事の始まり
左官の金太郎は、三両のお金が入った財布を拾い、一緒に入っていた書付から財布の持ち主に返そうとします。財布の持ち主は大工の吉五郎だとわかるが、江戸っ子の吉五郎はもはや諦めていたお金なので、お金は受けとらないと言い張ります。しかし、金太郎もまた江戸っ子であり、どうしても吉五郎に返すと頑張ります。互いに大金を押し付けあうという江戸っ子らしい争いは奉行所に持ち込まれました。
大岡越前の登場
裁くのは、大岡越前(大岡忠相)。双方の言い分を聞いた越前は、どちらの言い分にも一理ある、と認めました。
そこで、越前は自らの懐から一両を出し、合わせて四両とし、二両ずつ金太郎と吉五郎に分け与えました。
金太郎は三両拾ったのに二両しかもらえず一両損、吉五郎は三両落として二両しか返ってこずに一両損、裁いた大岡越前も一両提供したので一両損。
これで「三方一両損」ということになります。
よくできた話ですが、史実として、大岡越前が実際にそのような裁きを行ったという事実はありません。しかし、TBSのドラマ「大岡越前」ではこのエピソードが登場します。この話は、古典落語の演目で聞いたことがある人もいると思います。
江戸っ子
この話では江戸っ子という単語が登場しますが、「徳川時代の江戸で生まれ育った住民」のことで特に、三代江戸に住んでいる町人のことを指すようです。大体、いなせでさっぱりとした気風や、歯切れがよく、銭使いがきれいで反面、浅はかでけんかっ早い、と言われているようです。日本では、江戸の町は多くの時代劇で描かれていますが、当時人口約100万人の世界一大きな都市であったことを象徴しているのが「江戸っ子」という言い方だと思います。