
こんにちは。
観劇をしているとやはり好きな役者さん、いわゆる推しができるものではないでしょうか?
また、思い入れのある役者さんや作品が増えていく事もあるかと思います。
しかし、公演期間が短く時間が取れなかったり、見たい複数の作品の公演期間がもろ被りであったり、チケットが取れなかったりと、結果的に劇場で観れなかったものはいくつもあります。
後に仕方ないから映像で観ようなどと軽い気持ちでいると、本当に劇場に行けなかったことを生涯後悔することになります。(個人の意見です。)
そんな作品のお話です。
闇
※ネタバレ注意
オレンジは基本的に私の感想です。
舞台 ”どうか闇を君に”
そもそも、私はDVDを買うくらいならそのお金でチケットを増やそうと思うタイプです。
なので過去作以外でDVDを買うことは滅多にないのですが、劇場のキャパが狭く公演期間も短い為か、どうしてもチケットが取れなかったので、すぐ予約したのが、この作品でした。
3人芝居。上演時間は約一時間半でしたが、舞台は殆ど地下の一室のみです。
物語は真っ暗闇で少年響く少年の悲鳴から始まります。
これほど狂気の作品は他に一つくらいしか知らないくらい、男・少年・女、全てが何かに狂っていました。
私が何より狂っていると思ったのは、長期間監禁され拷問された少年です。
彼は自分をそうした犯人である男が意識を失った際、逃げもせずにあまつさえ介抱し、男が母親に虐待されていた事実を聴くと、「あなたは悪くない」「大丈夫」と言い抱き締め頭を撫でました。自分が母親にされたのと同じように。
自分を痛めつけ恐怖を植え付けた犯人に対してです。
正直一生忘れられないシーンでした。
母の影響もあることながら、恐怖を振り切って自分より優位に居る立場の人間を、少年は平等に扱いました。
感動しました。力で人を護るより、かっこいいと思いました。私のなりたい人間像でした。
涙が止まりませんでした。
また少年は、熱を出した男をあろうことか動ける範囲で献身的に介抱しました。
全ては母の優しさを受けて、自分も同じ行動をしただけだと言います。
しかし少年の偽善とも取り入ろうとするように感じられる行為も信じられず、男は依然として少年を虐げる事を止めません。
それでも少年は逃げませんでした。試みる事はあっても思い止まりました。
それは男の日記を見てしまったからです。
詳細に書かれた凄惨な虐待の日々を知り、少年の心は男の心に向き合い始めました。
この時点で既に少年は男に心を許しているように見えます。自分を監禁して痛めつけた得体の知れない相手にです。まるで狂気だと私は思います。でもその底無しの狂気的な慈愛と、甘いと思いながらも誰が嫌いになれるでしょうか。
本来守られるべき少年の心身で受け止めていいほどの闇を、彼は受け入れました。
そしてそれほどの時が経たないうちに事態は急展開します。
自身の人生を騙る女が男によって地下室に拉致されたのです。全ての元凶はこの女でした。
男の母親で惨い虐待を男に施していた女が突然現れたかと思えば、少年はその女を母さんと呼びました。
男と少年の母親は同じ人物でした。それを知っていて男は少年を監禁し、自分と少年の何が違うのかを知りたかった。
自分を虐待した姿と少年を大切に育てた、同一人物とは思えない行動の意味が知りたかった。
現実は悲惨でした。女もまた虐待などの過去を持っており、自身の親と同じように子供を育てていたが何人もの子供を犠牲にして、ようやく真逆の育て方をすればと違った結果になるのではと至ったのが少年でした。
子供たちは女の実験体に過ぎず、全てを知った少年は優しかった母親に言葉を失います。
しかし思い通りにならなかった少年と、過去に捨てた男すら殺そうとします。
すべての業は無関係の尊い命を犠牲に繋がっていくと思いました。ここまで救いの無い作品はあまりに珍しく、恐ろしいと同時に貴重でした。救いの無い現実と、目の当たりにすることは無いであろう壮絶なシーン。
何より闇に捕らわれた男と、希望に直向きな少年の対比は、俳優さんの演技に圧倒されっぱなしでした。
結果的に二人で母親を殺し、安堵を迎えるかと思いきや、男は恐怖の対象であり自分の仕打ちに対する意味を母に問う目的を失いました。
生きる目的を失って子供のように怯える男に少年は言います。一緒に生きて行こうと。
物語は光に包まれる二人を最後に終幕します。
形はどうあれ、実の母を殺めた二人を包む光は希望なのでしょうか。一瞬の夢であり、皮肉なのでしょうか。
私は誰にもわからない、正解など無い本当の結末を想像して楽しみます。
最後まで刺激の絶えない作品でした。あれ以上の至高を私は知りません。
全体的な感想
とにかくこの三人舞台はタイトル通り終始暗いです笑
ただ、少年の「あなたは悪く無い。大丈夫だよ。」という言葉に何度も泣きました。
少なからず人間は誰しも、潜在意識で罪悪感を腹の奥に抱えていると思います。それを包み込むことができるのは、邪気の無い子供だけな気がしました。
小さな舞台にこじんまりとしたセット、たった三人の俳優という少数精鋭で出来た世界観は、俳優さんたちの実力があってこそでした。
また自分の感性を揺るがすようなかけ替えの無い作品に出会えることを願っています。
