そして、最後にご紹介したいのは、あの阿久悠さんが作詞、「逃避行」と同様、都倉俊一さんが作曲した、ペドロ&カプリシャスの「ジョニィへの伝言」。
このグループ、初代ヴォーカリストに前野曜子さんという逸材を擁し、「別れの朝」という大ヒットを放ったのですが、その後、今の高橋真梨子さんに交代し、そして生まれたのがこの「ジョニィ」だったというわけです(この後、同じ阿久・都倉コンビによる「五番街のマリーへ」もヒット。こちらの方が、より有名かもしれませんね)。
阿久悠さんといえば、尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」にも顕著ですが、少し気持ちを残しながらもドライに、あるいはサラッと別れて行くふたり、という感じの歌詞を、お得意にされていました。
さらに付け加えるならば、そこに至るまで、ふたりの間に何があったのかは、歌詞の中ではほぼ触れられることはありません。
その時の状況、その時の感情が歌われるだけで、あとは聴き手の想像力にまかせています。
「ジョニィ」の場合も、「2時間待ってた」けど結局来なかったジョニィを残して、ひとり街を出る決心をしたヒロインが、待ち合わせ場所の店に居合わせたジョニィの友だちに伝言を残す、という内容。
「元の踊り子で また稼げる」から「私は大丈夫」、そして「私は私の道をゆく」と、このヒロインはタフというか、どこか健気(けなげ)でもあります。
「今度のバスで行く 西でも東でも」ということは、具体的な行き先もまだ決めていないようでもありますが、このフレーズがどこか、聴き手に解放感を与えてくれているのも、また確かです。
そう。人にはあてもなく、どこかへ旅立ってみたい、そんな願望が、頭のどこかにきっとあるんだろうと思います。
きっと、このヒロインが行き着く先は、奥村チヨさんの「終着駅」には出てこないどこかだろう、そんな気もしますね。
ここまで、朱里エイコさんの「北国行きで」、麻生よう子さんの「逃避行」、そして高橋真梨子さんがヴォーカルを担当したペドロ&カプリシャスの「ジョニィへの伝言」と、3通りの“旅立つ女たち”の姿をみて来ましたが、いかがだったでしょうか。
それぞれのヒロイン、性格などはかなり異なっていそうですが、どこか前向き、そんなところはよく似ているようです。
フィクションの登場人物とはいえ、思わず行く末の幸せを祈らずにはいられない、そんな魅力的な女性たちでした……。(了)