昭和歌謡に魅せられて…〜「他人の関係」って、どんなカンケイ?〜金井克子さん・川口真さん・そして有馬三恵子さんのコラボレーション(=三角関係)について

昭和後期、山本リンダさんの「どうにもとまらない」、夏木マリさんの「絹の靴下」などなど、女性歌手が全身、もしくは指先などを駆使して(「ボディ・アクション」「フィンガー・アクション」などと呼ばれた)妖しい世界へと誘い込む一連のヒット曲があった。その極致というか集大成は、おそらくジュディ・オングさんの「魅せられて」(あの衣装込みで)ではなかったかとも思われるのだが、その流れの中でもとりわけ異彩を放っていたのが、まるで交通整理のお巡りさんのように両手両腕を動かしながら、テレビカメラの方を醒めた目線でキッ、と見すえつつ歌った、金井克子さんの「他人の関係」(1973)だろう。

この金井克子さん、もっと他にもヒット曲があった印象なのだが(歌番組によく出演されていたせいもあるかも…)、実はオリコンでのトップ10ヒットは「他人の関係」1曲のみ。

しかしながら、作る曲ごとにさまざまな曲調でアプローチするヒットメーカー・川口真さん、それに対して「歌う=演じる」スタイルで色とりどりの表情を魅せ、全力投球でそれに応えた金井克子さん、さらには作詞を手がけ、《オトナの女》の世界の構築に尽力した有馬三恵子さん……。

このお三方により、いわく言いがたい、魅力的な世界が展開されていたのだった。

(この「他人の関係」を中心とした、ソニー時代の金井克子さんの音源、目下のところサブスクでは限られたものしか聴くことが叶わないのだが、今回はそこをはみ出すものもご紹介することになるかと思われる。どうかご了承願いたい。)

後輩の由美かおるさんなど、何人ものスターを生み出した西野バレエ団出身で、歌手として紅白にも出場するなど着実な実績を積み上げながら、いまひとつ決定打に欠けていた金井克子さん。

そんな彼女のために、それまで作曲家としてもアレンジャーとしても数多くのヒット曲を生み出してきた(両方こなせるのが強味でもある。尾崎紀世彦さんには、筒美京平さんの代表作となった「また逢う日まで」に続くシングルとして「さよならをもう一度」を提供し、名実ともに遜色のない結果を出している)川口真さん、そして主に南沙織さんに提供した一連の楽曲の歌詞でのリリカルな表現に定評があった有馬三恵子さん、このお二人が手を組んだ、その最初の楽曲が「他人の関係」である(印象的なあのコーラス。実は「パッパッパヤッパッ」ではなく「バンバンババンバン」。ドリフの影響は……ないと思われる)。

そのフォローアップ・シングルで、けだるいムードの中、クールな「待つ女」の姿を描写した楽曲が「人間模様」。サビの決めフレーズは「シャクだけれど、待ってあげるわ」。

続く「波止場エレジー」(※配信なし)は、川口真さんご自身がちあきなおみさんに提供した「円舞曲(わるつ)」や「かなしみ模様」のラインに近い、ややドメスティックな味わいの楽曲。イントロのコーラス「ハッ、トバ〜ワ、コッサ、メ(波止場は小雨)」が印象的で、ソニー時代のシングルでオリコン100位入りしたのは、ここまでの3曲となるが、それ以降も決して手を抜かないのが川口真さん・有馬三恵子さんのプロの仕事ぶりである。

次の「まがり角の女」(※配信なし)は、イントロからのリズムの刻みが、体育祭とかでよく踊った(踊らされた?)「ジェンカ(レットキス)」っぽいのもポイントだが、「あやまちばかり バカばかり 悲しくなるわよ/許したら いつも同じなの ケロケロしてるの」と男について嘆く2番の歌詞が、ユーモラスかつ、なかなかにキョーレツなのであった。

カップリング曲の「朝陽のように」がバカラック調のしっとりしたバラードで、それと好対照を成している「三角関係」は、どうも『あばれはっちゃく』オープニングの「タンゴむりすんな」を連想してしまうのだが、2番には「あの人に比べて 私は女だから」という気になるフレーズも。登場人物のうちの「あなた」がバイセクシャル、という可能性もある?(リリースは1975年)。

時系列で行くと比較的あとの方になる「花びらの化石」(「ちいさな罪」のカップリング曲)は、たとえば筒美京平さんが、いしだあゆみさんに書いた楽曲のような繊細なメロディーラインを持ち、「波止場エレジー」と対になるような、愛すべき小品といえる。

さて、本稿のおしまいにもう1曲だけご紹介したいのが、「他人の関係」の前年、1972年にリリースされた「エロスの朝」。これは鈴木邦彦さん作編曲による、曲名からは想像もつかない、いわゆるロック歌謡。もしかすると日本の歌謡曲でいちばん最初に「ウォンチュ!」とシャウトした楽曲…かもしれず、そこが最大の聴きどころである。

何よりもこの「ウォンチュ!」からの「他人の関係」、というのがまったく想像できないあたりに、歌謡曲のダイナミズム、否、おもしろさがあるような気がするのだが、いかがだろうか?

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しんのすけ1965

昭和歌謡などの音楽以外にも、さまざまに興味を持っています。そういったあたりも、どしどし出していけたらいいなぁ………なんて、思っております。

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