昭和歌謡に魅せられて・“あやや”=島津亜矢さんの『SINGER』シリーズを徹底紹介!(その6)

“歌怪獣あやや”=島津亜矢さんのカバーアルバム『SINGER』シリーズのご紹介も、2017年リリースの『SINGER4』までやって来ました。

ただ、この『SINGER4』、シリーズ中でも異彩を放つ始まり方なのです。

前作『SINGER3』に収録され、特に人気のある「糸」と同様に、中島みゆきさんがドラマ『聖者の行進』のために書きおろした「命の別名」で始まるのです。

わたくし、個人的にこの『聖者の行進』というドラマを許すことは絶対にできないので、とても複雑な心境なのですが、ここでの“あやや”の歌唱で、ドラマと切り離して聴くことにより、「命の別名」という楽曲の持つパワーやメッセージを、ようやく素直に感じ取ることができるようになった気がしています。

さて、ここからはこれまで通り、曲の紹介を続けて行きましょう。

90年代というか、平成初期を代表するバラード・ヒットともいえる、中西保志(やすし)さんの「最後の雨」。

ここではサビの部分、“あやや”のハイトーン・ボイスが聴きものといえるでしょう。

そして、安全地帯のヒット曲の中でも、最もセクシーかつエキセントリックな「じれったい」を、“歌怪獣あやや”は、見事に丸吞みしてみせてくれます。

“あやや”がひとりで歌っているはずなのに、まるで玉置浩二さんとバーチャル・デュエットでもしているかのような、そんな錯覚すら覚える1曲です。

続いては「洋楽を英語のまま」シリーズで、ビリー・ジョエルの「Honesty(オネスティ)」……なのですが、非常に惜しい!

この曲は、英語、とりわけひとつひとつの単語の発音を大切に、もうちょっと時間をかけて、ていねいに仕上げていただきたかったのですが、いささかラフな感じの仕上がりになってしまいました。

もちろん、“あやや”の歌唱には文句のつけようがないだけに、余計に残念です。

気を取り直して、次は加藤登紀子さんが中森明菜さんに提供して大ヒットした「難破船」。

ピアノ・オンリーの伴奏をバックに、これはもう完全に「“あやや”の『難破船』」と言うべきか、圧巻の出来となっております。

一転して今度は、吉田拓郎さんが“よしだたくろう”と、ひらがな表記だった頃の楽曲で、もともとはかぐや姫の山田パンダさんに提供されたものをセルフカバーした「落陽」。

「苫小牧発 仙台行きフェリー」という歌詞が、旅情というか、男のロマンをかきたてるこの1曲を、“あやや”はいわゆる《男歌》として、ワイルドに歌いこなしています。

そしてさらに一転して、今度はいきものがかりの「YELL」。

これはこれで、完全にいきものがかりの世界に没入しきった感じで、ピュアに歌いあげています。まるでカメレオン、いや、『ターミネーター2』の強敵・T-1000のようです。

さて、とりあえずの「A面」ラストは、歌手活動からの引退を発表された、高橋真梨子さんの数あるヒット曲のひとつ「はがゆい唇」。

セクシーな歌詞をもつこの曲を、ほどよくセクシーに、余裕を持って“あやや”は仕上げています。

「B面」に入ります。

五輪真弓さんの代表作「恋人よ」。

シンプルな伴奏をバックに、またしても“あやや”は余裕の歌唱です。

続いては、ビートたけしさんが、自らの浅草での修業時代のことを歌にした「浅草キッド」。

すべての《笑い》を愛する人のための1曲のようでもあり、この歌だけではなく、たけしさんには同名の小説もあり、地上波で一度、そしてNetflix(ネットフリックス)の配信ドラマ(2021年冬、配信開始。高い評価を得ました)として映像化もされている、この名曲「浅草キッド」を、“あやや”はもちろん《男歌》として歌っているのですが、ただ単に男っぽく歌うのではなく、どこか母親のような、女神のような、歌の登場人物たちを見守る「想い」も込められた、そんな歌唱となっています。

次は、辛島美登里(からしま・みどり)さんの自作自演による大ヒット「サイレント・イヴ」。

“あやや”は、ストレートかつキュートにカバーしています。

そして、坂本九ちゃんの代表曲のひとつとなった「見上げてごらん夜の星を」。

“あやや”の《祈り》のようなものが感じられる名唱ですが、このバージョンで注目したいのは、九ちゃんのオリジナルをはじめ、通常“ヤマ”となっている「手をつなごう…」の部分ではなく、別の場所にアレンジ上のピークを持ってきている、ということでしょうか。

そんなところにも注目しつつ、お聴きいただきたいと思います。

さぁ、『SINGER4』も、いよいよ大詰め。

『SINGER8』までのシリーズ中、唯一のアニソンである、高橋洋子さんの「魂のルフラン」の登場です。

TVシリーズ、最初の劇場版と、いずれもキッチリ完結させることができなかったからこそ、1995年から2021年まで続いた《エヴァンゲリオン現象》だったわけですが、この「魂のルフラン」は大ざっぱに言って、その最初の劇場版の“一番いいところ”で流れ、まさに魂を震わせた名曲でした。

この名曲を“あやや”は、オリジナルよりもさらに高いキーで歌い、要所要所ではパンチもきかせます。

100曲以上ある『SINGER』シリーズのためのレコーディングの中で、わたくしが初めてダウンロード購入した曲、ということもあり、個人的にも思い入れのある1曲です(余談ですが、『夜もヒッパレ』で安室奈美恵さんがカバーしたバージョンも、大変カッコよかったです…)。

これに続くのが、山口百恵さんの現役活動中最後のシングル曲となった「さよならの向う側」ですが、“あやや”は難なくこなし、ラスト、平原綾香さんを一躍有名にした「Jupiter」も、馬力(ばりき)のある低音と伸びやかな高音を駆使し、時には“ひとり二重唱”で、オリジナルとはまた違ったインパクトと感動を与えてくれます。

さて、次の『SINGER5』では、いったいどんな“あやや”に会えるのでしょうか?

お楽しみに! (つづく)

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しんのすけ1965

昭和歌謡などの音楽以外にも、さまざまに興味を持っています。そういったあたりも、どしどし出していけたらいいなぁ………なんて、思っております。

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