日本で育った人で、ドラえもんというキャラクターを知らない人はほとんどいないと思います。私も子どものころから、金曜日の夜にテレビの前でドラえもんのアニメを見ることが一番の楽しみでした。どこでもドアやタケコプターという「ひみつ道具」があったらこんなことをしてみたい、と考えた人も多いと思います。実際にアニメの中でドラえもんは、友達ののび太のことを心から理解し助けてくれる大切な友達です。
世界中で知られているドラえもんですが、実は日本と同じくらい、もしかしたら日本以上にドラえもんの人気がある国があることをご存知でしょうか。それはベトナムです。ベトナムでは、ドラえもんのうたを知らない人はほとんどいないくらいの人気キャラクターですが、日本よりもドラえもんが人気の国があるなんて、にわかには信じられませんよね。一体どういうことなんでしょうか。
当初、ベトナムや海外では、いわゆる「海賊版(著作者に許諾を得ず販売し利益を儲ける違法な作品)」のドラえもんが蔓延し、作者である藤本先生や、著作権を持つ小学館には利益が入らない歪な状態でした。正規版の漫画やアニメの販路が安定したことで少しずつその問題が是正されていき、ベトナムでドラえもんはどんどんと市民権を得ていきます。
ここまでなら人気作品にはよく起こる話ですが、作者の藤本先生は、そののちに大きな決断をします。ベトナムでのドラえもんに関する売上の全てを受け取らないことを決めました。「こんなにドラえもんを子どもたちが愛してくれているなら、その売り上げを子どもたちの将来のために使ってほしい」と、子どもたちの奨学金として寄付したんです。どれだけお金を持っていても、このような決断をできる人がどれだけいるでしょうか。経済的に恵まれない環境にいた子どもたちも、ドラえもんのおかげで学校で学び、就きたい職業のための勉強をし、夢をかなえた人たちがたくさんいるんです。ドラえもんは作品の中だけではなく、現実でも子どもたちの夢をかなえているんです。
