応援

「偉い!」棚の中を整理していた看護師が振り向いて言った。

ある日、禁煙外来診療を受けるため仙台駅内の病院に足を運んだ。まず最初に誓約書を書き、次に、分析器のついた筒に息を吐き、私の体内に含まれている一酸化炭素を測ったのだけれども、測り終えて直ぐに、看護師の一人にどうして禁煙したくなったのか、と訊かれた(今思うと、三十代前半の者が禁煙したくて病院に通うのは稀なのかもしれない。いたとしても、子どものため、ないし重い病気を患ったことで健康を考えるようになった、といった感じだろうか)。私は、母が禁煙を考えており、家から煙草の要素を先に消して禁煙しやすい環境を作っておきたい、と応えた。母はテレビ番組でタレントがメロンパンを食べているところを見れば父にメロンパン買ってきてと連絡したり、また、CMに出てくる食べ物が翌日の夕飯になる、なんて事がしょっちゅうある。漫画で煙草を吸う描写を見ると、読み終えるや煙草を吸いに行く。あまりにも影響を受けやすいたちなので、喫煙者が身内にいてはまず禁煙は成功しないだろう、と、過去の経験から言える。だから私も禁煙しなければおそらく話は進まないのだ。それを傍で聞いていたもう一人の看護師が感動し、冒頭の「偉い!」に至る。それからすっかり応援されてしまった。

 正直に打ち明けると、背中を押さないでくれ、と思った。これから禁煙するにあたって、万が一、薬が合わず服薬を中断せざるを得ない状況になったら、期待? 気持ち? を裏切ってしまうようで申し訳なくなるのだから。というかプレッシャーすごっ。

 ……が、実際のところ、応援は努力のためのガソリンにもなった。結果として、離脱症状と闘いつつ煙草から自分を遠ざけられたのは薬だけのおかげではなかったのだ。

「なんだかんだ吸わずにすごせています。今のところは、ですけど。1日0本を維持できています」

 初診から二週間後、病院の隣の薬局で煙草の本数を訊かれた。薬剤師は、「なるほど。また次回会ったときも同じ言葉が聞けることを待っていますね」と笑った。なんで皆そんな背中押すの……プレッシャーすごっ。

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行谷いさご

たまに講座を受けながら十年ぐらいエッセイを書き続けています。くどい言い回しが表れたり、感情を挟む以上に説明文が長かったり、その辺を何度も読み返して反省を繰り返しながら一作品、また一作品……と、丁寧に、少しずつ作り上げていきたいです。

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