天使と悪魔

 天使の少女は目覚めるとそこは野獣用の檻に閉じ込められた。鉄格子から
見える光景を見回すと男の人魚、ケルベロス、グリフィン等も少女と同じく
檻に閉じ込められた。「ここ、どこ?」天使の少女は記憶を巡らせる。「確か、
人間界での仕事を終わって天国に帰ろうとした時に後ろから誰かに殴られて
それから視界が見えなくなって…。」そこから記憶が途絶えている。
 「目覚めた様だな。」檻の外から人間のサラリーマン達が着る様なスーツを
まとった紫色の悪魔が天使の少女に近寄る。「天使を連れてきたのは初めてだ。
これは高く売れるぞ。」悪魔は微笑む。「売れる?売れるとはどういう事
ですか?」天使の少女は紫色の悪魔に問う。「ここは地獄の奴隷屋。悪魔達に
奴隷を売る店だ。」悪魔から答えを聞いて天使は絶望した。悪魔は異種族を
奴隷にする。奴隷の命尽きるまで自分達の好きなように扱うということを天国で
教えられていた天使の少女にとって故郷である天国には帰ることは出来ず、
親や友達にも会えない。そんな現実を目の当たりにしたのだ。店の奥の方から
客が来店たことを知らせるベルが鳴る。「おっと、そろそろ仕事に戻らないと。」
 紫色の悪魔は急ぎ足でレジへ行く。店の奥の方からおそらく客であろう黒い
マントをまとった小豆色の悪魔がやってきた。「いらっしゃいませ。お客様、
どの様な奴隷をお求めで?」「メスでモデル体型の奴隷が欲しい。」紫色の問いに
対して小豆色の悪魔は答える。「なら丁度良い奴隷がいますぜ。」紫色の悪魔が
天使の少女へ顔を向ける。小豆色の悪魔は天使の織の外から怯えている天使を
品定めかのようなじっくり観察している。「ほぅ、天使の奴隷は初めて見るな。」
 小豆色の悪魔が独り言を呟く。「よし、この奴隷を買おう。いくらだ?」
 小豆色の悪魔が紫色の悪魔へ振り返る。「お値段は…そうですねぇ、天使初の
奴隷なのでざっとこのくらいかと。」紫色の悪魔は即座に値札を書く。
 「思ったよりも安いな。」小豆色の悪魔がリュックサックサイズの魔法陣を
目の前に出現させてアタッシュケースを取り出しす。アタッシュケースを
開けると地獄の通貨であろう札束がたくさん詰め込められている。「こちら奴隷の
所有権書です。サインお願いします。」紫色の悪魔がペンと一緒に所有権書を
出した。天使の少女は抗う事もできず、ただその光景に涙するしかなかった。

 小豆色の悪魔が所有権書にサインするとアタッシュケースの札束をすべて
紫色の悪魔に渡した。「これで天使の奴隷はあなたの物です。」紫色の悪魔は
小豆色の悪魔と硬い握手を交わしたのちに天使の少女が入った檻を包み紙で
包み込み小豆色の悪魔が乗ってきたであろう馬車に乗せた。そのまま小豆色の
悪魔は自身の馬車に乗り込みそのまま出発した。馬車に乗せた檻の中では天使の
少女はうずくまってすすり泣いていた。自分の家に着いた小豆色の悪魔は檻を
降ろし、馬車はそのまま去って行った。檻は家の比較的広いリビングに置かれ、
小豆色の悪魔は魔女の妻と自身の息子を呼びにリビングをあとにした。檻の中に
いる天使の少女はこれからどんな扱いを受けるのだろうと怯えていると小豆色の
悪魔が青色の肌に紫色の髪色の魔女の妻と父と同じ体色の息子が連れてきた。
 「珍しい奴隷って言ってたけどちゃんと頼んだ通りモデル体型の女の子
なんでしょうね?」「安心しろ。よーく観察してモデル体型かどうかちゃんと
見極めたさ。」魔女の妻と悪魔の旦那の会話に天使は(なぜモデル体型である
必要があるのだろう?)と疑問を感じた。
「親父、それと性格の良いカワイ子ちゃんにしてくれたか?」「お前が求める子か
どうかはどうでもいいから知らないな。どうしてお前は奴隷と結婚しようとして
まで愛とやらが欲しいんだ?」「まぁまぁ、早く奴隷ちゃんとご対面しましょ。」
 父と息子を早く奴隷が見たい母がなだめつつ急かす。小豆色の悪魔は
ビリビリと檻の包みを破いていく。包みを全て破き天使が入っている檻が姿を
現した。「あら、確かにモデル体型だけど天使の奴隷ちゃん?天使の奴隷ちゃんは
初めて見るわね。」魔女はじろじろと天使を観察している。「おい親父。ここは
天国じゃないのにどうして天使がいるんだ?」息子は少し口調を悪くする。
 「奴隷屋で買ったんだ。こいつは貴様のくだらない結婚相手にするよりも
利用した方が価値がある。」小豆色の悪魔は懐から檻を開ける鍵を取り出し檻を
開けた。「さっさと出で来い。取引しよう。」天使は言われた通り檻から出る。

 「おい、お前はどうやって地獄に来たんだ?」息子の問いを怯えている天使は
聞こえないふりをした。「へぇ、あなたが取引なんてねぇ。あの時から取引が
キライになったのかと。あ、よろしくね奴隷ちゃん出した。」魔女は天使に
気さくに挨拶する。悪魔が天使をテーブル席まで連れて座り込む。「お前も
座れ。」命令の様に天使に促す。悪魔は魔法でペンと一枚の契約書を出した。

 「おい天使、お前の名前は?」「ザクエルと申します。」ザクエルは律儀に
お辞儀をしながら答える「私はべリアロク・ビート。ザクエル、貴様は天国に
帰りたいか?」「え?」悪魔から予想外の言葉が出てきてザクエルは困惑し、涙を
流した。「帰してくれるのですか?!」ザクエルは食い気味に問う。
 「まぁ落ち着け。確かに帰してやるがタダって訳じゃあない。この契約書を
見ろ。」ザクエル涙を拭いはビートから契約書をもらい、見ると

1.ザクエルが地獄にいる間は肉体的にも精神的にも傷つけない。
2.天国に着くまでべリアロク家の奴隷として過ごす。(奴隷の所有権は家長で
あるべリアロク・ビートにあるものとする。)
3.必ずザクエルを天国に帰す。
4.ザクエルが天国に着いた際はべリアロク・ビートの願いを叶える。

と書かれていた。「願い?願いとは何でしょうか?」「『悪魔が無期限かつ自由に
天国にも行ける様にに神から許可を取ってきて欲しい。』、だな。」「そんな無茶
ぶり…でも無さそうですかね?」天使は一瞬頭を悩ませた。「もしもこの契約
通りに私を天国に帰す事が出来ればワンチャンあります。」「取引成立だな。
ここにサインしてくれ。」ザクエルはビートからペンをもらい契約書に
エデダイス・ザクエルと名前をサインした。「ちょっとぉ、この子を天国に
帰しちゃうの?」ザクエルがビクッと後ろを振り向くとそこには契約書を覗いて
いる魔女とビートの息子の姿があった。「しかもなんで親父の願いだけなんだよ!
俺と母さんの願いも叶えてくたっていいだろ。」「サインが済んだ以上もう遅い。
それに貴様らの『メスの奴隷が欲しい。』という頼みは叶えてやっただろう。なら
次は私の願いを叶える番だろう。」息子に対してビートは反論する。「ザクエル、
今日はもう遅いからダイモンのベットで寝てくれ。」「おいちょっと待て。俺の
ベットで寝かせるのか?」息子が反対した。どうやらダイモンは息子の名前の
様だ。「貴様は床に布団を敷いて寝ればいい。利用価値があるザクロスを丁重に
扱うのが普通だろう?それが嫌なら私を力と知恵でねじ伏せてみろ。」ダイモンは
悔しそうな表情を浮かべるもザクロスを自身の部屋まで案内し、ザクロスは
ベットに入った。「その、ベットを貸してくださりありがとうございます。」
 ザクロスがお礼の言葉を述べるもダイモンは無視して床に布団を敷く。

 「明日から奴隷の生活。最低限安全が保障されているとはいえ心配ですね…。」
ザクロスが心配の気持ちでいっぱいに様だ。床で寝ているダイモンはベットを
取られたのが腹立たしいのかザクロスを睨んでいた。
 翌朝、ダイモンがザクロスより一足早く起床し、リビングで母と朝食を摂る。
「あら、ザクロスちゃんは?」「のんきにグースカ寝てたからおいてきた。」
 おぞましい姿をした朝食を口にしながらダイモンは答えているとザクロスが
あくびをしながらビングにやってきた。「おはようございます。ダイモン様と…。」
 ザクロスの言葉がつまった。魔女の名前を知らないからである。「私の事は
ウィチドと呼んで頂戴。」「ウィチド様おはようございます。」ウィチドから
フォローしてもらうザクロス。「ザクロスちゃんの朝食を作ってみたんだけど、
どう?」ザクロスが席につくと黄身が紫色の目玉焼きにカリカリに焼かれた
青色のベーコンが用意されていた。「これって、人間達の朝食ですか?」
「昨日に天使について調べてみたら人間に近い食性だって書いてあったから
人間の朝食に似せて作ってみたのよ。」ウィチドからスプーンとフォークを
もらいザクロスはベーコンから口すると顔をしかめた。「うーん、ほろ苦い…けど
仮にも奴隷の身。贅沢は出来ませんね。」ザクロスが愛想笑いすると今度は目玉
焼きを頬張るとまた顔をしかめた。「酸味が少々、強いですね。」「大丈夫よ、
そのうち慣れるわ。」ザクロスとウィチドが雑談しているとダイモンが食器を
片付け、手提げ袋を持ってそのままどこかへ出かけていった。
「今日はダイモン様はお出かけですか?」「違うわ。今日は学校よ。成績トップ
10以内であれば自分で学校を休める権利があるから今日のテストで張り切って
いるのよ。」ウィチドが自慢げに語る。「そういえばザクロスちゃん、あなたは
今日どうするつもり?」「掃除に洗濯などの家事をするつもりです。」「それが
終わったら何するの?」ウィチドが質問攻めに困惑するザクロス。「そうですね、
ずっと天国でやっていた趣味がありまして…。」

 5時間後、ウィチドがリビングで紅茶を飲みながらゆったりしていると
ダイモンが帰ってきた。「帰ったぞ~。」「テストどうだった?」ダイモンがゴソ
ゴソと手提げ袋から満点のテスト用紙と成績表を取り出す。「まさかの5位
だった!これなら夏休みの宿題もゼロにしてもらえるぜ。」「ダイモンお勉強
頑張ったもんねぇ。」テスト用紙と成績表を受け取りながらダイモンを褒める
ウィチド。「そういえばあの奴隷は?あいつにちょびっと切り傷をつけて取引を
取り出す。無効にして新しく取引したいんだけど。」ダイモンが手提げ袋から果物
ナイフを取り出す。「ザクロスちゃんならあなたの部屋よ。あまり大きな傷は
目立つから指の皮膚を軽~く切るだけにしてよ。」「分かった。」ダイモンが部屋に
入るとそこには折り紙で二羽の折鶴を折るザクロスの姿があった。「なんだこの
芸術作品は?!」ダイモンは果物ナイフをポイ投げして、そのまま折鶴に釘付けになった。

 「スゲェ…この芸術作品は一体何だ?」「人間界にある折り紙といって、紙を
折ったりする一つの工作がありましてその中でも有名な鶴です。仕事で人間界に
行った際に折り紙という興味深い存在に出会ってそこから色んな折り紙を休日を
使って調べて自分で作ったりしました。」自分が負った鶴を褒められて嬉しそうな
様子でザクロスが解説する。「地獄にも色んな娯楽がある様に人間達にも色んな
文化があるのか…!」ダイモンは食い気味に興奮する。「地獄にはどんな娯楽が
あるのですか?」「何でもあるぞ。カジノや遊園地、動物園に博物館や映画館、
ゲームセンターとか色々。」ザクロスは少し落胆した。「どれも人間達の娯楽
では?」「まあな。娯楽はほとんど人間達のものを模倣して作っているからな。
あそこまで欲望に忠実に作りあげることが出来るのは器用な手先と発想力を
持った人間だけだ。」『人間は助けるべき対象』という認識のザクロスにとっては
欲望に忠実な人間がいるというのは誤りだと考えた。

 翌日、「ダイモン、ザクロス、おはよう。」ウィチドの朝の挨拶をリビングで
朝食を食べているダイモンとザクロスにする。「母さんおはよ~。」「ウィチド様
おはようございます。」焦げている緑色の食パンを食べながら挨拶するザクロス。
 「今日はね、ザクロスちゃんにちょっと協力してもらうわよ。」「そうか、母さん
今日はあの日だっけ。」ザクロスが全員分の食器を片付ける。「具体的には?」
「二つあってね、一つ目は買い物の手伝い。二つ目は、見てからのお楽しみ♪」
 ザクロス、ウィチド、ダイモンは出掛ける支度を終えたのちに馬車で
ショッピングモールへ移動している。「ザクロスちゃん、あなた仮にも奴隷だから
この首輪つけてちょうだいね。」ウィチドから鎖の首輪をつけられ、少し息が
苦しくなるザクロス。首輪をつけた後、ショッピングモールに到着して入店した
ザクロス達は色々な布、頑丈な糸など素材を取り揃えた手芸専門店『ヌイト』へ
足を運んだ。「ここにはお洒落な服を作るのに欠かせない最高の生地がたくさん
あるからいつもお世話になってるわ。」ウィチドは買い物カゴを手に取りカートに
セットした。そのまま生地に着くとロール状に巻かれている赤色の生地、ジーン
ズの生地、黒い糸をカゴへ入れていく。「あ、あれなんか欲しい。」ダイモンが
マスコットのコーナーからゾンビの様なぬいぐるみを持ってきた。「なんですか?
その人形は?」「これは『ゾンビくん人形』といってな、中に自分の爪や角の削り
カスを入れると自分が死ぬ時にこいつが身代わりになってくれるんだ。」死んだ
としてもあっさり蘇る事が出来る代物を作っていた悪魔達の『死』に対する
解釈を察したザクロスはひいた。

「『死』に対する解釈が狂ってる…。」「これが悪魔なのよ。ダイモン、カゴに
入れなさい。」ダイモンがゾンビくん人形をカゴに入れた。その後は駆け足気味に
会計を済ませ、再び馬車に乗り込みショッピングモールを後にした。
 「『レシャオ・ウトマ』までお願い。」ウィチドが馬車の御者に目的地を伝えると
馬車は出発した。「そうか、今日は新しい奴隷用の服のファッションショーだった
っけ。」「そう。だから奴隷であるにザクロスちゃんにモデルやってもらいたくて
着せるための奴隷用の服の服を作るためにあそこで素材を買ったのよ。」
ザクロスは今まで疑問だった『モデル体型の奴隷』という条件がなぜ必要だった
のかをようやく理解した。ちょうど馬車はレシャオ・ウトマに到着し、ウィチド
一行はモデルの控室へ駆け込んだ。「ダイモン、あなたは部屋の外にいなさい。
ここでザクロスの服作りたいから。」ダイモンは素直に部屋の前へ行った。
 ウィチドは魔法で巻き尺などの道具を使い、ザクロスのサイズを測ったり、
髪を直したりした。「魔女は魔女狩りで絶滅して、罪人として地獄で苦しんでいる
はずなのになぜウィチド様は地獄で苦しんでいないのですか?」ザクロスは
思わず質問した。

「そうね、昔から私は色んな魔法を使いたくて魔法や悪魔や儀式を勉強したり、
それらを実践したりして楽しかったわねぇ。それである日、悪魔と契約して
願いを叶えてもらう儀式で悪魔を召喚した時にビートが召喚されたのよ。
それが彼との出会い。そしてビートとの契約で私は無限の魔力、あらゆる魔法と
儀式の知識及び図鑑、永遠の命を手に入れて、ついでに首から下の毛の永久脱毛
もしたわ。でもね、契約には『ビートの好きなタイミングでウィチドは奴隷に
なる。』っていうのがあったからいつ奴隷に分からなくてちょっと怖かったけど
ビート自身の初めての契約だったからかなり浮かれていたから延期とか全然
してくれたわね。」「えぇ?あの厳格そうなビート様が?」普段から浮かれる様な
表情を見せないビートがそこまで浮かれているとはよっぽど嬉しかったのだろう
と思った。「ええ。私はしばらくの間はあらゆる魔女達の憧れの的だったわ。でも
時代が進んで魔女狩りが流行って私の家も魔女狩り達に知られちゃったのよ。
それでビートに『今すぐ奴隷にしてほしい。』って頼んで奴隷になったの。」
「え?!あらゆる魔法を使えたのに奴隷になっちゃったんですか?!」奴隷
だった事実に驚愕しているザクロスを気にもとめずウィチドはザクロスのスリー
サイズを測っている。「魔女狩りに遭えばこの世の終わりまで火炙りにされちゃう
からね。でも私だって馬鹿じゃない。悪魔達は奴隷との間に子供を作ったらその
奴隷と結婚して奴隷として扱うのではなく愛を添いとげる者として悪魔と同じ
身分を与えなきゃいけない。私はその掟を利用して奴隷になったその日の夜に
寝ていたビートから採取した少々の血と自分の血を材料にしてダイモンを
誕生させたの。」「え?ということはダイモン様は…。」「勘違いしないで、結果的に
生まれたとはいえ私はあの子を愛しているの。」ザクロスの言葉を遮る様に
ウィチドは顔をしかめて反論する。「とにかく、ダイモンが生まれて私はビートと
結婚して晴れて奴隷卒業。ビートの妻になって、ファッションデザイナーに
なって今に至る、かな。」ザクロスのサイズを測り終わり、ウィチドが買ってきた
素材で目にも見えない早さで服を作り始めた。「そうそう、ランウェイ歩く時は
首輪に鎖を付けて私と歩いていくからね。」説明が終わると同時に服が完成した。
 出来上がった服は袖が白と黒の縞々模様でジグザグなジッパーの赤いジャン
バー、デニムのパンツ、足裏がトゲトゲの靴、白い靴下、二つの黄色のシュシュ
だった。「これらを着るのですか?」「そうよ、パパっと着ちゃって!」ジャン
バーを着て、デニムのパンツと靴下、靴を履き、黄色のシュシュで髪を結んで
ツインテールになった。ウィチドはそのままザクロスの首輪に鎖をつけてラン
ウェイまでザクロスを連れて行った。「最後はべリアロク・ウィチドの奴隷の
登場です!はたしてどんなファッションでこの地獄に刺激を与えてくれるので
しょうか!?」期待を煽るアナウンスが流れると白い煙と共にウィチドとザクロ
スがランウェイに姿を現した。「ご覧ください!この新しい服を!ジグザグのジッ
パーは新たな形と不規則な線が誰にもとらわれない自由、トゲがある靴は歩く
時にトゲが滑り止めの果たし、全てをねじ伏せる支配力表しております!」
ウィチドの説明に観客の悪魔と奴隷達の拍手と歓声がこだまする。

「これは新時代!私達は今、新時代のファッションの誕生を目の当たりにして
おります!」アナウンサーの実況の様なセリフにザクロスは思わずクスッと
笑ってしまった。「これにて今回のファッションショーは終わりです。皆様
ありがとうございました。」終了のアナウンスが流れ、ウィチド達はそのまま
帰って行った。「いやぁ今日のファッションショーは大成功だったわ。」「おい、
ザクロス!朗報だ!」ビートが興奮気味にザクロスに詰め寄る。「ビート様、
どうされたのですか?」「貴様のことを天国の奴らに伝えたら明日の午後に迎えに
来てくれるぞ!」これでもう帰れるという気持ちと出ていくには名残惜しい
という気持ちでザクロスは頭がいっぱいになった。「何ボーっとしてんだ?
ザクロス。」ダイモンの一言でザクロスがハッとした。「いえ、思ったよりも早く
帰れることに拍子抜けしてしまって…。」「そうか、お前と別れる前に部屋で
見せたいものがあるんだが良いか?」言われるがままザクロスはダイモンの
部屋に行った。「これを見てほしいんだ。」ダイモンが折り紙を魔法で折って
いき、折鶴を作った。

 「ジャジャーン!どうだ!?」「悪魔って魔法でなんでも出来るんですね~。」
ザクロスは魔法で折り紙を折れる悪魔の魔法の器用さに感心した。「将来囁き屋に
なる俺には朝飯前だぜ。」「囁き屋?」「囁き屋っていうのはな、人間達を悪い道に
導いて、そこで生まれる悪意という人間達でいう電気並みに必要なエネルギーを
回収する職業なんだ。」自慢げにダイモンから語る囁き屋の話を聞いてザクロスは
顔をムスッとした。「なんて迷惑な職業…。」「お前なぁ、悪魔がいなかったら人間
達は相手が嫌がる事ややっちゃダメな事を知らずに破滅してるぞ。天使は善行を
教え、悪魔は悪行を教える。そうやって人間は道徳心を学び成長してきたって
授業で学んだぞ。」悪魔も人間の道徳心を育てているという事実にザクロスの中に
ある悪魔の常識が音をたてて崩れていく。

 翌日、「おいザクロス、もうすぐ迎えの天使が来るぞ。早くこい。」玄関で待つ
ビートがザクロスを急かす。「ただいま行きます。」昨日ファッションショーに
着た時と同じ服装のザクロスがドタドタと玄関へ走って来た。「その服はどうし
た?」「ウィチド様から貰ってダイモンに『絶対に帰れる様に。』とおまじないを
かけてもらいました。」「まぁいい。だが待ち合わせ時間に遅そうだから早く動
け。」駆け足で移動する。悪魔にそんなおまじないあったか?とビートが考えて
いると目的地である悪魔があまり通らない路地裏へ到着した。
 「ここで待ち合わせしているのですか?」「もうすぐ来るはずなんだがな。」
しばらくすると鎧を纏った騎士の天使とカラスの様なマスクを身に着けた天使が
現れた。「どうも、私達が迎えに来た天使です。」「鎧の天使よ、その恰好では
目立ちすぎるぞ。もう片方の天使のほうの変装を見習ったらどうだ?」

 「そんな事よりザクロスさんを引き渡してください。」ビートはザクロスを
天使達に引き渡し、そのまま帰って行った。ザクロス達はそのまま天国へ
向かった。地獄からだいぶ離れた時、カラスの様なマスクを身に着けた天使が
立ち止まる。「騎士様、近くに悪魔の気配を感じます。」騎士の天使がその一言を
聞いた途端、戦闘態勢に入った。「どこです?我々を狙う悪魔は?」周りを確認す
ると、カラスの様なマスクを身に着けた天使が隠し持っていた銃で騎士の天使の
兜の僅かな隙間から右目を撃ち抜いた。「まったく、天使達は“疑う”概念がない
から騙されてやすいってのに。」騎士の天使はそのまま倒れてしてしまった。
 カラスの様なマスクを身に着けた天使が魔法で変装を解くとその正体は
ザクエルを売り飛ばした紫色の悪魔だった。紫色の悪魔は瞬く間にザクエルを
捕らえた。

 「苦労して捕まえた天使は普通の客ではなく奴隷マニアに売り飛ばすべきだった
か。」紫色の悪魔の言葉にザクロス理解した。「貴方が私を攫ったんですね!?
どうして…。」「“初の奴隷の天使だから”だ。」紫色の悪魔はザクロスを捕らえた
まま地獄へ戻って行った。気絶していた騎士の天使が起き上がる。「参りました
ね。まさか不意打ちされるなんて。」騎士の悪魔は助けを求めて地獄へ向かった。
 騎士の天使はべリアロク一家を発見し、事情を伝えた。「嘘でしょ?!ザクエル
ちゃん攫われちゃったの?!」「そんな事だろうと思ったよ。」驚愕するウィチ
ド、もしもの時に備えておまじないと称して魔法で追跡出来る様にザクロスの
服に自分の魔力を込めておいてよかったと内心安心するダイモン、ビートは
冷静だった。「なぜ悪魔ごときが分かるのですか?」「ザクロスと契約した時に
“天国に着くまでべリアロク家の奴隷として過ごす”という条件で契約したから
な。その証拠にザクロスを買った時に奴隷の所有権書がまだ残っている。」
ビートが所有権書と契約書を見せた瞬間、怒りに駆られた騎士の天使が剣で
所有権書と契約書を何度も斬りつけたが傷一つつかない。「“お互いが契約破棄し
たい”と願うか“どちらかが契約を破った”か“契約の内容を全て完了する”まで
契約書は一切、傷一つつかず、汚されない。所有権書も私がザクロスの所有者で
ある事を示すために契約書の効果で所有権書も無駄だ。」「く、悪魔め。」騎士の
天使はビートを睨む。「そんな事よりザクエルちゃんをどうやって助けるの?」
 ダイモンはザクエルを助けるために考えた結果、“相手の逃亡資金と引き換えに
ザクロスを助ける”という作戦を思い付いた。だがビートは紫色の悪魔に顔を
知られている、ウィチドもファッションショーでザクロスと目立っていたので
相手に警戒され足手まといになる可能性が高いのでビートとウィチドを置いて
すぐさま実行するため自分の貯金の半分をアタッシュケースに入れて持って
ザクロスを追跡した。「そこにいたか。」薄暗い廃工場にて紫色の悪魔とザクロス
を発見した。幸いにも紫色の悪魔には気づかれてない様だ。「よぉ、天使の奴隷を
連れた者よ。」ダイモンが紫色の悪魔とザクロスの前に現れ、身構える紫色の
悪魔。「まぁ待てよ。ここにいるって事は誰にも教えてないぜ。」シーっという
ジェスチャーをするダイモンから黙っていろというメッセージを受け取ったザク
ロスは余計ないっさい喋らない様に黙った。紫色の悪魔は警戒を解いた「もしか
して奴隷マニアですか?」「あぁ、あのべリアロク・ウィチドのファッションショ
ーを見ていたら欲しくなってね。これだけあれば買えるか?」都合のいい勘違い
をしくれて助かったと思いつつアタッシュケースその場に置いて開けた。「確かに
それだけあれば逃亡に使えますね、ですが念には念を。この契約書と所有権に
サインをお願いいたします。」契約書には

1.名前含めた商人の情報を誰にも明かしてはならない。
2.ここで取引した事は誰にも明かしてはならない。
3.奴隷を天国へ返してはならない。

と書かれていた。「悪いがサインはしない。その子は天国に帰すからな。」「どう
いう事だ?」突如、ダイモンが魔法を使いアタッシュケースの中の沢山の紙幣が
折り鶴に折られていき竜巻の形になっていった。

「なんだこれは?!」竜巻の形をした折り鶴は紫色の悪魔の周りに纏わりついて
いく。紫色の悪魔の手から離れたザクロスはダイモンの方へ向かう。「さっさと
逃げるぞ!」頷いたザクロスはダイモンと廃工場から逃げようとする。「逃がす
か!」紫色の悪魔が撃った弾丸がダイモンの後頭部を貫き、ダイモンは倒れる。
 「ダイモンさん、ダイモンさん!」ダイモンに寄り添うザクロスはダイモンが
やられてしまったという状況に傷つき、ショックで泣き出してしまった。
「弾切れしたか。」銃の弾丸を補給する紫色の悪魔。「どおして?せっかく悪魔で
もお友達が出来たのに、あぁ、神、どうかこの悪魔をお救いくださいませ。」
「悪魔が神に助けられるなんてそんなの死んだほうがマシだ。」突如、ダイモンが
起き上がる。「まさかお前が友達と思ってくれてたなんて、ちょっと嬉しいぞ。」
「何故だ?何故生きている!」紫色の悪魔はほんの一瞬を突かれて、ダイモンに
催眠術をかけられ、眠ってしまった。「まったく、駆け引き大変だったぜ。」涙を
流しならザクロスはダイモンに抱き着く。「よかった、神はお救いくだった!」
「神のおかげじゃねえよ。」ゴソゴソとポケットから額から綿が出ているゾンビ
くん人形を取り出した。

「いやぁ、備えておいて正解だったぜ。」こうしてダイモンは紫色の悪魔を
捕らえ、ザクロスを騎士の天使の所まで送った。「もうすぐ応援が来ます。
ザクロスさんご無事で何よりです。」「はい。ダイモンさんの勇気と知恵のおかげ
です。」しばらくすると応援の5人の天使がやってきた。「やっと私の願いが
叶うな。」ビートが契約書を確認すると

1.ザクエルがダイモンが死んだと認識した時にショックをうけてしまい精神的
に傷ついてしまいこの契約は無効。

と文章が変わっていた。「なんということだ!願いが叶えられないではないか!」
 ビートは憤慨した。「今度こそ天国に帰っちゃうのね。元気でね。」「もっと
折り紙を教えてもらいたかったぞ。」「さっさと帰ってくれ。」それぞれの別れの
言葉をもらいながらザクロスは天国へ帰って行った。

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志乃村 兄主

「しのむら あにぬし」と読みます。 ゴジラ怪獣やゲーム、デュエマとケモノに 絵を描くのが好きな寒がりでございます。 ケモノっていいよね。

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