・独特なスペイン文化
スペインは現在カトリック教徒が多いキリスト教国ですが、他の宗教の文化が混ざり合い、建築や美術など、他の西洋諸国に比べて独特なものが多く、それは音楽にも現れています。
今回は、そんなスペインを代表する音楽、フラメンコについてお話したいと思います。
・イスラム教とキリスト教文化が融合するスペインの歴史
ゲルマン民族の移動の際、イベリア半島には西ゴート族という人たちが入っていき、西ゴート王国(415〜711年)というキリスト教国をつくりました。
8世紀になると、イスラムが侵入してきます。
ペレスの戦いで西ゴート王国の首都トレドがイスラムにより陥落させられて滅亡します。
そのイスラム教徒たちが建てた国がウマイヤ朝と後ウマイヤ朝。首都はコルドバです。その後ナスル朝というまたイスラムの国家ができました。首都はグラナダです。
一方、イベリア半島北西部には、アストゥリアス王国という西ゴート族の残党が作ったキリスト教国がありました。
キリスト教国はイスラム教徒同士の内乱により勢力を弱めたナスル朝から徐々に領土を奪い返していきます。
時代を経て13から14世紀ぐらいになるとイベリア半島のほとんどがキリスト教国の領土になりました。その頃少しだけイスラム教のナスル朝が持っていた領土は首都グラナダだけでした。
キリスト教国の方もその頃は分離しており、それぞれナヴァル、アラゴン、カスティーリャ、ポルトガルです。
また、イベリア半島の一部には辺境伯といってずっとイスラム教徒に取られていない地区があり、それはフランク王国がイスラムを攻めるために置いた拠点でした。その場所が現在のバルセロナです。もともとフランス人が作った場所なので、バルセロナには自分たちはフランス人だと言う人もいるようです。カタルーニャ地方という特別な地方です。
このようにイベリア半島のキリスト教国はそれぞれバラバラでしたが、この中で一番お金持ちだったのはポルトガルです。ポルトガルはイスラム教の領土から遠く戦争をする必要がなく余裕があったため、海外へ飛び出したのが大航海時代です。
バラバラのキリスト教国同士は仲が悪く、さらにイスラム教王朝を倒しきれていないのもカスティーリャにとっては頭の痛い問題でした。早くポルトガルのようにインドへ向かいたい。早くイスラム教王朝を倒してポルトガルに追いつきたい。そういう思いから仲の悪かったカスティーリャとアラゴンは一つの国になり、後にナヴァルとも合併し、スペイン王国が成立しました(1479年)。
そしてスペインはグラナダを攻めてイスラム王朝を倒し国土回復運動(レコンキスタ)が完成しました(1492年)
スペインからイスラム教を追い出すことに成功したキリスト教徒でしたが、とはいえそこに定住していたイスラム教徒は残っていました。異教は認めないカトリック教のスペインは改宗を迫ります。イスラム教徒からキリスト教徒に改宗しスペインに居残った人はいっぱいいました。改宗したイスラム教徒やその他の異教徒だった人は差別の対象となったということです。
スペインの北の方はキリスト教文化、最後までイスラム王朝が続いたグラナダに近い南の方はイスラム文化が残っていったようです。グラナダのアルハンブラ宮殿の建築には見るからにイスラムの影響が見られます。
・フラメンコの発生
諸説ありますが、フラメンコの発生にはイスラム文化の影響があるというのが有力な説です。
フラメンコは世界中に散らばる流浪の民であるヒターノと呼ばれるロマ(ジプシー)の音楽です。
アンダルシア地方に住んでいたイスラム教徒の残党はキリスト教に改宗させられたのちに、国外に追われました。
カトリックの締め付けが強いスペインでは、ヒターノは少数民族で異教徒でありましたが、改宗させられてもなお差別の対象で、
国外に追われた元イスラム教徒たちが担っていた職業を引き継ぐ形でアンダルシアに移り住みます。そこで、もともとアンダルシアの地にあったアラブの太鼓などに合わせてヒターノが踊り出したのがフラメンコの起源だということです。
踊りだけでは物足りなくなり、最初はダンサーが踊りながら歌っていたようですが、歌や踊りが複雑になるとシンガーとダンサーは分業するようになります。やがて、そこに伴奏楽器としてギターが加わりフラメンコが発生しました。
そのような所以からフラメンコは、スペインというキリスト教国で生まれていながらアラブの音楽のような妖艶さを兼ね備えているようです。
もともと北インドから渡ってきたロマ自身がイスラム教徒だったという説もあり、もともとアラブの文化、心情を兼ね備えていたという説もあり、そこにさらにアンダルシア地方のアラブ音楽の影響であのような音楽になっているのかもしれません。
・フラメンコには沢山の種類がある。
フラメンコカンテ(歌)にはリズム(コンパス)や曲調、発祥によって多くの種類に分類され、主なものでも70種類ほど、さらに地域差などで細分化する向きもあるようです。
その中でyoutubeで動画があった二つの種類をご紹介します。
【BGM】カッコいい!情熱のフラメンコ音楽集 ブレリア編 ★ギター&カンテ ★スペイン民族音楽 Spanish Flamenco Music ( Bulerias )
こちらの動画では「ブレリア(Bulería)」と呼ばれる種類のフラメンコがお聴きいただけます。
burla(あざけり)が語源とも、Boleroが語源ともいわれています。ソレアという種類から派生したもので、最もテンポが速い曲種であり、激しい曲調を持つものもあります。宴の締めによく使われるということで、現代のフラメンコにおいてもっとも花形的なポジションを得ています。
【BGM】ノリノリ!気持ちを盛り上げたい時に聞くフラメンコ音楽集 タンゴ・ルンバ編 ★スペイン民族音楽 Spanish Flamenco Music ( Tangos & Rumba )
こちらは「タンゴ(Tango)」と呼ばれる種類です。
カディス発祥のほか、トリアーナ(セビージャ市の一地区)、グラナダ、マラガ、エストレマドゥーラ等にみられます。2拍子でノリのよい明るい曲種。アルゼンチン・タンゴとは別種だということです。宴の締めによく演奏されます。
・まとめ
いかがでしたか?
聴き比べてみると違いがわかりますよね。
ブレリアはかっこよくて、タンゴは妖艶な聴き心地で、どちらも今の暑い時期にとてもあう、情熱的な音楽だと思いました。