古代の音楽

今回は古代の音楽についてご紹介しようと思います。

・古代文明の音楽

古代メソポタミア文明のシュメール人は、ティグリス・ユーフラテス川の河口付近に定着し(B.C3500年から3000年)その後B.C2500年ころには王朝文化が開花しました。

楔形文字を創始したシュメール人の文明は高く、音楽においてもその進歩性をみせていて、声楽や器楽の分野でのすぐれた演奏も行われていたということです。

シュメール語で書かれた叙事詩「ギルガメシュ」の一部は楔形文字で記された粘土板12枚に残されていて、叙事詩の成立はB.C4000年紀半ばとも言われていて、その頃の粘土板文書は楽譜の一種ともみなされています。叙事詩や賛歌の文字の脇に歌の形式やジャンルや音楽構造を示す楽語が現れるからなのだそうです。

その頃の音楽を聴いてみましょう。

世界で最も古い歌

この歌は、祭礼に使われる賛歌として、古代シリアの土俗神である月の女神Nikkalをたたえる内容となっていて、フランスの考古学者が発掘して、1972年にカリフォルニア大学バークレー校のProf. Anne Draffkorn Kilmerがこれを解読したもののようです。

・さまざまな民族に受け継がれたシュメール人の楽器や音楽理論

その後、メソポタミア文明はアッカド人の征服の後、B.C2000年を過ぎるころには、ハンムラビ王の手のよってバビロン王国が現れ、数世紀後にはカッシート人にとってかわられます。

カッシート人によって行われたバビロニア征服は、やがてアッシリア人によってくつがえされて、さらに崩壊し、そのあとにはエジプト、イラン高原のメディア、小アジアのリディア、メソポタミア南部の新バビロニアと4国対立のまま、B.C.6世紀を迎えることになりました。

このようなオリエント社会の変遷は、音楽の上にも顕著に現れて、シュメール人の間に使われていた楽器や音楽理論は、この地を相次いで支配した各民族に受け継がれて発展し、のちのギリシャ音楽に大きな影響をあたえることになりました。

・古代ギリシャの音楽

古代ギリシャ世界は、エジプトやメソポタミアのように統一国家が形成されていたわけではなく、アテネやスパルタに代表されるような多くの独立したポリス(都市国家)の集合体でした。

おのおのに独立した形のポリスではありましたが、ギリシャ人世界の成立と安定に伴って、彼らの間にも、共通の言語・宗教・文化をもつという意識が生まれオリュンピアの競技会など、民族としての共通意識を自覚するようになっていきました。

こうした民族意識を育てるのに大きな役割を果たしたのが、ホメロスの叙事詩、「イリアス」と「オデュッセイア」です。

ホメロスの叙事詩が作り出された時代では、ホメロスの詩にかぎらず、詩というものは、読むべきものではなく聞くべきであると考えられていました。

初期のギリシャ人にとっては、器楽と声楽が区別されておらず、音楽は、詩、もしくは舞踏に従属すべきものだったそうです。

キタラと呼ばれる弦楽器を伴奏として歌うキタロディと、アウロスと呼ばれる管楽器で伴奏されるアウロディがありました。

アウロディはやがて、歌を伴わず器楽としても演奏されるようになりました。

・哲学の分野からの音楽に対する考え方。

19世紀の哲学者ニーチェは、芸術の発展はディオニオス的とアポロン的の二つの傾向の対立する発展過程にあるとしましたが、デュオニオスもアポロンも、ともにギリシャ神話に出てくるゼウスの子で、前者はローマ神話ではバッカスといわれる酒の神で、陶酔的、歓楽的、本能的、情熱的な傾向を持ち、後者は、予言、文芸、音楽の神で理知的、静的、夢幻的な傾向をもち、造形美術を意味するものとされているのだそうです。

 ギリシャの哲学者たちにもそうした考え方があり、キタラや同種の楽器リラなどの楽器はアポロン的で、アウロスはデュオニオス的と考えられていました。プラトンは、アウロスを、その理想とする国家からは除こうと考えてさえいたようですが、実際にアテネ時代からギリシャ文化の末期にかけては、世紀末的な傾向からかアウロスによるより扇動的な音楽が好まれていたようです。

ここで、古代ギリシャの音楽を再現したものを聴いてみましょう。

古代ギリシャ音楽「アポロ賛歌」

この歌は、紀元前2世紀半ばと推定されるギリシャの古代遺跡デルフィから発掘された石に刻まれた楽譜が修復され編曲されて、ビーナスの展示会場で流されたバック・ミュージックです。

・ヘレニズム文化

その後ギリシャはマケドニアが全ポリスを征服し、アレクサンドロス大王が東はインド、南はエジプトにも及ぶ空前の統一国家を作り上げました。

その統一事業により、東西の交通が開け、東方世界と西方世界の文明の交流がさかんになり、それによって、ギリシャ文化がさらに広い視野に立つ、より広範で深い内容をもつ文化へと変質し、ヘレニズム文化が生まれました。

そのヘレニズムはアレクサンドロスの死後マケドニアの分裂からローマによる統一という歴史のなかに生き続け、中世のヨーロッパへの母体になっていきます。

【まとめ】

いかがでしたか?

音楽の起源が西アジア、今でいうイラクやイランのあたりのメソポタミア文明にあり、それがヨーロッパの音楽に大きな影響を与えていたというのが面白いですね。

古代ギリシャの音楽はその後キリスト教の音楽に影響を与え、そしてそれは現代私たちになじみのあるクラシック音楽につながっていきます。

それについてもまた書かせていただければと思っています。

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yukinco

好きな音楽についての記事を書かせて頂きたいと思っています。 興味の方向があちこちに飛ぶタイプなので、ジャンルなどは脈絡はないですが、あまり知られていない分野が多いので少しでも関心を持って頂ければ幸いです。 よろしくお願いします。

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