☆☆☆収録曲☆☆☆ ※全曲モノラル録音
東京ブギウギ(1955年バージョン)☆★/笠置シヅ子
恋のステップ☆/笠置シヅ子 ※三笠静子名義
ラッパと娘☆★/笠置シヅ子
センチメンタル・ダイナ☆★/笠置シヅ子
アイレ可愛や☆★/笠置シヅ子
別れのブルース☆★/淡谷のり子
雨のブルース☆★/淡谷のり子
支那の夜(シナの夜)/渡辺はま子
蘇州夜曲☆★/渡辺はま子、霧島昇
夜来香☆/李香蘭(山口淑子)
一杯のコーヒーから★/霧島昇、ミス・コロムビア
懐かしのボレロ★/藤山一郎
湖畔の宿★/高峰三枝子
小雨の丘★/小夜福子
夜のプラットホーム★/二葉あき子
リンゴの唄/霧島昇、並木路子
青い山脈☆★/藤山一郎、奈良光枝
恋はやさし野辺の花よ(1962年バージョン)☆/田谷力三 ※これのみ大正時代のヒット曲
ヘイヘイブギー☆★/笠置シヅ子
大阪ブギウギ★/笠置シヅ子
ジャングル・ブギー☆★/笠置シヅ子
買物ブギー(1955年バージョン)☆★/笠置シヅ子
☆=NHK『ブギウギ』登場/使用楽曲
★=服部良一作品
朝ドラ『ブギウギ』の放映開始からまもなく、登場する大部分の楽曲のオリジナル音源を所有しているコロムビアから発売されたコンピレーション・アルバム『ブギウギの時代 ベスト』。
笠置シヅ子歌唱、あるいは服部良一作曲で、しかも『ブギウギ』に登場してくる昭和10~20年代の、戦時色の薄い、もしくはまったくない楽曲を中心に据え(細かく見て行くといろいろあるのだが、本稿では踏み込まない)、ほぼ全曲オリジナル音源で揃えている。
さすがに大手かつ老舗のコロムビアだけあって、これ1枚だけでも《日本の昭和初期のポップ・ミュージック》の大まかな雰囲気を感じ取ることは十分可能で、おおむねよくできたコンピレーションではある。
惜しまれるのは、笠置シヅ子の代表的な2曲で、ここでは最初と最後に置かれた「東京ブギウギ」と「買物ブギー」が、彼女の歌手引退間近の昭和30年に再録音されたモノラル・バージョンだということ。
確かに音源そのもののノイズは激減している(というか、まったくない)ものの、特に「東京ブギウギ」ではキーが下がり、彼女の歌声にも多少、悪い意味での慣れというか衰えというか、ノリの悪さが感じられてしまうのが残念ではある。
逆に「買物ブギー」は相当に歌い慣れていたであろうことから生じた、彼女の巧みな芝居心に思わず笑わされてしまう。
もちろん、どちらも貴重な音源には違いないが、「やはり、まずはオリジナル音源で…」というのが、正直な気持ちだ。
他には、子供時代のスズ子が「実家」の銭湯でうたう「恋はやさし野辺の花よ」は、「日本でこの曲といえばこの人」とも言える浅草オペラのレジェンド・田谷力三による昭和37年のレコーディング(モノラル)で収録。
これら3曲以外は、すべてモノラルのオリジナル音源、ということになる。
李香蘭(のちに山口淑子)の「夜来香(イエライシャン)」は中国語版で、サブスクにある中国のメーカーの音源は加工に加工を重ね、ノイズこそ少ないもののかなりこもった音だが、このアルバムの「夜来香」は、ノイズ込みとはいえクリアな音でその流麗なアレンジの妙を堪能することができる。
また、渡辺はま子の「支那の夜」は、諸事情に配慮してか「シナの夜」とタイトル表記が変更されている。
中盤には『ブギウギ』に登場しない服部良一作品を中心に、「東京ブギウギ」と共に終戦直後の荒んだ人々の心をなぐさめ励ました「リンゴの唄」「青い山脈」なども収録。
高峰三枝子の「湖畔の宿」、小夜福子の「小雨の丘」は笠置シヅ子の楽曲同様、「女優さんが歌ってヒット」したものだが、小夜福子は当時、宝塚の男役だったため、セリフが完全に男役のノリになっているところが興味深い。
いずれにしても全23曲中9曲、しかも序盤と終盤に笠置シヅ子の歌が大フィーチャーされているので、《笠置シヅ子とその時代》といったサブタイトルがついていてもおかしくない、そんなアルバムではある。
このままの形でサブスクでも聴くことができるので、ご興味のある方はぜひ探してみていただきたい。(文中敬称略・了)