《歌怪獣》こと、島津亜矢さん=アヤ・シマヅ(※今回のアーティスト名)=あややが、《クイーン・オブ・ソウル》と称された故アレサ・フランクリンの楽曲に挑んだ、世界同時配信のアルバム『AYA’s Soul Searchin’ -Aretha Franklin-』が、2024年7月、リリースされた(CDも同時リリース)。
映画『ブルース・ブラザース』『ブルース・ブラザース2000』に特別出演したアレサがそれぞれの劇中で熱唱した「シンク」「リスペクト」をはじめ、バート・バカラック&ハル・デヴィッド作品「小さな願い」、キャロル・キング&ジェリー・ゴフィンほかの共作「ナチュラル・ウーマン」、スティーヴィー・ワンダー作品(共作)「アンティル・ユー・カム・バック・トゥ・ミー(待ちこがれて)」、ゴスペルのド定番「アメイジング・グレイス」など、アレサで有名orヒットしたナンバー全8曲に、あややが英語のまま、全力投球でトライ。加えてあやや自身の愛犬との別離=ペット・ロスを楽曲化した日本語オリジナル「いつでもふたり」をラストに収録している。
今回私は、このふたりのバージョンを(あやや~アレサ、の順番で)交互に並べたプレイリストを作成して聴き込んでいるわけだが、録音時の年齢に関係なく、あややのバージョンからはパンチと若々しさが、アレサのバージョンからは貫禄と風格が感じ取れた(年齢だけで行くと、逆でもおかしくないのだが)。
そして興味深いことに、アレンジも演奏力もほぼ同じためか(あやや版のバッキングは、実力派のバンド、オオサカ・モノレールが担当)、聴いていて途中で「今、歌っているのが」あややかアレサか、わからなくなったりもした。
ただやはり、あややが故・本田美奈子さんやエルヴィス・プレスリーなどと同様、ストレートにカバーしている「アメイジング・グレイス」におけるアレサは、教会でのライブ・レコーディングということもあって、魂のスイッチを全開にした、まさにモンスター級のパフォーマンスを披露しており、その底知れない歌力を実感させてくれるのであった。
この1曲に限っては、比較も何もない。
あややが今後の目標のひとつとして「ゴスペルに挑戦してみたい」と語っているのも、このアレサの、たとえばあややがゴジラだとするなら、まるでキングギドラのように熱いパフォーマンスが念頭にあるのだろうと思われる。
そんな、ワイルドなスタイルをもつアレサの楽曲の中で、あややがその長所を発揮できるものがあるとすれば、メロウでスウィートな、やさしいテイストをもったものだろう。
「小さな願い」「待ちこがれて」「スパニッシュ・ハーレム」あたりは、あややもアレサに負けることなく(というか、アレサがむしろ不得手としている)、キュートな持ち味を発揮できているようだ。
確かに、8曲というのは若干ボリューム不足という印象は否めないが、ヴォーカル、そして英語の発音と、長期間にわたる徹底的なトレーニングを、あややは受けてきた。
もちろん、彼女の「本業」は演歌歌手であり、そういった類のレコーディング及びリリース、そしてノンジャンルで歌いまくるコンサートを、日本各地で行っている。
それらのことを考慮すると、あややの今回のトライにおいて、8曲、というのはリミットだったのかもしれないし、聴き手にとっても、実際聴き込んでみると「よし。これで十分!」とも思えてくるのだが、果たしてあなたのジャッジは、どうだろうか?
とりあえず、めざせ、アポロ・シアター!!!
ということで。(了・文中一部敬称略)