昭和歌謡に魅せられて・“あやや”=島津亜矢さんの『SINGER』シリーズを徹底紹介!(その7)

“歌怪獣あやや”こと、島津亜矢さんのカバーアルバム『SINGER』シリーズのご紹介も、2018年リリースの第5作『SINGER5』に突入しました。

このアルバムから、ジャケット写真で“あやや”が身にまとう衣装が、自らのアイデンティティーを改めてアピールするかのように、これまでのドレスから着物に変わっています。

「私は来た曲を歌うだけです」と語る“あやや”ですが、これから近作に近づくに従って、その、接点がなさそうな楽曲に取り組む傾向は、ますます強くなって行きます。

まずは恒例の「洋楽を英語のままカバー」するシリーズから今回もスタートしますが、オリジナルはR&Bの女王=チャカ・カーン、作・プロデュースは松田聖子さんや河合奈保子さんの海外録音アルバムも手がけた世界的なプロデューサー=デビッド・フォスターという、「ホントによく見つけてきたなぁ!」と思わされる楽曲「Through The Fire(スルー・ザ・ファイア)」に挑みました。

やはり今回も英語の発音などに難はあるものの、序盤で「バラードかな?」と思わせて、サビで思いきりシャウトする部分も用意してあるという、まるで“あやや”のために用意されたようなナンバー。

これが実に、“あやや”という歌い手に見事にハマっているのです。

おかげでこの後の、中森明菜さんの「DESIRE – 情熱 – 」(意外にヘルシーな?仕上がり)、高橋真梨子さんの「ごめんね…」(そもそも原曲が演歌っぽいせいか、『SINGER』シリーズの中では珍しく、演歌寄りの“あやや”の歌唱が楽しめます)といったナンバーが、やや押され気味であるようにすら感じます。

続いては、八代亜紀さん、山本譲二さんら、演歌系の方々にもよくカバーされている、井上陽水さんの「リバーサイド ホテル」。

これが、なかなかにスゴい。

オリジナルとは異なる、かなりアグレッシブなアレンジに、“あやや”の抑え気味のヴォーカルが乗っており、かなりの聴きものとなっております。

続いて、玉置浩二さんの人気曲「メロディー」。

いや、ちょっと圧倒されました。

特に終盤、アカペラ(無伴奏)で歌うところでは、まるでコンサートホールで歌っているかのように“あやや”の歌声が響いて、圧巻のひとことです。

そして同名の映画の主題歌として、日本でもすっかり有名になった、ベン・E.キングの「Stand By Me(スタンド・バイ・ミー)」を、英語のまま。

こちらはいつも通り、発音等はともかく、安定の仕上がりで、ちょっとした箸休めのような役割を果たしています。

“かぐや姫”を解散した伊勢正三さんと、「雪」「各駅停車」などで知られる“猫”を解散した大久保一久(かずひさ)さんが結成し、フォーク路線からやがてAOR路線にまで展開して行ったデュオグループ・“風”のデビュー・ヒット「22才の別れ」。

これもまた“あやや”のお得意とするラインのせつないフォークソングで、安心して身を……というか、耳をゆだねられます。

さて、『SINGER5』の前半=「A面」ラストは、X JAPANの代表曲のひとつで、小泉元首相のお気に入りでもあった「Forever Love」。

ご存知の通り、8分近い長尺のバラードですが、難なく堂々と歌いつくす“あやや”。

それを聴く、というのは、まさに至福のひとときと言えるでしょう。

「B面」に入っていきなり、シリーズ初のジャズ・スタンダード「Lullaby Of Birdland(バードランドの子守唄)」が登場です。

“あやや”のスゴいところは、だからといって歌い方のスタイルを特に変えるわけではなく、いつも通り、快活な感じで挑んでいるところでしょう。

このアプローチには賛否両論あるかと思いますが、わたくし、個人的には「アリ」だと考えています。

続いて、ドリカムの「やさしいキスをして」。

いじらしく、つつましい女性の心情を、“あやや”は繊細な表現でものにしています。

その後に続くのは、松山千春さんのファースト・アルバム『君のために作った歌』収録曲で、今ではすっかりスタンダードとなっている「大空と大地の中で」。

“あやや”は、演歌で鍛えた大ぶりの歌いっぷりを活かして、このスケール大きな楽曲に挑んでいます。

このアルバムの中でも、名唱のひとつといえるでしょう。

そして、ユーミンの独身時代=荒井由実さんの初ヒットで、今ではスタジオジブリ作品『魔女の宅急便』でも使用され、すっかりおなじみになった「ルージュの伝言」。

ここでの“あやや”は、完全に「ユーミンをカバーしてる、歌のうまいアイドル歌手」ですね。

もう、キュート!!!!! でございます。

余談になりますが、この「ルージュの伝言」のオリジナル、バックコーラスのハイトーンボイスは、若き日の山下達郎さんです。

さて、続いては「ピアノとタイマン」シリーズ(?)、スターダスト・レビューの「木蓮の涙」です。

表現がやや過剰かな? という感じがなくもないのですが、聴き手としては、ピアノだけの伴奏による、そのうまさを堪能するのみですね。

曲は、スキマスイッチの「奏(かなで)」に変わります。

“あやや”はこの名曲を、どこまでも明るく、明朗に歌いあげます。

そのことによって、この「奏」という楽曲のもつせつなさが、さらに倍、ドン! と、まるで『クイズダービー』の最終問題のように(?)、より増幅されて伝わってくる仕組み。

これには、やられました。

アルバムも終盤に差しかかり、せつない名曲が続きます。

宇多田ヒカルさんの、これまた懐かしい「First Love」。

いや、これは泣けるんじゃないでしょうか。名唱です。

英語の部分も多いですが、かなりいい感じに処理できています。

そして『SINGER5』の締めくくりは、中島みゆきさんの「誕生」。

これもまた名曲で、合唱曲としても親しまれているそうなのですが、

やはり、泣ける名唱に仕上がっております。

素晴らしい。

さぁ、いかがだったでしょうか。

カバーアルバム『SINGER』シリーズも、ここまでで5作を数え、次の『SINGER6』からは、また新たな領域へのチャレンジが始まるなど、ますます目が……いや、耳が離せません。

“歌怪獣あやや”の新しい挑戦を、みなさんと一緒に見守っていきたいと思います。

(つづく)

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しんのすけ1965

昭和歌謡などの音楽以外にも、さまざまに興味を持っています。そういったあたりも、どしどし出していけたらいいなぁ………なんて、思っております。

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