春菊の季節、季節の味覚

No.12(2026年9月14日)

 もともと好きじゃなかった。苦みや渋み、匂いなどが苦手だった。食べなくて済むなら食べなくていいと思っていた。それがわたしにとっての「春菊」だった。

 そんなわたしが変わったタイミング。季節限定のかまぼこだ。かまぼこ屋さんの名前は、阿部蒲鉾店。宮城県にはたくさんかまぼこ屋さんがあって、業界は近年やや低迷しているがその中のひとつだ。

 中学生のころ、スーパーの一角にあるかまぼこ屋さんでおやつにかまぼこを買ってもらった。季節限定という文字を見て選んだ。たぶんちゃんと見ないで選んだのだろう。本当だったら春菊なんて絶対に選ばないのだから。 

 けれど、食べてみてすぐに好きになった。とくに香りが好きになった。弾力があって噛みしめるたび広がるかまぼこの甘みと、そこに混ぜられた香りのいい、ほろ苦い春菊の風味はぴったりだった。

 手のひらを返した。あれから何年もたって、いまのわたしは春菊をサラダにして食べる。ごま油と塩ぐらいの簡単なドレッシングでいい。好物になってから、わたしの春菊レベルはなかなかに高い。夫もずっと春菊が嫌いだった。わたしが関係なく食卓に出すので、40歳にして普通に食べてくれるようになった。もう文句はいわない。

 大人になると味蕾が退化して、苦みや渋みに鈍感になるらしい。味蕾というのは味覚センサーだ。大人になってコーヒーを飲めるようになるのも、ビールを少しずつ好きになるのも、そういうことらしい。そんな味蕾は気圧や低湿度の関係で飛行機にいると鈍感になるそうだ。調べてみると塩気や甘みを約20~30%感じにくくなるという数字もある。機内食をおいしくないと感じる理由だそうだ。味蕾あるある。

 話を春菊に戻す。春菊は10月~3月頃が旬の野菜だ。同じ旬の野菜は白菜、大根、ほうれん草、れんこん、かぶ、ねぎ。旬の野菜や果物は①栄養価が高い。②味がよい。③お財布にやさしい。④自然の気候で育つから、ハウス栽培のような暖房や照明器具も必要としない、地球や環境に優しい、というメリットもある。

 これを書いているいまは9月中旬。季節外れの暑さできょうばかりは半袖を着ている。朝によく挨拶をする顔見知りのおばあちゃんがいる。「若い人ってイチジク食べるのかしら?たくさん採れて困ってるから今度もらってちょうだい」といわれた。おばあちゃんは何度もイチジクを採りに出るので、最近はとくによく顔を合わせる。朝硬めだったイチジクも、天気がいいと夕方には熟してしまうし、鳥も突きにくるから争奪戦だと笑っていた。

 おばあちゃんはよくイチジクの赤ワイン煮を作ると話していた。実家だと甘露煮ばかりだったので、赤ワイン煮は試したことがない。コンポートということか。とろんと煮込んだイチジクも、きっと栄養価が高いだろう。長くおいしく食べるなら、瓶詰がいいだろうか。イチジクも昔はそれほど好きじゃなかった気がする。好きなものが増えて、季節が毎年楽しい。

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われモコ

われモコ。お腹は三段にわれている。宮城県在住。1989年生まれ。女性。精神疾患あり。だけど元気がとりえ。趣味は古着と料理。現在子育て中。エッセイ、コラムを中心に活動をしながらタイピングスキルのアップと、パソコンに慣れていくのが目標です。アイコンのイラストはサインペンとクレヨン、色鉛筆で作りました。頭に乗っているのは息子的なマスコットのひよこです。

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