今回は、インドの楽器、バンスリとその奏法を自分の演奏に取り入れた、オデット・ツールというミュージシャンをご紹介しようと思います。
【バンスリ】
バンスリは西洋のフルートや日本の篠笛と同じような形をしてる竹でできた横笛で、フルートなどよりもずっと太くて長く、素材はアッサム竹という非常に節間が長い竹で、持った感じはとても軽いものです。
インドではヒンドゥー教の神様、クリシュナ神の持ち物として有名です。
・オデット・ツールとバンスリ
イスラエルのジャズ・ミュージシャンのオデット・ツール(oded tzur)は、サックス奏者でありながら、バンスリ奏者であるインド人のハリプラサード・チョウラシア(Hariprasad Chaurasia)に師事し、サックスでバンスリのような音を出すことに成功しました。
サックスは縦型の木管楽器でリードの付いたマウスピースを咥えてリードを震わせて音を出しますが、バンスリは笛なので穴に空気を吹き込み音を出します。また、バンスリは管にあけてある穴を指で塞ぐことによって音の高低をコントロールしますが、サックスにはそこにキーがついていて指で直接塞ぐわけではないので、指の動きで音の微妙な調整が出来ません。
楽器自体に構造的な違いがある中でオデットは、自分なりの工夫と鍛錬でバンスリのような音を出す演奏の技術を体得しました。
ここで師匠のハリプラサード・チョウラシアの演奏とオデット・ツールの演奏を聴き比べてみましょう。
Raga Brindabani Sarang | Pandit Hariprasad Chaurasia | (Album: The Last Word In Flute) | Music Today
Oded Tzur, Indian Classical Music on the Saxophone
いかがですか?
全然違う楽器なのに近い音が出ていますよね!
このようにサックスでバンスリのように演奏しようと奏法を編み出す過程においてオデットは、たくさんのインド音楽「ラーガ」を演奏しました。その結果、ラーガの概念や哲学を理解し、そのことを意識して音楽をするようになります。
詳しく知りたい方はこちらのオデットのインタビューをご覧下さい。
https://note.com/elis_ragina/n/n81f9027e7eb7
・オデット・ツールの音楽
オデットの音楽は聞き心地としてはインド音楽の様相を呈していません。
スケールやリズムをインド音楽から引用するのではなく、ラーガの精神性をもって音楽をやることが彼には重要なようです。
オデットのオリジナル作品を聴いてみましょう。
いかかですか?
とても静かな音楽です。
この曲が入っているアルバムのタイトルは「Like a Great River」といいますが、聴いていると、しとしと降り続ける小雨の音のように静かにずっと音楽が鳴っていて、降り続けた雨はいずれ小川となり、やがて大河となっていく。そんな情景が思い浮かびました。
【まとめ】
読者の皆さんはどんな風に感じましたか?
今回はインド楽器とそれを学んだミュージシャンを紹介しましたが、今後もいろいろな珍しい楽器をご紹介できたらと思っています。