昭和歌謡に魅せられて~内山田洋とクール・ファイブ、シングル曲解禁。

とにかくずっと好きで、今でも大好きな内山田洋とクール・ファイブの楽曲が、ようやくサブスクで解禁された。

厳密には「大部分のシングル曲解禁」で、前川清さんがソロ歌手として独立するまでにリリースされたシングル曲のうち、1980年の「Last Song」までのA面曲、そしてこれまでなかなか気軽に聴けなかったB面曲(ごく一部は対象外)が、年代順にふたつの『シングル・コレクション』としてまとめられた(A面曲、続けてB面曲をそれぞれ年代順に、という構成。『1969~1974』は「長崎は今日も雨だった」から「雨のしのび逢い」までがA面、「涙こがした恋」からがB面曲。『1974~1980』は「晩夏」から「Last Song」までがA面、「悲恋長崎」からがB面曲)。

ムードコーラス(ムード歌謡の一形態)という、主に男性ヴォーカルが切ない女心を歌う日本独自の?音楽ジャンルにおいて、クール・ファイブは前川清さんのワイルドな歌いっぷりと繊細なコーラスワークが人気を呼び、1975年頃からは萩本欽一さんのテレビ番組『欽ちゃんのドンとやってみよう!』へのレギュラー出演効果もあって、その数々の歌はより幅広い層に浸透し、他のグループがパワーダウンして行く中、80年代前半あたりまで人気を長らえることができた(とんねるず「雨の西麻布」のバックコーラスも、クール・ファイブによるもの)。

まずはせっかくなので、歴代のシングルA面曲の、それも前半分だけでも、じっくりと聴いて、ひたっていただきたい。

いきなりオリコン1位&ミリオンセラーとなった衝撃のデビュー曲「長崎は今日も雨だった」、当時の桑田佳祐少年が多大な影響を受け、すっかりハマってしまったという第2弾「わかれ雨」、そして「逢わずに愛して」「愛の旅路を」「噂の女」「愛のいたずら」(これら4曲で、クール・ファイブはオリコントップ10以内に46週間連続ランクインしていた)、「そして、神戸」「東京砂漠」……と、筒美京平さん作曲のソウルフルかつスタイリッシュな「さようならの彼方へ」も含め快進撃を続けたその軌跡が、2セットそれぞれの前半で、1980年の分まで堪能できる。

そんなクール・ファイブの魅力を語るにあたって、主に森岡賢一郎さん(故人)が手がけられた、流麗かつタイトなアレンジが作り出す、とろけるようなサウンドを抜きにすることは難しい。

加山雄三さんの「君といつまでも」をはじめ数々のヒット曲を手がけられた森岡さんにとって、クール・ファイブとの一連のお仕事はある意味その集大成のようでもあり、プロの仕事とはまさにこれだ! という作品が、次から次へと繰り出される様子に、我々リスナーはただ陶然として聴き入るばかり。

ふと気がつくと、身も心も《クール・ファイブ沼》にハマってしまっていることうけあいである。

ちなみに近年では、唯一前川さん以外のメンバーとして小林さん(故人)がシングルA面のヴォーカルを務めた「イエスタデイ・ワンス・モア」の日本語カバーが、その味わいある歌声でカルトな人気曲になっている。

B面曲は、A面と比較すると軽めというか、またちょっと違った感じのクール・ファイブの魅力が楽しめる。初期の「不知火の女」「捨ててやりたい」「恋は終ったの」や『1969~1974』B面曲パートの後半あたりなどは、特に聴きものが多い。『1974~1980』になるとB面曲もややパターン化してくるものの、筒美京平さん作曲の、壮大なスケールの「さようならの彼方へ」とは一転、軽快な「涙はやめて」、京平さんの弟子筋にあたる穂口雄右さん作編曲で、ルー・ロウルズの全米ヒット「別れたくないのに」からサウンドのテイストとリズムの刻みを拝借した感じの「わかれ前夜」、前川さん作曲の「少年」などが聴きもの。「少年」はタイトルから推察できるように、惚れたはれたの世界から離れ、自らの少年時代を回顧している重厚な楽曲で、アルバムからのシングル・カットだったと記憶している。クール・ファイブはバンドでもあり(NHK紅白でも、生演奏を2度披露している)、メンバーそれぞれの自作曲がアルバムによく収録されていた。彼らの代表曲のひとつ「東京砂漠」も、リーダーだった内山田洋さん(故人)の作曲である。

なお今回、解禁の対象外となったシングル曲の中には、ゴダイゴのソングライター・チームが楽曲を提供し、化粧品のCMソングにも採用された「魅惑・シェイプアップ」、初期のB面曲をゴージャスにリメイクした「恋は終ったの」(オリジナル版は今回、解禁され聴くことができる)、ニール・セダカの「きみこそすべて」に新たな日本語の歌詞をつけた「恋さぐり夢さぐり」(このバージョンには、作者でもあるニール本人から賛辞が寄せられた)、同じシステムでエルヴィス・プレスリーの初期ヒット曲を再生させた「夢待ち人」などがある。

今後はこのあたりも解禁していただき、よりコンプリートに近い形でクール・ファイブの世界にひたれるようにしていただければ、これにまさる喜びはない。(了)

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しんのすけ1965

昭和歌謡などの音楽以外にも、さまざまに興味を持っています。そういったあたりも、どしどし出していけたらいいなぁ………なんて、思っております。

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