いくつ羊を数えるよりも、あなたの言葉を確かめて
紡のアパート近くの坂道(夕)
泣き出した紡を見て、
哲「…ごめん」
紡、声にならず、首を横に振るだけ。
哲「…謝っといて、」
紡、顔を上げる。
哲「いろいろ勝手にしゃべって、多分なんも伝わってないから。別に怒ってないし、大丈夫だからって、適当に説明して、」
と、帰ろうとする。
紡、哲の腕を取って引き留め、
紡「自分で話した方が良い、自分で伝えた方がいい」
哲「…俺話せないし、紡の方が、」
紡、何度も首を横に振って、
紡「私が言ったんじゃ意味ない。伝わんない」
哲「…」
紡のアパート・中(夕)
玄関の扉が開く音がして、
哲「つむちゃん大丈夫?」
と、立ち上がると、紡と哲が部屋に入ってくる。
紡「(不愛想に)ただいま」
哲「…つむちゃん」
紡「ごはん食べに行くよ。サイゼでいい?」
哲「やだ、マイと朝日とか…この4人でサイゼ絶対やだ」
紡「4人でサイゼ行くわけないでしょ。2人は置いてく」
哲「え?」
紡、哲を見て、目が合い、すぐそらす。
紡「(哲に)じゃ、あとよろしく」
哲「…」
紡「哲、行くよ」
哲「(紡を気にしつつ)うん…」
と、部屋を出て行く紡と哲。
紡、スマホを出して何か打ち始める。
哲、「どうしよ…」と思っているとスマホにLINEの通知。
哲を見て、目が合う。
哲、【紡とごはん食べに行く】【二人で話す】と返信。
スマホに文字を打ち込んでいる哲。
紡「めんどくさいだろうな」と思い、
タブレットを哲の前に置く。
哲「(気付いて)…なに?」
紡、思わずくすっと笑い、LINEを送る。
【サイゼ食べに行くから大丈夫】と。
哲、それを見て笑い、
哲「そ。お腹減ってるとね。余計に」
紡、「それね」と哲を見て笑う。
サイゼ・店内(夜)
ミラノ風ドリアを食べる紡。
アリゴを食べる哲。
紡「お腹減ってたから余計イライラした…」
哲「この前死んだとき、助けてくれてありがとう。つむも死ぬなよ」
紡「何でどっちも死んでんの」
哲「(笑って)元親友同士で?うける」
紡「(真顔で哲を見る)…」
哲「(目が合って、笑うのをピタッとやめて)全然うけない。なんもおもしろくない」
紡「…話せば分かる」
哲「仲いいもんね、もともとは」
紡「…」
哲「分かってるよみんな、藤沢くんが普通にいい人だって。俺はつむ推し」
紡「うん…分かってる」
紡のアパート・中(夜)
哲と紡、ビールを飲みながら話す。
哲はLINEでメッセージを送る。
紡「芦川のフットサル場、最近は卒業生の溜まり場になってて。先生もフットサルしろって怒りつつ話に混ざってて」
哲、笑う。
紡「みんな全然変わんないよ。ほんとそのまま」
と、立ち上がり、キッチンへ向かう。
哲「(紡を目で追って)…」
紡「なんか違うの飲む?さすがにこれ以上怒られるかな」
紡「どうしよ、なんか買い足しといたほうがいいかな。ただでさえ機嫌あんなだし」
哲「…つむ」
と、声を出す。
紡、振り返り、驚いて哲を見る。
哲「…」
紡、タブレットを「これ」と差し出す。
哲「…あ、ごめん。(戻って)独り言。気にしないで」
紡「…(頷く)」
哲「(何か言おうとして)…」
紡、哲の思うことを察して、
紡「…しゃべったほうがいい?」
哲「(首を横に振る)…全然変わんない。なんか、久しぶりだからびっくりしただけ。名前呼ばれるの(と微笑む)」
紡「…」
哲「しゃべりたくないから、しゃべんなかったんでしょ?だったらいいよ。紡が好きな方で。(笑って)つむも自分が好きなように話せばいいよ」
紡「…」
哲「紡、ほんと全然変わんないね」
紡、LINEを送る。
【哲も変わんないね】と。
哲「(どういう意味か分からず)何が?」
紡、哲を見て笑う。
哲「(つられて笑いつつ)え?」
紡、続けて【黙っててごめん】と。
哲「(首を横に振る)…」
紡【心配かけたくなかった】と。
哲「(微笑んで)大丈夫、大丈夫。分かってる」
紡【黒田にもちゃんと謝りたくて】と。
哲「…つむ、大丈夫だよ。この3年、ずっと一緒にいたけど、(冗談交じりに)紡の心配とか要らない」
紡「そっか」と笑って頷く。
哲「付き合いだしたとき、みんなから、なんでお前なんだよって、つりあわねえよっていわれたけど(と笑う)」
紡「そんなことない」と首を横に振る。
哲「周りがどう思ってても、俺もつむも好きで一緒にいるから」
紡「…」
哲「任せとけ、とまでは言えないけど。今のつむもちゃんと楽しそうだから」
紡、少し間があってから、笑顔で頷く。
楽しそうな二人をお届けしました。
?「若いね」
??「ね」
