ファインマンという人
物理学者リチャード・ファインマンは、1965年に朝永振一郎らと共にノーベル賞を受賞しました。授賞理由は量子電磁力学の繰りこみ理論を完成させたことです。日本の朝永振一郎も同じ繰りこみ理論を完成させましたが二人の理論は見かけ上違いますが、計算結果は全く同じになるそうです。
ファインマンが幼少の頃から異才を発揮してきた逸話は岩波現代文庫「ご冗談でしょう、ファインマンさん」に載っていて、この本に退屈なページはない、と言う日本の物理学者もいます。この本にはMIT、プリンストン大学時代の話から、マンハッタン計画での原爆開発の当時有名な物理学者達とのやり取りも書かれています。
筆者が物理学を専攻した理由
ところでなぜ本稿でファインマンを取り上げたかというと、筆者が物理学を専攻することにしたのがファインマンの影響が大きかったからです。高校生の時ファインマンに関する本はほとんどすべて読みました。ファインマンの業績の一つであるファインマンダイアグラムを習うのは大学院の講義においてですが、筆者の物理の力ではよくわからなかった、というのが本音です。東日本大震災の影響で試験を行う時間がなく、レポートを提出するだけだったので、ファインマンダイアグラムが含まれる「場の量子論」の単位は取れました。が、先輩の院生に聞いても「場の量子論」は難解であったということでした。
ファインマンのそのほかの業績
そして、もうひとつファインマンは1986年のスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故の調査委員も務めていました。大統領直属の機関にもかかわらず、他の委員が行かないところに一人で出向き、技術者から直接話を聞き、結局、打ち上げ当日の気温の低さとシャトルのOリングという部品の弾力性の喪失の関係からシャトルの爆発の原因を突き止めました。
一方、ファインマンは、人にものを教える、という点においても優れていました。著書「ファインマン物理学」(岩波書店)は学部1・2年生のための教科書で物理的な内容が豊富な本です。筆者の場合は、高校の物理の先生に薦められました。30年以上も筆者の本棚に置かれ、時々読み返しています。
ファインマンという人の難解な理論物理学の最先端を理解し、教える事の出来る面と、「ご冗談でしょう、ファインマンさん」に書かれているいたずら好きな面のギャップに、日本でも多くの本が読まれている理由があるのだろう、と思いました。