いくつ羊を数えるよりも、あなたの言葉を確かめて
紡のアパート・中(日替わり)
哲、リビングの電球を取り換える。
紡「ついたついた!ありがと!」
哲「いいえ」
紡「家に哲来てくれて良かった」
哲「(笑って)いるじゃん」
紡「(笑って)そうだ。いるや」
紡「…あ、ちょっと買い物行ってきていい?」
哲「手伝おうか?」
紡、出かける支度をしながら、
紡「大丈夫。ゆっくりしてて」
哲「いってらっしゃい」
紡「いってきます」
と、手を振り合い、出かけていく紡。
哲「…」
通り
歩いている哲と紡。
紡の買い物に付き合った哲、分かれ道に来て買い物袋を差し出す。
紡「ありがとう」
と、袋を受け取る。
哲「じゃあ、ここで」
紡「帰らないの?」
哲「ちょっと行くとこある」
紡「出た。イヤホン忘れたやつだ」
哲「(頷く)」
紡「(冗談交じりに)告白でもするの?」
哲「謝ろうと思って」
紡「(へぇ、と頷く)…」
紡のアパート・中(夕)
哲、ぼんやりテレビを見ている。
ふと、机の上にてんとう虫がいるのに気が付き、指先に乗せる。
ヨークベニマル・外(夕)
店から出てきた紡。
前の通りから哲がやってきて、
紡「あれ、哲?」
哲「あれ、つむちゃん」
紡「ちょうどよかった。帰るとこだよね?持って持って。重い重い」
と、買い物袋を持たせる。
哲「はいはいはい」
紡のアパート・中(夕)
部屋にあがる哲。
哲「あ…じゃあ、そのへん」
と、ソファを示す。
紡、頷き、遠慮がちに腰かける。
沈黙。
テレビの音も聞こえない。
気まずく思い、立ち上がって冷蔵庫を開ける。
中を見ながら、
哲「紡、飲む?」
返事がなくて、
哲「(紡に振り返りながら)つむぐ?」
紡、哲に話しかけられたことに気付いていない。
哲「…(そうだった、と)」
小さく頭を下げて、飲み物を受け取る。
哲「…誕生日が早いから、つむのハタチの誕生日に一緒に飲みに行こうって。それまでお酒飲まないでいるからって、言ってたくせに…」
哲「つむ」
気付かない紡。
哲「つむ、無視すんなよー」
気付かない紡。
哲、泣きそうになって、
哲「つむ!」
少し間があって、何気なく哲へ振り向く。
哲「…」
哲、今にも泣き出しそうな紡を見て、心配になり立ち上がる。
哲、紡をまっすぐ見て声で話し続ける。
哲「それのせいで別れたの?それ隠したくて、心配かけたくなくて消えたの?」
紡「…」
哲「隠して、別れるとか、そういう風に決めちゃう感じ。紡に迷惑かけたくないとか、わかるけど、わかるけどさ…」
紡「…」
哲「なんで俺に言ってくれなかったの?力になれないって思ってるかもしれないけど、言ってくれないのはさ」
と、泣いてしまう。
紡、何を言われているかわからず、
紡「…」
玄関の戸が開く音。
哲、紡と二人は気まずいと思い、
哲「あ、俺、朝日んとこ」
と言うが、紡はすぐに哲を追いかけて行く。
哲「…(紡を見る)」
紡「(哲と目が合って)…」
同・外(夕)
泣きながら、早足に歩いて行く哲。
[回想]山形学園高校・校庭
哲、紡を見かけて、
哲「紡」
哲、気付かず校門を出ていく。
哲、追いかけてもう一度、
哲「つむ!」
哲、紡だと気付いて立ち止まる。
振り返らずに足を速める。
紡、わざと無視されたとわかって、
紡「(笑って)ちょっと!無視すんなよ!!」
笑って振り返り、哲を待つ。
哲、紡の元へ来て、
哲「なんで逃げんの」
紡「うわ、哲の声だ、って思って」
笑いながら歩いて行く二人。
紡のアパート近くの坂道(夕)
紡、哲を追いかけ、後ろから話しかける。
紡「哲…なんか話そ」
哲、前を見たまま歩きながら、
哲「話したくない」
紡「…ごめん、村上君と会ってたの」
哲「そんなこと怒ってない、そんなの別に全然気にしてない」
紡「…」
哲「気にしてるけど、すごい気にしてるけど、でも、大したことない。気にしてるってほどじゃない」
紡「…なんかあったの?」
哲、立ち止まり、紡に振り返る。
哲「なんかあるよ。いろいろある。簡単に受け入れらんないこと、いっぱい」
紡「…」
哲「すんなり受け入れて、英語まで覚えて、顔見て話して…すごいよね、すごいよ」
紡「…」
哲「つむ、村上にとられるんじゃないかって」
紡「(首を振って)ないよ」
哲「そう思って、そういうこと気にして、イライラしてる方が…楽だった」
紡「…(え?)」
哲「村上のこと悪く思えれば、楽だったから」
紡「…哲」
哲「…名前呼んで、振り返って欲しかっただけなのに…」
昼寝をする二人。
昼寝明け。
紡「…ブルべの哲がかわいい…」
哲「…夢?恋に落ちるとこだった、好きになったかも」
紡「…全部欲しい…」
哲「請け負いたい…思いってだけで、だから好きってわけでは…え、そゆこと?おいふざ」
寝ぼけたまま会話をする二人。
まどろみの中、二度寝をする。
紡「お風呂入って準備しなきゃ」
先回りしてお風呂で待つ哲。
?「いつ転生するんですかこの人たち」
