽衣子「久しぶりー」

サキ「聞きたいことあって」

芽衣子「何~?」

サキ「仲良かった紡さんって分かる?」

芽衣子「紡さん?」

サキ「今、連絡取ってる?」

芽衣子「連絡…」

サキ、芽衣子の言葉を聞いて驚く。

サキ「…」

居酒屋・店内(夜)

仕事帰り、スーツ姿のままカウンターで一人飲んでいる哲。

スマホを見る。紡に送ったLINE、既読がついているが、返事がない。溜め息。

小村夏(31)、一人で入店。

哲から一席空けた隣のカウンター席に座る。

店員の宮城すずな(37)、小村を見てすぐに声をかける。

すずな「いらっしゃいませ」

小村「先生~」

すずな「今日はおひとり?」

小村「はい、いつもの!」

すずな「少々お待ちください」

小村、笑顔で返す。

すずな、離れる。

哲「…」

哲、じっと小村を見ている。

小村、視線を感じてチラっと哲を見る。

すぐに目をそらすが、じっと見続けている哲。

すずな、ビールを持ってくる。

すずな「お待たせしました」

小村、声だけで、

小村「ありがとうございます…」

すずなが去って、

哲「話しかけていいですか?」

小村「…はい」

哲「英語話せますか?」

小村「英語ですか?」

と、つい話し込んでしまう。

哲「はい」

小村「英語教室で教えてて」

哲「先生でしたか」

小村「接客に使えるの教えてくれって言われて、すずなちゃんに来るたび教えてて」

哲「(何の気なしに)性格いいですね」

小村、表情が曇って、

小村「偏見です」

哲「え!?」

小村「英語に携わる仕事。奉仕の心。思いやりがある」

哲「…」

小村「いい人なんだろうなぁ、って。勝手に思い込むんですよ」

哲、絶句。

二人、目が合って、

小村「(笑顔で)私もです」

哲「…すみません」

小村「すみません」

哲「…」

小村「気になったんですか?」

哲「え?」

小村「英語」

哲「友達が」

小村「友達?」

哲「昔の友達なんですけど」

小村「…」

哲「グローバル目指すらしくて」

小村「え?」

哲、小村の言葉を遮る。

哲「かっこいいですよね」

と、力なく笑う哲。

小村、気まずくて目をそらす。

沈黙。

小村「良ければ」

と、バッグから英語教室のチラシを渡す。

哲、受け取って、まじまじと見ながら、

哲「…行けたら行きます」

小村「…」

小さいCDショップ・店先~通り(夜)

紡、仕事を終えて外に出る。

哲が待っていて、

哲「おつかれ」

と、声をかける。

紡「どしたの?」

哲「さっき仕事終わって。ご飯でも行こうかなーって」

紡「行こ行こ。お腹減ったー」

と、歩き出す二人。

哲「…(空を見て)晴れてるね」

紡「(空を見て)晴れてるね」

哲「晴れてるよ」

紡「(笑って)そういうとこ好きだなあ」

哲「…紡」

紡「…ん?(と哲を見る)」

哲「これからも会える?」

紡「会えるよ。会える会える」

と、笑って誤魔化す。

哲「会えなかったらどうすんの?」

紡「心のどこかで覚えてるでしょ」

哲「…」

紡「他に好きな人がお互いできたって」

と、哲の手を取る。

手をつないで歩く二人。

哲「…」

紡「ただいてくれたらそれでいい」

哲、辛くなって、泣きそうになるのを堪えて、

哲「…うん」

紡「時効ってことで許して」

哲「ん?」

紡「私はね、哲の声が好き」

哲「…」

紡「怒らないか」

と、笑う。

哲、耐え切れなくなり、紡を握る手に力を込める。

立ち止まる二人。

紡、一瞬驚いて固まり、すぐに笑顔で、

紡「高校生の時の話」

哲、泣きそうになり、顔を隠す。

哲「わかってる、わかってる…」

紡「え、ごめん、ちょっと」

哲、顔を上げ

哲「むかつく、今の俺は?」

紡「(冗談になるように大袈裟に)好き!」

哲「(笑って)ありがとう」

二人、緊張が解けたように笑う。

紡のアパート・外観(日替わり)

同・中

出掛ける準備をしている紡。

哲「どっか行くの?」

紡「コンビニー」

哲「ついてく」

紡「(めんどくさそうに)ひとりでいい」

哲「俺結構いいと思うよ」

紡「(照れ笑いで)はいはい」

哲「行ってらっしゃい」

紡「いってらにして」

哲「(不服そうに)いってらー」

紡「いってきー」

と、笑顔で出かける紡。

?「はぁ、ありえないですね!!」

?「言葉遣いを正すところから始めますか」

世界は狂っている。どうしてこんなにリア充が多いのか。

こんな世界なんて爆発してしまえばいいのに。

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ゆり子

SnowManのファンです。よろしくお願いします。

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