ルネサンス音楽

ルネサンス音楽について

今回はルネサンス音楽についてご紹介します。

 

〜ルネサンスとは〜

「再生」「復活」などを意味するフランス語で、一義的には古典古代(ギリシャ、ローマ)の文化を復興しようとする文化運動のことです。14世紀にイタリアで始まり、やがて西欧各国に広まりました。

また、これらの時代(14世紀 – 16世紀)を指して、時代区分としてルネサンスという言葉が使われることもあります。

〜音楽におけるルネサンス〜

 古代ギリシャ、ローマ時代には楽譜が発明されていなかったため、古代の音楽がどのようであったか絵画や文学のように記録に残る形がありませんでした。

口述で残っている音楽も、古代のものと変わりがないかどうかを証明する考古学的資料が少なく、音楽で古代文化を復興しようという試みは全くないとは言えないけれども、とても難しかったと言われています。

ですので今日、ルネサンス音楽と言われるものは「ルネサンス時代(14世紀から16世紀)に作られた音楽」という意味で単なる時代区分として捉えられるのが一般的です。

〜ルネサンス音楽の代表的な作曲家〜

【デュファイ】

14世紀から15世紀、フランスの東辺にさかえたブルゴーニュ公国では芸術が厚遇され、ヨーロッパ各地からブルゴーニュに優秀な音楽家が集まりました。それを「ブルゴーニュ楽派」といいます。 

なかでも代表的なのは、ギヨーム・デュファイという作曲家です。

デュファイは、モンテヴェルディやバッハのように彼より前の時代の音楽を踏襲しながら、作品に彼自身の強烈な個性を刻み込んだ作曲家で、この時代の音楽に特徴的な「模倣(通模倣書法)」という技法を定着させました。

輪唱のように同じメロディを違う声部で追いかけっこのように歌うというのが特徴です。

また、デュファイのミサ曲の多くは、循環ミサ曲といって、同じ定旋律を全ての章で用いて編んでいく形態をとるのが特徴です。

それは、ベートーヴェンの第五交響曲「運命」の第一楽章の冒頭にある「タタタターン」というモチーフが、その後の楽章の諸テーマと関連をもって編まれていくのと同じ工夫です。

ちなみに上記の曲の定旋律は、世俗曲の旋律を借用しています。

「もしも私の顔が青いなら、それは私が恋をしていることの証拠である」というような内容の歌曲旋律が、ミサ曲に用いられていて、神聖なものに俗っぽいものが入り混じっているのもルネサンスならではの現象です。

[ジョスカン・デ・プレ】

15世紀後半から16世紀初頭、ブルゴーニュ公国がフランスに併合され、ブルゴーニュにいた音楽家は各地に散り散りになりました。ブルゴーニュにいた優秀な音楽家はフランドル出身者が多かったため、フランドル楽派と呼ばれ、フランドル風の作曲技法が国際的な音楽語法として通用するようになります。

美術におけるルネサンスがイタリアを中心に隆盛していたのに対し、音楽の場合はアルプスの北のフランドルが中心でした。

フランドルから派遣され若くしてイタリアで活躍したジョスカン・デ・プレは、前述した模倣(通模倣書法)の技法に磨きをかけ、究極形にした作曲家で、かの宗教改革者、マルティン・ルターに「他の音楽家たちは、音に支配されているのに対し、ジョスカンのみは音を意のままに支配する」と讃えられています。

下記の曲は、模倣(通模倣書法)による傑作で、ポリフォニーの流れがとても美しいです。

またこの頃、活版印刷の技術が発展し、楽譜の印刷が可能になったので、フランドル学派の音楽はヨーロッパ各地に広がっていきました。

[モンテヴェルディ]

イタリアにはフランドル楽派の作曲家が多数活躍していました。フランドル音楽を国境を超えた普遍的な音楽として受け入れて愛好していたイタリア人でしたが、その一方でフロットーラという生粋のイタリア人音楽家が得意としたジャンルの世俗音楽も人気でした。

フランドル音楽とは造りの違うフロットーラは新鮮な効果をもっており、フランドル音楽家たちが興味をもちました。

フロットーラはあまり品の良くない歌詞の世俗曲でしたが、フランドル音楽家は文学性の高い詩を用いて自分たちの技法を使いより芸術的な世俗音楽を作りました。

それがマドリガーレです。 

クラウディオ・モンテヴェルディは、マドリガーレの作曲家で、フランドル楽派の技法も取り入れながら、不協和や半音などを用いて表現力を高め、歌詞の内容を音楽的に表出させようと追求しました。

あまりに斬新な表現だったため当時の保守的な音楽理論家からは批判を浴びましたが、モンテヴェルディ自身は「第二の作法(セコンダ・ブラッディカ)」と主張しました。

これまでの神秘的な歌の表現とは変わり、抑揚があり感情をのせた高い表現力の歌になっているのがおわかりいただけるかと思います。

ルネサンス音楽はモンテヴェルディという稀有な作曲家により表現力が高められ頂点を迎えたと言ってもいいかもしれません。

【最後に】

ルネサンス音楽がどういうものか少しでもお分かりいただけたでしょうか?

純然たる美しい音楽で、部屋でBGMとして聴いていると空気清浄機のように空気が澄んでくるような錯覚さえ覚える時があります。

この後ルネサンス期が終わる頃には、歴史にも大きな動きがあり、その影響も受けて音楽が変化していきます。

それについてもまたの機会に記事にさせて頂ければと思います。

〈参考資料〉

・厳選クラシックチャンネル:「中世・ルネサンス音楽の特徴を解説」

・皆川達夫:「中世・ルネサンスの音楽」

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yukinco

好きな音楽についての記事を書かせて頂きたいと思っています。 興味の方向があちこちに飛ぶタイプなので、ジャンルなどは脈絡はないですが、あまり知られていない分野が多いので少しでも関心を持って頂ければ幸いです。 よろしくお願いします。

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