今回は、音楽の女神として知られる、「ミューズ(muse)」についてご紹介したいと思います。
古代ギリシャ語やラテン語ではムーサといい、詩歌、音楽、舞踏、歴史の芸術・学問を司る女神で、Musicの語源であると言われています。
・ギリシャ神話・オリンポスの神々
ギリシャ神話の主だった12柱の神々は、以下の通りです。
- ゼウス
- ポセイドン
- ハデス
- ヘスチア
- ヘラ
- アレス
- アテナ
- アポロン
- アフロディテ
- ヘルメス
- アルテミス
- ヘパイストス
この12神は、事が起こると主神ゼウスにより、オリンポスの山頂に招集されると言われています。
その12神の他にもたくさんの神々がおり、愛の神エロスや女神デメテル、人間のつくり主と言われる巨人プロメテウス、ぶどうと酒の神ディオニュソス等の有名な神があり、一段低い神として、音楽や学芸の守り神、ムーサ(ミューズ)や泉や森に住む妖精のニンフ、半分動物のようなパーンやサチュロスがいるとされています。
ギリシャ神話では、神々はオリンポスの上で、ネクタル(神酒)を飲みアンブロシアを食べ、アポロンを親分にしたムーサ(ミューズ)たちの歌や音楽やダンスを喜びながら、不老不死の楽しい生活を送るものと想像されていました。いかにも人間的な、生命の喜びに溢れた神々の姿です。
ムーサイ✳︎(ミューズ)というのはゼウスとムネモシュネ<記憶>の娘たちで9人(3人、7人などの説もある)で、ローマ時代になると、その9人がそれぞれ学芸の各分野を分担して受け持つと考えられました。
✳︎ムーサイ=ムーサの複数形
・9人のムーサイ(ミューズ)たち
ここでは、9人のムーサがどの役割を担っていたかをまとめます。
①カリオペ
【叙事詩】
「美声」の名を持つ弁舌の女神で、ホメロスにインスピレーションを与えました。
大変な美声を持ち、オルペウス(吟遊詩人)の母です。
アトリビュート(✳︎):書板と鉄筆
(*アトリビュート=西洋美術において伝説上、歴史上の人物または神話上の神と関連づけられた持ち物の事。その物の持ち主を特定する役割を果す。持物(じもつ・じぶつ)ともいう)
②クレイオ
【英雄詩・歴史】
クレイオは「祝福する」という意味です。
「有名(セレブリティ)」の語源で、歴史や英雄詩等、記念され記録されるのにふさわしい出来事を司る、想像的発想の女神です。
アトリビュート:月桂冠、トランペット、書物、巻物(巻物入れ)
③エウテルペ
【叙事詩】
テルペは「快い」、エウは「とても」を意味します。
主に詩人の内面や感情や情緒を主観的に表現する叙事詩の音楽の女神です。
アトリビュート:笛
④タレイア
【喜劇】
「生き生きとした、喜びに満ちた」を意味し、
喜劇を司ります。
アトリビュート:喜劇用の仮面・蔦のかんむり・羊飼いの杖
⑤メルポメネ
【悲劇】
「メルポ」は「歌う」を意味しており、悲劇の女神です。
古代初期の悲劇は、叙情詩の形式でした。
こうした歌はディデュランボスと呼ばれ、ここから派生したフランス語の「ディテランビック」という語は「賛歌を歌う者」を意味しています。
アトリビュート:悲劇用の仮面・葡萄の冠・悲劇の靴(悲劇で着用された高くて厚底のブーツ)
⑥テルプシコラ
【歌舞】
「快い(テルペオ)ダンス(コロス)」を意味し、ダンスを意味しますが、合唱の歌の意味もあります。
アトリビュート:竪琴
⑦エラト
【叙事詩・恋愛詩】
哀歌の女神で、エロティックな詩も司っています。
アトリビュート:竪琴
⑧ポリュムニア
【賛歌・雄弁】
「いくつもの賛歌」を意味し、雄弁を司ります。
アトリビュート:なし
⑨ウラニア
【天文】
「天空」を意味し、天空の神ウラノスを連想させる名前です。
天文学を司ります。
アトリビュート:杖・渾天儀・コンパス
[まとめ]
音楽の女神ムーサ(ミューズ)は、芸術の神アポロンに仕えていました。
9人姉妹でそれぞれの役割があることがお分かりいただけたでしょうか?
現代の音楽でも「MUSE」というタイトルの作品がたくさんリリースされているようです。
これを機に聴いてみてはいかがでしょうか?