『アルメニア音楽』
今回はアルメニア音楽をご紹介したいと思います。
アルメニアという国は、日本人にはあまり馴染みのない国だと思うので簡単に説明すると、アジアとヨーロッパの境目のコーカサス山岳地帯にある国で、旧ソ連の構成国でした。キリスト教を国教とした最初の国でギリシャ・ローマ時代のガルニ神殿、4 世紀に建立されたアルメニア教の総本山エチミアジン大聖堂をはじめとした、宗教建造物で知られている国です。
ティグラン・ハマシアン
わたしがアルメニア音楽に興味を持ったきっかけは、前回書いたミナスのミュージシャン、アントニオ・ロウレイロのインタビューからでした。アントニオ・ロウレイロはアルメニア人のミュージシャン、ティグラン・ハマシアンのファンで作品でもティグランの影響を受けた曲を作っているという話をインタビューでしていました。それでわたしもティグラン・ハマシアンを聴いてみたところとても気に入り、またティグランがアルメニアの伝統音楽を引用していることを知り、アルメニア音楽について調べるようになりました。
ティグラン・ハマシアンは基本的にはジャズをやっているミュージシャンで、一時渡米し、2006年にはセロニアス・モンク・ジャズ・コンペティションで一位を獲っています。
何年かアメリカで活動したのち、アルメニアに戻り活動を続けています。
幼い頃に父親からハードロックを聴かされていた影響もあり、ジャズといっても複雑な変拍子でプログレともとれるようなところがあり、また、ギターとベースとドラムのヘビーな鳴りはロックのようでいて、彼の弾くピアノはジャズであり、そして祖国アルメニアの伝統音楽を引用していることから、独特な唯一無二の音像を作り上げていて、初めて聴いた時は、自分はいったい何を聴かされているのかわからないけどすごく良い!と思いました。
コミタス
そんなティグランも楽曲の中で引用しているアルメニア音楽の有名な作曲家、コミタスという人がいます。
コミタスは当時採譜されて整理されていなかったアルメニア民謡を収集、編纂し、また自らの音楽にも取り入れたことで有名です。
コミタスは最初、アルメニア正教会で聖歌を作曲していましたが、西欧の音楽の勉強をしていたため西欧カトリックの聖歌のような作風をしていたため、教会内の保守派から風当たりが強く、身に覚えのないスキャンダルをばら撒かれ、教会を辞め、一般の作曲家となりました。
西欧の聖歌とアルメニアの聖歌、どちらも聴いているわたしからするとコミタスの男声合唱曲は西欧音楽の影響もありますが、随所にアルメニアっぽさがあり独特な美しさを醸し出していると思います。
コミタスの「パタラグ」
またコミタスは、アルメニア民族大虐殺の際、トルコ兵に捕らえられた経験からPTSDとなり、精神を病んでしまい、それ以来作曲は出来ず、パリにて逝去しました。
コミタスはアルメニア国内外で大虐殺の象徴とされ、映画も作られています。
(まとめ)
アルメニア音楽はとても独特ですが、日本人のわたし達にとって馴染み深いヨーロッパの音楽の影響もあり割と聴きやすいです。
またティグランハマシアンは、オダギリジョーが監督した日本映画「ある船頭の話」の映画音楽をしたことで日本でも知る人ぞ知る存在です。
来日公演なども稀にあるようなので興味のある方は一度聴いてみてはいかがでしょうか?