星新一のショートショート風の文章アレンジをしています
■新世界への扉
私は、ある種の幼い冒険家だった。
といっても、密林や砂漠へ出かけるわけではない。
かつてはその入り口は「本」の中にあった
ある時期を境に、文字が目を滑り意味を結ばなくなり
私は本を読めなくなってしまった。

そこで見つけた代わりの扉が
「映画」という新しい扉を開く世界だった。
私はひたすら映画の世界に没頭していった。
画面の向こうの新しい世界を冒険する。
それが私にとって唯一感じられた、現実味を伴う感情だったのかもしれない。
■赤いインクの沈黙
学校という場所へ行くと、事態は一変した。
特に「英語」は教科書の型通りの文法や、単語の羅列。
私の脳にとって冒険価値を持たない、酷く興味を失う存在になってしまった。

特に中学2年生時に教わる文法は自分にとって最悪の時間だった。
英語を勉強しているはずが
なぜか数学的な式を覚える方法で
日本語の文法を当てはめ
そこに英単語を組み合わせるという作業が
自分にとって非常に理解に苦しんだのである。
当然のごとく、答案用紙に並ぶ数字は
「赤点」という鮮やかなインクが答案用紙を派手に飾っていたのを、今でも苦々しい思い出として覚えている。
だが、奇妙なことに、私は映画を見る習慣だけは捨てなかった。
その無意識の蓄積が、やがて劇的な変化をもたらすことになるとは、当時の私は知る由もなかった。
■魔法の言葉
高校生になったある日、一人の教師が私を呼び出した。
教師「君は、教科書を書き写そうとしているね?」
私 「はい」
教師「提案がある。知っている言葉を自由に組み合わせて、自分の文章を書いてごらん?」
私は半信半疑で、次のテストに臨んだ。
結果は「83点」という信じがたい数字だった。

教師は再び私を呼び、満面の笑みを浮かべながら、機嫌よさそうに私に伝えた。
「英語は言葉なんだ。自由に捉えていいんだよ」
その一言は、呪文のように私を縛っていた型を解き放った。
私は英語教師の笑顔を見て、ようやく胸のつかえが降りるのを感じた。
■繋がった回路
それからというもの、英語は私にとって最高に面白い興味対象と変貌した。

アメリカの大学への進学が決まる頃には、私はより深く英語に没頭していた。
順に書いていこう
- 映画を字幕で鑑賞し内容を覚える
- 映画の字幕を隠す:現代だと日本語字幕を英語字幕に変更する
- 英語字幕とセリフの音を聞き取る
- 必要であればメモを:不明な文法や省略単語を調べたりする
※ちなみに私は全セリフを字幕なしで書き写して遊んでいました

一本の映画を攻略し終えた時、劇的な瞬間が訪れた。
耳に届く異国の言葉が、意味を持った言葉の塊として脳に流れ込んでくる。
回路がつながったのだ。
私はその感覚にのめり込んだ。
やがて本物の異国の地へと旅立ち学ぶ機会を得られたことを、今でも光栄に思っている。
今思い出しても、高校時代の恩師の言葉に人生が救われたと考えている。
英語教師との出会いは、私の人生に多大なる影響を与えてくれたと実感した私の、ちょっとしたお話

