障害を持っていると働くことが難しいと感じてしまう方は少なくないと思います。
その理由として、障害を持っていることで生じる様々な事情を企業側に配慮してほしいと思っていても、なかなか言えない、どのように伝えたらよいのかわからないという状況になってしまうことがあるからですね。
障害といっても様々な症状や状態がありますが、私自身が身体障害者であり、肢体不自由者という状態ですので、企業側に理解を求め、その環境の中で努力していくために必要なことを私自身の経験も踏まえて記事を書きます。
1.肢体不自由とはどのような状態か?
肢体不自由とは、身体の動きに関する器官が病気やけがで損なわれ,歩行や筆記などの日常生活動作が困難な状態をいいます。
それを補うために、車いすや杖などの器具を使用して生活をしている人も多いです。
それは仕事をするうえでも使用する必要があるため、企業側に理解を求めることが重要となります。
2.企業側に求めるもの
肢体不自由者として企業側に求めたい配慮について考えていきます。
例えば、「いつでも自由に休みや休憩をとりたい!」や、「自分専用の仕事部屋がほしい!」、「できないことは全て手伝ってほしい!」というようなことは配慮を求めているとは言えませんので、現実的な目線で考えていきながら肢体不自由者側もその環境の中で、自身でできることは努力していくことが大切です。
■どのような環境が良いのか?
例えば、体調面に関して勤務時間や休憩の回数やタイミングなど、無理のない範囲で仕事をすることが可能な職場であれば働きやすくなります。
また、車いすや杖を使用している場合には、職場の建物内の環境が整っているかどうかがポイントになります。
例として、職場内での移動に支障がないか、エレベーターの有無、多目的トイレの有無などです。
■肢体不自由者は身体の痛みや不調と向き合いながら生活をしている
肢体不自由の方の多くは身体に大きな負担がかかり、それに伴う痛みや不調と向き合いながら生活をしています。
手足など特定の部分に麻痺などがあるというケースが多いですが、それを補うために身体を可能な限り動かしています。
そのために首、肩、腰などの関節部分にも大きな負担がかかっている場合があります。
長時間に及ぶデスクワークでは椅子に座っている間にも身体への負担は避けられないので、適度な休憩を取ることが必要になります。
身体への負担軽減として、混雑時を避けて出勤できるフレックスタイム制や、体調に合わせた時短勤務が可能な職場であれば安心して働くことができます。
また、通院が必要な場合に、休暇を取得したり、早退などで通院の時間を確保する必要があります。
■物理的な配慮について
肢体不自由者の場合は安心して通行が可能なスペースや、利用しやすいトイレが完備されているかどうかは重要となります。
特に車いすや杖を使用している方の場合には、周囲の人や物などにぶつかってしまうことに気を遣っていることが多いです。
仕事場全体を理想的なスペースを確保することはなかなか難しいですが、使用するデスク周りに極力ものが置かれていない状況を作って頂けるとありがたいです。
3.肢体不自由者側が確認すること
次に肢体不自由者側が職場内の環境を把握したうえで、自分で企業側に伝えていくことを考えていきます。
■職場内の事前見学があれば環境を把握することができる
面接時にバリアフリー環境が整っているかなどの確認をとることは可能ですが、口頭で確認できることと、実際の環境では大きく違ってしまう場合があります。
そこで職場内の事前見学が可能であれば、見学に行き設備面を把握し、企業側に要望を伝えることができるかもしれません。
身体の事情などにより必要な設備や配慮は異なりますが、私が考える最低限のポイントを書きます。
①エレベーターやスロープなどの移動環境
肢体不自由者は階段の昇降が可能な方もいますが、基本的にはエレベーターが完備されているほうが良いですね。
特に車いすの場合には必須です。
エレベーターのボタンの位置により一人で押すことができない場合には、エレベーターに乗る際に同行してもらうことが可能かを確認しておきましょう。
また、スロープに関しては、完備されていても斜面が高くなっていたりすると、危険な場合があります。その場合もスロープを通行する際に同行が可能かを確認しましょう。
②トイレの環境について
トイレの利用にあたって一番望ましいことは広さのある多目的トイレが完備されていることですね。
肢体不自由者の場合は、様式のトイレと、十分なスペースと、手摺などにつかまったり、壁によりかかるなどをしながら身支度を整えることができると楽な状況といえます。
しかし、多目的トイレが完備されていない場合もありますので、自分の身体に合わせて一般のトイレでも利用が可能かどうかを確認することが必要ですね。
*一般的な広さの個室トイレ(左)はとても狭い。 *多目的トイレ(右)は十分な広さがある。
一般の個室トイレを普段から利用している方は、自分でコツをつかんでいると思いますので、トイレの利用や身支度を整えることはできるでしょう。
一般の個室トイレの場合は車いすの場合が利用時の支障はどうしても大きいといえます。
大きな要因は、一般の個室トイレに車いすごと入ることは非常に難しいからです。
個室トイレの近くまで行き、壁につかまるなどをしながらトイレに座ることが可能な方は大丈夫ですが、それが難しい方の場合には、例えば近隣の利用可能な公共トイレを使用しても良いかどうかを確認することが必要ですね。
③デスク周りの環境
仕事を行う場所には机や椅子、様々な備品が配置されています。
そのため、特に自分のデスク周りのスペースや、利用頻度の多い場所などの通路について確認して、通行がしやすいように相談することが必要です。
③-①机や椅子の高さ
肢体不自由者の場合は良い姿勢を保つことが難しいことが多いので、椅子の高さはなるべく自分に会うように調整が必要です。
どうしても高さが合わない場合には、例えば自分に合う椅子の持ち込みが可能かを相談し、それが難しい場合には、クッションなどを使用して対応するのも一つの方法です。
③-②デスク周りのスペース
デスク周りのスペースに余裕がないと、座る時や席を立つ時に支障が出てしまいます。
特に後ろにさがる時に大きな備品などがあると気を遣うことになりますので、自分の事情に合わせて、なるべく動きやすくできるように相談することが必要です。
④利用頻度の多い場所などの通路
肢体不自由者は、歩行の際に機敏な動きが難しいことや、特に車いすの場合はある程度の幅が必要なので、特に利用頻度の多い場所などの通行に不都合がないかを入念に確認が必要です。
特に気を付けなければならないことは、人や物との衝突です。激しく接触してしまうと、ケガや破損の原因となってしまいますので、通行に不都合がある場合は、通路を広くしてもらうことなどの要望を伝えてみましょう。
4配慮してほしいことを言えないのはなぜか?
以上のような私の考えを書いていきましたが、このようなことを企業側へ伝えることがなぜ難しいことなのかという問題について触れていきます。
私は物心がついた頃から、自分の身体のために周囲に配慮を求めることが苦手であり、今もそれは変わりません。
肢体不自由であることで周囲に迷惑がかかってしまうことが申し訳ないという気持ちが、言葉を詰まらせてしまうような気がしていますが、私と似たような気持ちを持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
私は両手に杖を使って歩行をしているのですが、それにより身体の動きに制限がかかってしまうことが多いです。
特に機敏な動きをとることが難しく、狭いところを歩くときに気を遣うことがありましたので、この記事にも書いてあるように通路に関する配慮をお願いしたのですが、私一人のために事務所内の配置換えなどは難しいと言われてしまいました。
また、仕事内容においては動作に多少の時間がかかってしまうことや、身体の痛みや疲労の蓄積により作業効率が低下してしまうことがありましたが、事情を考慮して仕事量を配慮して頂くことや、適度な休憩をとることが難しく、基本的な条件は健常者の方々と同じ状況で数年間働いてきましたが、私が体調を崩してしまった時期に会社の体制にも変化があり、仕事を続けていくことができなくなってしまいました。
ですが、私が就労していた時と現在とでは時代が変わってきていて、配慮を求めやすい状況になってきていることは調べていく中でわかってきました。
配慮してほしいことは、入社前や入社直後だけではなく、長く働くようになれば増えていくかもしれません。
そのようなときに言えるような時間を設けてくれる企業であれば安心ですね。
5まとめ
これまでに書いてきたことは、私の経験をもとに考えたことが多いですが、配慮してほしいと思う事は人それぞれです。
配慮してほしいことは一度伝えたら終わりということではなく、日々働いていく中で増えていくこともあると思いますので、定期的に企業側と話し合いができるような状況が整っているとより安心ですね。
これからさらに、多くの人が働くことができる企業が増えて、悩みが減り、選択肢が増えるような社会になってほしいです。