suddenly⑪

いくつ羊を数えるよりも、あなたの言葉を確かめて

スタバ・店内(日替わり)

紡、テーブル席に一人。

スマホのメモを準備する。

【元気だった?】【この辺に住んでるの?】【仕事何してるの?】

【この前なんて言ったの?】と打ち込み、消す。

来客に気付き顔を上げると、哲が店内を見渡している。

思わず、

紡「藤沢くん」

と、声をかけるが、気付かれず。

紡、「聞こえない?」と思い、

手を挙げて軽く振る。

哲、気付いて、紡のいる席に歩いてくる。

紡と向かい合って座る哲。

紡・哲「どうも」

沈黙があって、

紡「なんか飲む?」

哲はバッグの中から、紡のイヤホンを机に出す。

紡「(手に取って)ありがと」

哲、軽く会釈して立ち上がる。

紡「…え、帰るの?」

去ろうとする哲の手首を掴んで、

紡「待って」

哲、振り返り紡と目が合う。

紡「待って!お願い。座って」

と、必死に示す。

哲、再び椅子に座る。

紡「ちょっとまってね。」

と、スマホを操作する。

哲「…」

哲「何から話そう」と悩んでいる紡を見て、紡の前に置く。

紡、気付いて、

紡「なにこれ?」

紡「(理解して)あ、なるほど」

哲「(頷く)」

紡、哲のスマホに少しだけ顔を近付けて、

紡「どうしよ、何言いたいか分かんなくなっちゃった」

哲、思わずふっと笑って小さく声が漏れる。

紡、それを聞いて、笑う哲を見て、「あ、藤沢くんだ」と思って、

少し冷静になる。

紡「…元気だった?」

哲、チラッとスマホを見てから、紡を見て一度頷く。

二人、照れくさそうに何となく笑う。

紡「よかった」

哲【黒田も元気そうでよかった】とメモを書いて、紡に見せる。

紡「うん、元気」

と、笑顔で大きく頷く。

同・外

店から出てきた紡と哲。

哲「じゃあ」と軽く手を振り、歩いていく。

紡、哲の背中に小さく手を振って、「振り向かないかな」と思い、見続ける。

振り向かず、歩いていく哲。

「だよね」と思って、逆方向へ歩き出す紡。

哲、何気なく立ち止まって、振り返る。

紡は背を向けて歩いていて、「だよな」と思って、また歩き出す。

サイゼ・店内(夜)

紡、入店。店内を見渡す。

先に着いていた郊子、手を挙げて、

郊子「紡」

紡、気付いて席へ向かう。

紡「(座りながら)お疲れー」

郊子「ミラノ風ドリア?」

紡「おいしいよね~」

郊子「おいしいよね~」

と、タブレットをいじりつつ、

郊子「それ新しいスカート?」

紡「そうそう、かわいいでしょ」

紡、喋っているのが心地いい。

紡「あのね、この前言おうと思って」

郊子「うんうん」

紡「なんかね」

郊子「うん」

紡「なんだっけ」

紡が言葉に詰まっていると、

郊子「哲君のこと?」

紡「藤沢くんと偶然会えてね」

郊子「うん」

紡「(言葉に迷って)…」

郊子「哲、どんな感じだった?」

紡「(驚いて郊子を見る)…」

郊子「聞こえてる?耳」

紡、動揺して、

紡「え、聞こえてる」

郊子「ライスかパンどっちがいい?」

紡「私ミラノ風ドリア」

郊子「どうしようかな」

紡「え、なんで?」

郊子「はい。注文したよ」

紡「(座り直しながら)ありがと」

郊子「…良かった、思ったより落ち着いてて。言えなかった。ごめんね」

紡「…(そういうことか、と)」

郊子「ごめんね」

紡、少し冷静になって、

紡「ううん。どういうこと?」

郊子「私、最近知って。偶然…哲の妹と会って。それで」

紡「そうなんだ…って、え!?哲の妹?」

郊子、平静を装い、スマホを見たりする。

郊子「哲と会って、どうしたの?」

紡「どうもしないよ。私が落としたイヤホン、藤沢くんが拾ってくれてて。それ返してもらうのに、もう一回会っただけ。それだけ」

郊子「そっか」

紡「…哲に会いたいでしょ?久しぶりに話したいこととか」

郊子「んー、私はいいかな。よろしく言っといて。あ、そうだ、この前チラシもらったんだよ、英語教室の。(バッグからチラシを出して)これこれ。こういうの一緒にどう?哲、喜ぶんじゃない?次会うとき(テキトー)」

紡、チラシを横目に見て、

紡「…」

哲のアパート・中(夜)

物の少ないシンプルな1Rの部屋。

パソコンに向かって仕事をする哲。

静かな部屋にタイピングの音だけが響く。

小さなCDショップ・店内(日替わり)

BGMやアナウンスが何重にも響いている店内。

紡と哲、店内に出て

紡「…うるさ」

哲「(よく聞こえず)え?」

紡「こんなにうるさかった?」

哲「あるかなSnowManのCD」

と、その場を離れる。

紡「…」

紡、一人で試聴する。

来店した客、紡の元へ来て、

客「すみません」

紡「あ、店員じゃないです」

哲、適当に商品のCDを手に取りながら、

哲「つむ、いつ休みー?カラオケ行かない?」

紡「今日この後」

哲「(笑って)今日?すごいやる気じゃん」

紡「(真剣に)聞いてほしい話があって」

哲、深刻な話だと察して、

哲「…どうした?」

フットサル場・コート(夜)

朝日、快、巡がフットサルをしている。

哲、輪に入らずコートの隅に座っている。

朝日、哲を気にしてやってきて、

朝日「(冗談交じりに)どうした。振られたか」

哲「…紡、芦川と会って」

朝日「(驚いて)おー、まじか…」

と、哲の横に座る。

哲「…」

朝日「…いや、大丈夫だって。お前らもう三年とかでしょ?今更芦川出てきたって、ねぇ?(と笑う)」

哲、深刻な顔で朝日を見る。

朝日、様子がおかしいと思い、笑うのをやめ、

朝日「…ん?」

哲「俺は芦川には渡さない、いや、渡らない」

?「年賀状書くって言ってますけど」

哲「ありえねー」

フットサルが趣味の男性陣をよそ目に、カフェでお茶をする女の子たちのもとへ向かう

?と??であった。

?「フラペチーノくださぁい」

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ゆり子

SnowManのファンです。よろしくお願いします。

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