一冊の文学本は私が私であることを教えてくれた

 

 夏目漱石の「こころ」を二十数年ぶりに読んだ

タイトルの通り最近心が乱れがちで初心に還りたかったからだ

私がこころを初めて読んだのは高校生の頃だった

明治から大正にかけての文学が好きで興味のあるものは何冊か読んだがその中にこころがあった

多感で世間を知らない当時の私は登場人物の無垢な人物像に感銘を受けて涙した

あれから歳を重ねて読むこころは私の眼にどう映るのか

どれだけ感動に違いが出るのか比べてみたかった

結果泣かなかった

その代わり陶酔しすぎることなく物語そのものを冷静に捉えることができた

たとえわずかであっても親友を裏切ったことを拭えなかった罪悪感

愛するひとを盗られても一切親友を責めることなく信仰と思想を貫いた強い信念

どちらの人物も一貫性があり自分の人生に責任を持っている

自分もこんな人間になりたいと思った点は

今の私も昔の私も1ミリも変わっていなかったことが嬉しかった

この文学本は私の人格形成に大きな影響を与えた

今まで読んだ小説の中で最も愛する作品といえる

初心を忘れないようこれからも数年に一度は読み返したい

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chiho

自分の感性に従いエッセイ風になぞらえて気持ちを吐露します

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