もうすぐ3期、高揚感溢れるアニメ、響け!ユーフォニアム

結構前の話になるが、「響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~」を見た。
好評を博した京都アニメーションのテレビアニメシリーズ「響け!ユーフォニアム」の劇場版なのだが、相も変わらず素晴らしい出来だった……。
めっちゃおすすめ。みんなもみよう!ご清聴ありがとうございました!

―――とはいうものの、この映画は物語の中でも割と後半を描いた作品なので、いきなり今作から見てもちょっと入り込めないかもしれない。響け!ユーフォニアムという楽曲全体からしたら一小節みたいなものだ。できれば前のストーリーを見ていることが望ましい。めんどくさいかもしれないが、でもその手間に見合うだけの素晴らしい作品だと僕は思う。

響け!ユーフォニアムは吹奏楽部を描いたアニメ。制作は数々の名作を世に送り出してきた京都アニメーション。涼宮ハルヒの憂鬱とかけいおんみたいに誰もが知る超有名作ではないが、クオリティは京アニの中でもトップクラスの水準である。
多くのアニメファンからも高評価を受けているし、アニメ好きのイメージが全くないお笑い芸人、人をおちょくってケラケラ笑ってる大ベテラン東野幸治もドハマりしたと言っていた。

音符も読めなければ複雑な楽器も演奏できない。できるのはタンバリンだけです、うんたん☆な僕でも「響け!」はガッツリハマった。それが高じて笑ってコラえて!みたいな番組で吹奏楽部に密着してるとついつい見てしまうようにもなった。響け!を思いだすのだ。みんな一生懸命で熱い青春を過ごしている。多分えぐい人間関係もあるだろうし胸が熱くなるなあ。

細かなあらすじは長くなってしまうので公式サイトを見てもらいたいが、一言でいえば、「成り行きで、かつて強豪だったが零落した吹奏楽部に入った主人公、黄前久美子が仲間と共に全国大会に出ることを目指して、青春のすべてをかけて音楽に打ちこんでいく」という物語。


テレビアニメの1期と2期では主人公である黄前久美子が1年生の時期を、劇場版「誓いのフィナーレ」では2年生の時期が描かれた。ほかにアニメ1期、2期をそれぞれまとめた総集編もあり、さらに別の部員たちが主人公の劇場版「リズと青い鳥」もあり、最新の劇場版では、夏の大会を終えて3年生が引退し、新部長になった久美子がアンサンブルコンテストに向けて奮闘する様子が描かれている。そして、これが大事なのだが、4月からついに新シリーズが始まった。3年生になった久美子たちが送る、北宇治高校でのラストイヤーである。

目次

  • 1話1話が劇場版クオリティ
  • 緊張と興奮の本番当日。驚きのフル尺の演奏シーン
  • 響け!のおそるべき青春力(あおはるぢから)に震える

1話1話が劇場版クオリティ

そのすべてに総じて言えるのだが、響け!ユーフォニアム(略してユーフォ)の映像のクオリティは尋常じゃない。アニメからして映画と見まがうレベルの作画や動き。京アニの作品は大体作画レベルが高いがヴァイオレットエヴァーガーデンと響け!ユーフォニアムはちょっと群を抜いているのではないか。

表情の揺れや、体の動き、言葉を発なくても感情の揺れがしっかりと伝わってくる人物描写や、夏の暑さや冬の静けさ、夜の神秘的な美しさなど、青春のきらめきを伝えるかのように風景がみずみずしく描かれていく。
キャラのしぐさやセリフや表情だけでなく、ふとしたカットからもキャラクターが抱える楽しさや苦しさ、緊張感がひしひしと伝わってくる。
また、プロが実際に演奏している音楽シーンも聞きごたえ抜群なのだが、そのすべてがいかんなく発揮されたのが1期の13話、そして2期5話なのだが――圧巻である。

緊張と興奮の本番当日。驚きのフル尺の演奏シーン

1期13話は京都府大会、そして2期5話はその先の関西大会に挑む、その1日を描く回。
吹奏楽コンクールの全国大会に出場するには、各都道府県大会と地方大会を経なければならない。つまり、絶対に負けられない戦いなのだ。まず凄いのがそのコンクール当日の描写のリアルさ。

特に1期13話は、久美子にとって北宇治高校での最初の――つまり、本気で全国を目指してから初めてのコンクールということもあって、冒頭からその緊張感がひしひしと伝わってくる。
入試や部活の大会当日の朝特有の、いつもとちょっと違う風景。早朝の静けさや陽の光、何気ない友人との会話にも混じる緊張と興奮。本番直前の楽器の調律から出番を待つ暗い廊下まで、緊張感は静かに増していき、そしてついに出番が訪れ、扉がゆっくりと開く。

それが舞台に上がると、一気に眩いばかりの光に包まれる。
その輝きは少しぼかしがかかって幻想的ですらある。
そう、まさに久美子たちにとってはそこは別世界なのだ。
静まり返った舞台でゆっくりと演奏が始まる。その演奏シーンが圧巻である。そのほとんどを使って北宇治高校の演奏だけが描かれるのだ。曲が進むにつれ、彼らの表情が映し出されていく。ひりつくような人間関係に葛藤したり、実力の足りなさに悔しい思いをした、その濃厚な時間はすべてこの演奏のためにある。
その間、セリフはおろかモノローグさえもない。
それなのに、目線の動きや息継ぎの仕方だけで何を語りたいのかが伝わってくる。

一番かっこいいのは、久美子がとあるパートを演奏しきったとき。
実は久美子は長いこと、その高難度のパートをうまく吹けず、顧問の滝先生に一度演奏から外されたことがあった。
もどかしさに焦がされるように「うまくなりたい」と涙したこと、努力の果てに、「吹けます」と伝えたこと。そして本番で見事演奏しきって見せた瞬間の、滝先生の密かに映るほほえみ。さらに他の部員とのアイコンタクト。グッとくる一連の流れである。

実は京アニの隠れたテーマである「焦がれ続けたからこそ見える、日常を超えた風景」
その特別さを完璧に描き切った演出力に脱帽である。

響け!のおそるべき青春力(あおはるぢから)

春の淡い光や、夏の眩い日差し。汗の滴る火照った頬にあてられた清涼飲料水の冷たそうな水滴。夏合宿の昼間の熱気の中で練習に励む活気や、深夜や早朝の静まり返った空気。冬、コンクールが終わって3年生が引退した後の寂寥感だったり、数々の情景の美しさは上げたらきりがないほどで、画作りに定評のある京アニ作品の中でも響け!の演出は卓越したものがある。

合宿の時、久美子が寝付けなくて自動販売機で飲み物を買おうとすると、ちょっと前にひと悶着あった先輩とばったりあって内心を語り合ったり、早朝の庭(朝日がまたきれい)で、物静かな先輩の演奏を聴いたりなどはまさしく青春。
また、夏祭りの夜、祭り会場を見下ろせる丘の上で、「特別なことがしたい」と言われて、親友と二人きりで楽器を吹くするシーンなどは白眉と言っていい。あらゆる場面で漂ってくるのだ。むせかえるような高濃度のアオハル成分が。

こんな青春を送りたかったなあと思うのだが、メンタルよわよわの僕なんかでは1話の冒頭みたいに、鬼顧問に笑顔で厳しいこと言われた瞬間に退部届提出待ったなしなので、外から眺めてすごいなあと思っているくらいがちょうどいいのだ。
眺めている分には本当に美しい、そんな、「響け!ユーフォニアム」おすすめです。

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読書、アニメ、映画鑑賞、プロ野球観戦が好きな受動系オタクでインドア派キャラクター(インキャ)です。概念としての夏が好き。世界が美しく見えるから。でも暑いし受動系なので行動にうつせずに終わっていつも悔やんでます。

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