いくつ羊を数えるよりも、あなたの言葉を確かめて
紡のアパート・中(夜)
紡、帰宅。恐る恐る中へ入る。
紡「ただいまぁ…」
哲、1人で机の上を片付けている。
哲「あ、おかえり」
紡、部屋の中を見渡して、
紡「…藤沢くん?」
哲「(ふざけて)生き返らなかったらどこに俺を埋める予定だったの?」
紡「(笑顔で)東京湾」
紡、にこやかな笑顔。
哲、恐怖を覚える。
紡「え、冗談だよ。なにその顔、そっくり」
哲「黒田さん冗談とか言わない人じゃん…もっとつまんない人じゃん」
紡「(笑って誤魔化しつつ)ちょっと前から変わったんだ」
哲「ん、そっか。色々使っちゃった。コップ洗うね」
紡「あぁ、ありがとう…話せた?」
哲、洗い物を始めて、
哲「うん、話せた話せた」
紡「何話せた?」
哲「えー(何を言うか悩んで)…内緒」
紡「(笑って)内緒?」
哲「恥ずかしいじゃん」
紡「そうかな?郊子と話したこと、哲に全部言える」
哲「それは聞いていい?」
紡「まあね」
と、笑いながら話す二人。
哲、安心した様子で、
哲「コンビニ行ってくる。なんか欲しいものある?」
紡「チョコレート」
哲「おっけー、いってくるー」
紡「できた彼氏だよね!」
哲「紡と付き合ってる以上、ね!」
紡「ん?」
哲「紡と話すとき、考えすぎだったかも」
紡「つむは、俺に任せとけ!とか言いなよ」
哲「えー」
紡「ださいかな?」
二人、笑いあって、少し間があって、
哲「つむ、高校の時から全然変わってないね」
紡「わかる、話してみると、あ、藤沢くんだ!ってなる」
哲「ね。変わってなくてよかった。紡がこんな感じなら、こっちも気遣わなくていいっていうか」
紡「たしかに」
哲「紡のこと、1番に考えられるっていうか」
紡「(照れ笑いで)なにそれ。ださ。はず」
と、哲を軽く叩く。
笑って紡の手を受け止める哲。
ファミリーマート・外(夜)
紡、コンビニに入ろうとすると、中から哲が出てくる。
二人、同時にお互いに気付いて「あ…」と。
紡、無視してコンビニに入ろうとすると、
哲に腕を取られて、
紡「えっ、なに」
と、振り返る。
哲にコンビニの袋を渡される。
中には缶ビールが4本。
紡「…あぁ、飲んだ分ね」
哲、去っていく。
紡「藤沢くん」
哲、気付かず歩いて行く。
紡「あ、そっか」
と、哲を追いかけて、貰った缶チューハイの1本を哲の頬に当てる。
哲、驚いて振り返る。
紡「1本まけてあげる」
哲「…」
紡「1本あげる。残り貰っとくから」
と、哲の頬に缶を押し当てる。
缶を受け取る哲。
紡「じゃあ、車に気を付けてね」
と、哲に背を向けて立ち去る。
哲「…」
紡の後ろ姿を見つめる哲。
藤沢家・リビング(夜)
サキ、帰宅。
サキ「ただいまー」
茜、キッチンで食事の支度をしながら、
茜「おかえり。哲、元気だった?」
サキ「悩んでる感じあるけど、口はさむなって感じだったね(と律子を見る)」
茜「(チラッとサキを見る)」
サキ「すっごい元気だったよ。いろんな話して、盛り上がっちゃって、夜中まで語り明かしちゃったよね」
茜「あっそ」
サキ、茜に背を向けて、食卓にいる父に、
サキ「お兄ちゃんとこ行くって言わないでって言ったじゃん」
父「言ってないよ」
サキ「じゃあなんで茜知ってんの?なんか機嫌悪いじゃん」
父「透視されてるよ」
と、茜を指さす。
サキ、茜に振り返ると、じっとサキを見ている。
サキ「…」
通り(日替わり)
二人で出掛けている紡と哲。
ベンチに飼い犬を連れた女性が座っている。
紡、吸い寄せられるように犬の元へ。
哲、いつものことだと思って後ろをついていく。
紡、しゃがんで犬と見つめ合って、
紡「(飼い主の女性に)わしゃわしゃしていいですか?」
女性「(笑って)どうぞ」
紡、嬉しそうに犬を撫でまわす。
哲、紡の横にしゃがんで見守る。
近くのカフェから出てくる快とマイ。
快、哲と目が合って、
快「…」
哲、思わず立ち止まる。
マイ、哲に「ん?」と。
紡、哲とマイに気付かず、犬を見たまま、
紡「ねっ、哲見て見て」
と、横にいる哲の手を取る。
紡、哲と視線を合わせ、
哲「ん?」
紡「良い子、ちゃんとお手するの。かわいい!」
哲の手を握ったまま話している紡。
快、手を握る二人を見て、
快「…」
マイ、何となく理解して、「行こう」
と、快の背中を押し歩き出す。
快とマイ、歩きながら
マイ「あの子、彼氏いるんだ」
快「(頷く)」
マイ「彼氏、快の知ってる人?」
快、一瞬考えてから、
快「友達」
紡と哲、歩いている。
紡「やっぱさ、ペット可のとこにしようよ」
哲「生き物はなあ」
紡「飼うのいや?私ちゃんと部屋そうじするよ」
哲「いつか死んじゃうよ?悲しいよ。つむがいるからいいけど」
紡「哲、付き合い始めたころも言ってた」
哲「ペット飼う話したっけ」
紡「ううん。始めちゃうと終わっちゃうって話」
哲「え?」
紡「いつか別れること考えちゃうから、女の子と付き合うの勇気いるって話。付き合いたての彼女に言うなよって思ったけど(と笑う)」
哲「ぬるっと付き合い始めちゃったから」
紡「(小さく笑って)たしかに」
哲「もし別れても、」
紡「え?」と哲の顔を見る。哲、前を見たまま、
哲「別れるまでに、楽しいことがあったら、それでいいのにね」
紡「別れないのが1番いいけどね(と下を向いて笑う)」
哲、紡に合わせるように笑って、
哲「そうだね」
哲のアパート・中(夜)
哲、仕事をしているとLINEの通知。
紡から。
【なんか無視したみたいでごめん】と哲。
紡【こっちこそ忙しいのにごめん】
すぐに返信。
紡【一緒にいたの彼女?】
哲【彼女は紡だけだよ】
?「甘いっすね、4か月くらいっすか」
??「なんかいいよね、サイゼとかファミマとか」
思い出を作りたいおふたり、実は悪魔。
