観てますか、読んでますか、『ダンダダン』。
2024年の秋アニメ最大の収穫、とも言われ(いま私が言いました)、その奇想天外でブッ飛んだストーリー展開、チャーミングなキャラクター造形、ハイクォリティーな作画によってアニメファンの心をわしづかみにしている『ダンダダン』。
原作コミックは、あの『ワンパンマン』を生んだWebマガジン『少年ジャンプ+』にて連載中ですが、こちらも大人気。
アニメ版の方は、Netflixなどを通して世界に配信中で、主に英語圏の視聴者による「Netflixで配信されている日本のアニメ」ランキングでもダントツの1位=高評価、なのです。
で、この『ダンダダン』の(一応)主人公、オカルト好きで地味で目立たないけど結構キュートな高校生のメガネ男子=オカルン。
彼の本名、なんと「高倉 健」、なんです。
この事実、日本よりもむしろ、海外の視聴者の興味をひいており、あげくの果てには「『ダンダダン』に名前が出てくる高倉健、ってどんな人?」という解説動画まで登場する始末。
もちろん高倉健=健さんといえば、『網走番外地』シリーズ、草なぎ剛さん主演・Netflixでのリメイク版も楽しみな『新幹線大爆破』、そして『八甲田山』、八代亜紀さんの「舟唄」が効果的に使われていた『駅 -STATION- 』などなど、死してなおその存在感を増し続ける、東映、いや日本を代表する国民的スターのひとりであり、『ブラック・レイン』『ミスター・ベースボール』など海外の作品にも数々出演されているわけですが、昭和の大スターの慣例にもれず、歌手でもありました(などと書くと、健さんは頭をかきながら否定されるかもしれませんが、いわゆる「歌う映画スター」ですね)。
楽曲としては「網走番外地」「唐獅子牡丹」などが有名で、他にも「今さらどうにもなりゃしねぇ」というセリフが、ラジオ番組のギャグコーナーなどで多用されていた「望郷子守唄」、加藤登紀子さんのカバーで、楽曲きっかけで『居酒屋兆治』という映画が作られた「時代おくれの酒場」、八代さんとのデュエット「挽歌」などがあるのですが、この、歌のレコーディングの際のエピソードとしてよく語られるのが、まだ健さんが日本はおろか東映を背負って立つスターになるずっと以前に結婚し、その後、度重なる身内のトラブルに健さんを巻き込むまいと自ら決断して離婚した、初代三人娘のひとり・江利チエミさんの存在です(ちなみにあとふたりは雪村いづみさん、そして美空ひばりさんです)。
チエミさんは、健さんのレコーディングには必ずといっていいほど同行し、まだ歌は素人同然の健さんに付き添い、熱心に歌唱指導を行いました。
あまりにも熱心過ぎて、スタジオのスタッフから「チエミさん!これは健さんのレコーディングなんですから…」と、たしなめられるほどだったといいます。
しかし、そういったエピソードを頭において、健さんの「唐獅子牡丹」などを聴いてみると、歌い方の緩急、強弱、アクセントのつけ方などに、確かにチエミさんの指導が生きているように感じられるのです(余談ですが、チエミさんは健さんに「愛のブルース」という楽曲を作詞・作曲してプレゼントしており、この《愛のコラボレーション》は、健さんのベスト盤で聴くことができます)。
離婚後も自らのコンサートで「唐獅子牡丹」を歌い続けたチエミさんは、1982年、不幸かつ淋しい形でこの世を去りましたが、晩年の健さんの代表作『鉄道員(ぽっぽや)』の撮影中、劇中で流す楽曲を何にするかという話になった際に、健さんは
「『テネシー・ワルツ』は、どうですか?」
と監督に告げ、そのまま使われることになったそうです。
「テネシー・ワルツ」は、チエミさんのデビュー曲にして代表曲のひとつ(外国曲のカバーで、オリジナルはパティ・ペイジ)。
こんなエピソードからも、チエミさんに対する健さんの深い想いが伝わってくる気がします。
不器用ながらも(イメージです)、ひとりの女性に愛情を傾け続けた(あくまでイメージです)、健さん。
その健さんと同じ名前を持つ(これは本当)、『ダンダダン』のオカルン。
今後の活躍、そして展開から、目が離せませんね。
ちなみに、映画スターの「健さん」の名前は芸名で、本名は「小田 剛一(たけいち、もしくはごういち)」というそうです。(了)