suddenly⑫

いくつ羊を数えるよりも、あなたの言葉を確かめて

デニーズ・店内(夜)

郊子、哲の事情を聞き、言葉を失う。

紡「藤沢くん、そういうことらしい」

郊子「…」

紡「…ごめん、抱えきれなくって。あんま良くないよね、こういうの、勝手に人に話すの(と苦し紛れに笑う)」

郊子「…飲みな、冷めるから。笑って」

と、手を付けてない紡のホットココアを差し出す。

紡、涙目でホットココアを飲む。

フットサル場・コート(夜)

朝日、哲の事情を聞き、言葉を失う。

朝日「…」

哲「納得。そのくらいのことないと、紡のこと振らない」

朝日「…浮気が理由で振ったんだとしても、再会して、わざわざ言う?昔から好きだったんだろ」

哲「…今日、紡どこ行ってると思う?」

朝日「郊子と会ってんじゃない?」

哲「英語教室」

英語教室「VIVA!」・事務室(夜)

デスクで授業の準備をする小村。

小村の同僚・曽山入室。

2人とも英語で、

曽山「黒田さんって小村くんの担当?」

小村「はい、今日からです」

曽山「すごい緊張して待ってたよ。頑張って」

小村「(苦笑いで)頑張ります」

同・中(夜)

紡、英語教室の個人レッスンの初回に参加。

緊張した様子で座っている。

担当講師の小村、個室に入ってきて、紡の前に座る。

以下、英語で

小村「はじめまして。小村です。黒田さんの講義を担当します。よろしくお願いします」

紡「黒田紡です。よろしくお願いします」

小村「はい」

紡「話せるようになれるように頑張ります」

小村「どうして英語、覚えたいんですか」

紡「話したい人がいて。その人が英語使うみたいで」

小村「好きな人が英語を使うんですか」

紡「出会ったところは日本で」

と、寂しげに笑う。

小村「…」

授業を終えて。

小村、ホワイトボードの板書を消しながら声だけで話しかける。

小村「お疲れさまでした」

紡、疲れた様子。

小村「質問ありますか」

紡「あ、はい(と綺麗に挙手)」

小村「はい(どうぞ、と)」

紡「普通に話せるようになるにはどのくらいかかりますか」

小村「発音すごくいいですよ」

紡「ですよね」

小村「話したいって思う人は沢山いるかもしれませんね」

紡「話したくない」

小村「初めからないと、決めつけないでください」

紡「(なるほど)…」

小村、紡の前に座り、改まって、

小村「すごく好きな人と出会ってるんですね」

紡「…え?(なんの話?)」

小村「すごく好きな人と出会ってるんですね」

紡「…え?(なんの話?)」

小村「すごく好きな人、います?」

紡「いますよ」

小村「すごく好きなんですね」

紡「え、はい」

小村「そういうとき、どうします?」

紡「えっと…」

小村「私は、この人と出会わなければ、こんな悲しい思いしなくて済んだのに、って」

紡「…」

小村「思ったことがありました」

紡「好きですって言いたいです」

小村「…」

紡「って、思ってます」

小村「(微笑んで)そうでしたか」

哲のアパート・外(夜)

哲、帰宅しアパートの外階段を上がっていく。

同・中(夜)

哲、玄関を上がるとスマホにLINEの通知。

紡から【今、話せる?】と。

哲「…」

紡のアパート・中(夜)

紡、哲からの返信を見る。

【いいよー】と。

紡「…よし、」

電話する。電話を切る。すぐに返信が来る。【ありがとう】と。

紡「楽しかった~」

続けて【おやすみ】

紡「寝よ~」

哲のアパート・中(夜)

哲、紡からの返信を見る。

【おやすみ】と。

哲「…」

少し躊躇い、考えてから【おやすみ】と打ち込む。

藤沢家・リビング(夜)

茜、父、はつね、さきが話している。

茜、哲のLINEを見て、

茜「哲、日曜帰ってこないって」

父「仕事忙しいんだろ」

茜「約束あるって」

さき「彼女かな、いないか」

はつね「哲、あの子と付き合ってんじゃないの?あの、なんだっけ、あの子」

さき「ああ、つむちゃん?」

はつね「それだ、つむちゃん」

茜「つむちゃんは友達だよ。早くから知ってるから、いろいろ相談乗ってくれてて、なんかこう…家族みたいな?」

はつねとさき、声に出さず。

はつねは、部屋へ戻っていった。

いつも部屋で何をしているのか。

?「いつも見てます」

??「そんなあなたを見ています」

見ているということは、見られているということなんですね。

  • 0
  • 0
  • 0

ゆり子

SnowManのファンです。よろしくお願いします。

作者のページを見る

寄付について

「novalue」は、‟一人ひとりが自分らしく働ける社会”の実現を目指す、
就労継続支援B型事業所manabyCREATORSが運営するWebメディアです。

当メディアの運営は、活動に賛同してくださる寄付者様の協賛によって成り立っており、
広告記事の掲載先をお探しの企業様や寄付者様を随時、募集しております。

寄付についてのご案内