昭和歌謡に魅せられて・“あやや”=島津亜矢さんの『SINGER』シリーズを徹底紹介!(その8)

“歌怪獣あやや”こと、島津亜矢さんのカバーアルバム『SINGER』シリーズを、1曲ずつ順を追ってご紹介して行くこのシリーズも、2019年リリースの『SINGER6』まで来ました。

このあたりから、懐かしめの楽曲が激減して、コンテンポラリーなJ-POPのヒット曲や洋楽の比率が増してきます。個人的には、この傾向には少し淋しいものを感じなくもないのですが、「とりあえず、やるだけやってみる」というのは、いいことだとは思っております。

そんな、ちょっと複雑な思いの中、今回も順にご紹介して行きましょう。

1曲めは「英語のままで洋楽を」シリーズで、「Shallow(シャロー)」。

レディー・ガガが、あのメイクと衣装を脱ぎ捨てて挑んだ映画『アリー~スター誕生』からの1曲で、相手役のブラッドリー・クーパーとのデュエットでした(はじめ、ブラッドリー・クーパーがひとりで歌いだし、そのあとステージに呼びこまれたレディー・ガガが続きをソロで歌うので、厳密にはデュエットとは呼べないかもしれません)。

ちなみに「Shallow」とは「浅瀬」「浅い」といった意味で、「Deep」の反対の言葉にあたります。歌の登場人物であるふたりの関係が、「浅い」=ぎこちないところから、徐々にその距離を縮め、深まって行く……、そんな心情が託された楽曲です。

単純に、楽曲として考えると、どこかとらえどころがなく、かなり難しい部類に入ると思うのですが、“あやや”はー例によって、発音などは「これから」という感じですが…ーうまく自分のものにしています。

次はMISIAさんがGReeeeNから楽曲提供を受けた、“ギボムス”の通称でも親しまれたドラマ『義母と娘のブルース』の主題歌でもあった「アイノカタチ」。

歌い上げ系・熱唱型のイメージが強いMISIAさんとしては異色の、キュートな印象すらあるラブソングですが、“あやや”もまたキュートに歌っています。

続いては、松田聖子さんの「瑠璃色の地球」。

神田正輝さんと結婚された際の、一時的な休業から復帰して最初のアルバム『Supreme(シュープリーム)』の最後に収められていた曲で、かつてライバルと目されていた中森明菜さんもカバーして話題になりましたし、現在では単独でも有名かと思います。

“あやや”は、こういった楽曲では意外なことでしたが、時に「演歌の人」っぽい表情をうっすらと漂わせながらも、高めのキーで感動的に歌いきります。

次は、軽快なテンポでありながら「泣ける歌」でもあるという、杏里さんの「悲しみがとまらない」。

いや、“あやや”ならそんな失恋大丈夫だろ……という気も一瞬しますが(ごめん、“あやや”)、愛を失った悲しみを軽快に歌うという、難しいといえば難しいこの曲も、“あやや”はバッチリこなします。

続いては、ふたたび「洋楽を英語のまま」シリーズで、ミュージカル『CATS』から「Memory」。

バーブラ・ストライサンド、バリー・マニロウ、そして近年なにかと話題になった劇場版『CATS』の中では『ドリームガールズ』『リスペクト』のジェニファー・ハドソンと、数々のバージョンが存在します(石川ひとみさんも、日本語と英語の2バージョンでカバーされていました。ちなみに『リスペクト』は、後に“あやや”がカバーアルバムに挑むことになった、アレサ・フランクリンの伝記映画でした)。

こちらもまた、発音にさえ目をつぶれば、文句のない名唱と言えると思います。

そして、竹内まりやさんの「駅」。

もともとは中森明菜さんへの提供楽曲でしたが、アルバムの中で、しかもあまりよく聞き取れない感じで歌っていた時期の録音だったこともあり、まりやさんのセルフカバーによってようやく有名になった感じですね。

ユーミンの「雨のステイション」にインスパイアされたようでもある、なんともせつないこの世界に、“あやや”の歌声は実によくハマっています。

胸を打つ名唱を、ぜひ一度お聴きいただきたいと思います。

続いては一転、ロカビリー~グループサウンズ~フォーク/ロックと、日本の流行音楽の世界を縦横無尽に漂ってきたムッシュかまやつ=かまやつひろしさん最大のヒット曲「我が良き友よ」。

わたくしの住む街の近くの高校の応援団にかろうじて生息しているのかもしれない、いわゆる硬派・バンカラの男の友情を、まさにムッシュの「良き友」であった吉田拓郎さんが書きおろし、ムッシュにプレゼントした曲です(拓郎さんとムッシュは、当時のトップアイドル・南沙織さんに捧げた「シンシア」という曲をデュエットして、ヒットさせたこともあります)。

オリジナルでは高中正義(たかなか・まさよし)さんが弾いていた、ハードなエレキギターから始まるこの男歌を、“うなり”・“こぶし”といった演歌のテクニックを瞬間的に用いながら、“あやや”は実に気持ちよさそうに歌っています。

さて、「A面」ラストは、玉置浩二さんのソロ楽曲の中でも人気の高い「行かないで」。

どこか冬のイメージのある、哀切きわまりない、玉置さんならではのバラード。

“あやや”は感情表現を抑えながら、心をこめて歌いあげています。

そして『SINGER6』は「B面」に入ります。

「冬の次は春」、ということでしょうか、ここでコブクロの「蕾(つぼみ)」が登場します。

「行かないで」の時とは一転して、ここでの“あやや”は感情表現全開で熱唱しています。

1曲単位ではなく、流れとして聴くことで、そういったコントラストの妙が楽しめる、ということも、この場を借りてお知らせしておきたいと思います。

さて、この『SINGER6』は、ここからがスゴい。

なんせいきなり、THE BLUE HEARTSの「リンダリンダ」!!! ですから。

そしてそれをやすやすと歌いこなす“あやや”には「カッコいい!!!」の一言しかありません。

………と、ここでまた曲調はガラッと変わり、本田美奈子さん後期の代表曲のひとつである、スケールの大きなバラード「つばさ」。

オリジナルでは、美奈子さんの超ロングトーンが聴きものとなっていましたが、“あやや”はそこに関しては正面勝負を避けました。

オリジナルの素晴らしさを尊重した、ということかもしれません。

しかし、いずれにしても“あやや”なりの素晴らしさが現れたパフォーマンスに仕上がっていると思います。 (つづく)

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しんのすけ1965

昭和歌謡などの音楽以外にも、さまざまに興味を持っています。そういったあたりも、どしどし出していけたらいいなぁ………なんて、思っております。

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