2024年早々に、歌謡曲・演歌の世界では訃報が相次いでいます。
八代亜紀さん、冠二郎さん、小金沢昇司さん………。
それぞれ、歌は残りますが、皆さんあまりにも若かった。
個人的に、八代さんと冠さんについては好きすぎて、今すぐにまともな言葉が出てきません。
そんな中で、こういった年の幕開けになるなどと思いもしないまま、2023年の大みそかにも紅白歌合戦は、なんだかんだ言われながらも開催されました。
その紅白の“演歌枠”を守るお一人である石川さゆりさんもまた出場され、今回は「津軽海峡・冬景色」を歌唱されました。
その歌唱回数、今回で、なんと13回めです。
さゆりさんは2007年以来、紅白では「津軽海峡・冬景色」と「天城越え」を交互に歌唱し続けており、「天城越え」もまた、2022年の紅白で13回めの歌唱となりました。
確かにどちらも間違いのない名曲であり、それぞれについてたっぷりと語ることもできるわけですが、この無限ループ、まるで何かの罰ゲームのようです。
「いったい何だ? この扱いは……」と、何年か前から私も思い始めていて、さゆりさんご自身もNHKサイドとの話し合いの席で「私、今年も新曲出してるんですけど……」とか、ある年は「私、『ルパン(三世)』のエンディングも歌ってるんですけど……」とか、さまざまにアピールされていたようです。実際、2023年の秋ドラマのひとつ・『コタツがない家』でも、民放ではありましたが、がらっぱちな雰囲気で主題歌を歌い、話題になっていたものですが。
そういったことは一切おかまいなしに、NHKは「天城越え」と「津軽海峡・冬景色」の2曲無限ループを、これまでさゆりさんに、半ば押しつけてきたのでした。
でも、それも2024年からは、変わることになると思います。
というか、ことし早々から起こった、思いもしなかった災害を前にしては、変わらざるを得ないでしょう。
というのも、さゆりさんはかつて「津軽海峡・冬景色」に続けて2枚のシングルをリリース、ヒットさせ、これらは《旅情三部作》とも呼ばれているのですが、その3作めは南国土佐を舞台にした「暖流」(この曲は、さゆりさんのベスト盤から外されていることが多いですが、いい曲です)、そして2作めはズバリ、「能登半島」というタイトルだったのです。
かつて、神戸淡路大震災の際、前川清さんは「歌っていいのか、どうか」という葛藤の中、発災エリアの人々のリクエストに応える形で、クールファイブ時代のヒット曲のひとつである「そして、神戸」を紅白で歌唱しました(この「そして、神戸」という曲名は、地元の復興NPOの名称にもなったと記憶しています)。
そして今、神戸の街がどのようによみがえったかは、言うまでもないでしょう。
東日本大震災の際にも水森かおりさんが、その直前にヒットさせていた「松島紀行」という曲を、やはり「歌っていいのか、どうか」と逡巡されていたそうなのですが、震災直後に訪れた松島の人々から「どうぞ、歌って」という声があがって、歌うことにした、という逸話がありました。
そして、2024年。
坂本冬美さんにも「能登はいらんかいね」というヒット曲がありますが、ここはひとつ石川さゆりさんも「能登半島」を歌うべきだと思うし、願わくばお二人ともに紅白の舞台で、ぜひこれらの楽曲を歌っていただきたい。
それはきっと勇気になり、力になり、そして何よりの応援になってくれることでしょう。
(余談になりますが、目下サブスクで聴くことのできる「能登半島」はオリジナル・ヒット版ではなく、近年の再録音版なのですが、ドラムスがロックしていて非常にカッコいいのです!)
最後になりましたが、この度の能登半島地震において被災され、被害に遭われた皆様に対し、東北の地より心からお見舞い申し上げると共に、ご冥福をお祈り申し上げます。
(了)