昭和歌謡に魅せられて・“あやや”=島津亜矢さんの『SINGER』シリーズを徹底紹介!(その13)

2023年リリースのカバーアルバム『SINGER8』からの収録曲紹介を、さらに続けましょう。

新曲を発表したり、楽曲を提供するたびに大きな話題となる米津玄師さんの、その中でも代表的な1曲となっている「Lemon」。

ドラマ『アンナチュラル』の主題歌でもありました。

中島みゆきさんの「ファイト!」に続いて“あやや”は、この「Lemon」に挑みます。

………バッチリでしたね。

ちなみに“あやや”以外にも「Lemon」は、鉄オタ若手演歌歌手として知られる徳永ゆうきさんもテレビ番組でカバーし、話題になったことがあります(余談になりますが、徳永さんの、中島みゆきさん「ホームにて」のカバーは、絶品です!)。

続いては「ピアノとタイマン」シリーズ(?)、手嶌葵さんの「ただいま」。

ドラマ『天国と地獄~サイコな二人~』の主題歌でもあった、心にしみる静かなバラードです。

この“あやや”の「ただいま」は、本当にすごい。

つぶやくように、ささやくように歌う手嶌葵さんの「ただいま」に敬意を表しながらも、一旦それをご破算にして、じわじわと盛り上がる、“あやや”ならではの「ただいま」に仕上がっています。

そして、玉置浩二さんの「MR. LONELY」。

ドラマ『こんな恋のはなし』の主題歌でした。

もともと玉置さんの楽曲をいくつもカバーしてきた“あやや”らしく、間違いのない仕上がりです。

個人的な希望としては、今後“あやや”には玉置さんの「愛だったんだよ」をカバーしていただけたら、幸せですね。

続いては、この『SINGER8』収録曲中、もっとも早く世に出た楽曲です。

小坂明子さんの、1973年から74年にかけて超特大ヒットになった自作自演曲「あなた」。

夢見がちな女の子の気持ちを素直に綴った歌詞(「子犬の横には、あなた」という、彼女の中での「あなた」のポジショニングがいささか気になりますが…)、そして音楽性豊かなメロディーと、『宇宙戦艦ヤマト』などで知られた故・宮川泰(ひろし)さん(「マツケンサンバ II」の宮川彬良(あきら)さんのお父様)による、シンフォニックでクドく、なおかつ感動的なアレンジの功績も大きかったと思います。

そんな「あなた」、“あやや”はシンプルかつアコースティックなサウンドをバックに、まっすぐ、この楽曲と向き合って歌っているようです。

ちなみに、『SINGER』シリーズの中ではなかなか聴けない、“あやや”のいわゆる昭和歌謡のカバーとしては、弘田三枝子さんの「人形の家」、ちあきなおみさんの「喝采」などがあり、それぞれサブスクで聴くことができます。

次は、山下達郎さんの「希望という名の光」。

2010年、映画『てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡~』主題歌としてリリースされていました。

翌2011年、発生した東日本大震災に打ちひしがれた人々の心を励ました、いくつかの楽曲のうちのひとつとなりました。

ここでの“あやや”は、珍しくちょっと困惑しているとでもいうのか、このOKテイクまでにかなり悩まれた様子がうかがえます(あくまで、個人の感想です)。

ちなみに山下作品の演歌系アーティストによるカバーとして、他には五木ひろしさんの「RIDE ON TIME」、坂本冬美さんの「クリスマス・イブ」などがあります。

また山下さんは故・フランク永井さんにコンテンポラリー・サウンドのポップス「WOMAN」を提供、スマッシュ・ヒットとなっています。

続いては、ここまでの流れを断ち切るかのように激しい、(広義の)ラブ・ソング。

米英はじめ世界的に大ヒットし、アデルの代表的な楽曲となった「ROLLING IN THE DEEP」の登場です。

熱く愛し合ったこと、そして愛してしまった自分への後悔も含めて、どうしようもないクズ男に引導を渡す女性の歌です。

この歌詞の世界に入り込んだかのような“あやや”は、熱を持ちつつも、どこか楽しそうですらあり、そこが興味深いところです。

ちなみにこの楽曲は、ソウルの女王ことアレサ・フランクリンも生前最後のアルバムでカバーしており、アレサと“あやや”はいち早く、アデルのこの曲を通してつながっていた、といえるのかもしれません。

と、めいっぱい本音を吐き出したところで、この『SINGER8』も締めくくりに入ります。

まずは、Aimerさんの「蝶々結び」。

RADWIMPSの野田洋次郎さんが楽曲提供・プロデュースしたバラードです。

“あやや”ならではの繊細な表現が、胸に迫ります。

そして最後のナンバーは、加藤登紀子さんが和田アキ子さんのために書き贈った「今あなたにうたいたい」。

シングル発売はされていませんが、和田さんが大切にしている楽曲のひとつで、コンサートでサビの部分をマイクなしで歌うこともあるなど、思い入れの深さが感じられます。

加藤登紀子さんのルーツである、シャンソンの香りも漂うこの楽曲を、和田さんよりは一歩引いたような感じで、なおかつ深みと円熟味を伴って、“あやや”は表現しているようです。

聴けば聴くほど味がしみ出てくる、名唱のひとつだと思います。

というわけで、以上が『SINGER8』の収録曲紹介となります。

その12で触れたように、リリース以前の段階で曲数や選曲に紆余曲折があったようで、もしたとえばここにHYの「366日」が加わっていたなら……、などといった妄想をし始めたなら、もはやとどまるところを知らないわけですが、正直、聴き終わってみると「ひと区切り」という感覚と同時に、どこかまだ聴き足りないような感じもあり、早くも心の中では『SINGER9』の登場に期待してしまう、そんな自分がいます。

そしてもちろん、“あやや”=島津亜矢さんの本領は演歌の世界であり、アレサ・フランクリン、ジャズなど縦横に歌いまくる“あやや”も2024年5月、サブちゃんこと北島三郎さん(筆名:原譲二)を作曲に迎えた、あたたかくやさしく力強いニューシングル「おてんとさま」をリリースしています。

どのフィールドであれ、“あやや”のさらなる飛躍を、ひとりのリスナーとして、私は願ってやみません。(了)

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しんのすけ1965

昭和歌謡などの音楽以外にも、さまざまに興味を持っています。そういったあたりも、どしどし出していけたらいいなぁ………なんて、思っております。

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