くすりとは、人の体に用いることで、病気を予防したり、治す手助けをするものです。くすりの歴史はとても古く、人類がたどってきた歴史と重なると言われています。
くすりの起源
くすりに関する最も古い記録は、メソポタミア、エジプト、中国に見られ、日本では1万数千年前の縄文人の住居のあとからくすりに使ったと思われる植物が発見されています。縄文人たちは、木の実などの採集を通じて植物に詳しかったのです。そのくすりの一つは、キハダ(ミカン科の落葉高木、生薬名=黄柏(おうばく))です。
日本に本格的なくすりがやって来たのは6世紀ごろのことです。くすりの材料となる植物が朝鮮半島から届けられ、聖徳太子が大事に育てて増やしました。その植物でくすりをつくり病人や貧しい人に分けていました。この頃のくすりは滋養強壮に効果がある人参や解熱鎮痛効果のある桂心などです。
奈良時代(600~794)から平安時代(794~1185)にかけては派遣された遣隋使、遣唐使から医学や薬物が伝わりました。その後の鎌倉時代(1186~1333)から安土桃山時代(1573~1603)にかけても中国から伝わった生薬(しょうやく)が作られていて、その担い手は僧侶でした。
西洋医学の伝来
江戸時代には西洋医学が伝来し、アンモニア、安息香、塩酸などを用いた化学薬が使われだしました。ドイツ人医師シーボルトも貢献した一人です。
現在のようなくすりの科学的な研究開発が始まるのは明治になってからです。明治政府は1874年に日本初の国立医薬品試験機関である「司薬場」(しやくじょう)を設置しました。西洋から輸入されるくすりを検品し適正な価格で売るようのするための機関です。
現在につながるくすり
その後、第一次世界大戦時にくすりの輸入が困難になり、国産のくすりの必要性が高まり、日本でのくすりの研究、製造が本格化し、以後日本の製薬事業はめざましい発展を遂げました。その礎を築いたのは明治時代の研究者たちです。明治時代から製造されてきたくすりは仁丹、正露丸、龍角散などがあります。
現在のような発展した薬学のもとで様々なくすりが作られるようになったのは、そんなに以前のことではないのは驚きです。