今回はトルコの音楽についての第三弾です。
前々回と前回はトルコの軍楽と伝統音楽についてご紹介しました。
今回は、トルコの民謡についてまとめて行きたいと思います。
・トルコの民謡
前回もお話しましたが、トルコ人は周りのあらゆる文化、高い水準のペルシア・アラビア音楽を吸収し大成させました。でもその一方で、祖先から受け継いだ歌を決して忘れなかったのだそうです。
その民謡をテュルキと総称しますがこれは’トルコ人の’という意味です。それに対して芸術歌曲はシャルク(’東方の’意)と呼び、民族音楽家たちはそれを外来音楽であり、自分たちの本来の音楽ではないのだと考えているのだそうです。
・民謡の二つの様式「ウズン・ハワとクルク・ハワ」
各地方でたくさんの民謡が今も生き続けていますが、それらは二つの対照的な様式に分けてとらえられています。つまり、ウズン・ハワ(長い歌)とクルク・ハワ(割り砕かれた歌)です。
前者は、拍子にとらわれず自由リズムで、長く音を引き伸ばし、喉をふるわせ「こぶし」や「ゆり」で飾り、概して広い音域の旋律を一人で歌うもので、日本の江差追分のようなメリスマ(※1)的歌唱です。
後者は、厳格な拍子に基づく短い旋律で、音程は広くなく装飾音も少なく大勢でうたい、そのほとんどは踊り歌(オユン・ハワ)であるようなシラビック(※2)です。
こうした二つの表現様式で歌われる民謡は、トルコに限ったことではなく、日本の民謡では追分様式と八木節様式として存在していたり、朝鮮半島、モンゴルを経て、ハンガリーに至る特にシルクロードに深くかかわりをもつ民族にみられるもののようです。
まずは、ウズン・ハワ(長い歌)を聴いてみてください。
BURCU HAMURİŞÇİ YALÇIN – BEN BİR GARİP BÜLBÜL İDİM
この歌は「異国のうぐいす」というタイトルで、異国をさまよう失意のうぐいすに託し、失った恋と不運を歌っています。
前奏は四拍子ですがアマンという歌いだしから自由リズムで歌われています。
次に、クルク・ハワ(割り砕かれた歌)とウズン・ハワ(長い歌)が入り混じった曲をお聴きください。
Yayladan mı Geliyon (Tokat Havası)
最初は長い歌で始まりますが、途中から2拍子のクルク・ハワ様式に変わります。
両様式が接合した例です。
・まとめ
いかがでしたか?
トルコの民謡は二つの様式に分かれていてそれは日本の民謡とも共通だったと思うと面白いですね。
最後になりますが、「ウシュクダラ」というアメリカでヒットし、日本でも昭和の時代に江利チエミさんが歌い、ある年代以上の日本人にもなじみがある歌をご紹介して、今回は終わりにしたいと思います。
Üsküdar’a gider iken (Katibim)
※1 メリスマ型(様式)=歌詞の1音節に対し、数個以上の音をもって歌われるもの。メロディが装飾的に扱われる場合も多い。
※2 シラブル型(様式)=歌詞の1音節(シラブル)に対し、1音符があてられるもの。
〔参考資料〕
CD 「小泉文夫の遺産 民族音楽の礎 ~45 遠き旅人たちの歌とロマン②トルコの民謡」