春の魔物

私 暗いところがすき

晴れの日も雨の日も

私 ずっと重いカーテンひいている

最低限

新聞がよめるだけの

くらい電気つけている

冬が終わるのはいやですね

つめたい空気がすきなので

そのさみしい香りが すきなので

お日様のしずんでいる時間が

長いほうが なんだか

そわそわしなくてすむみたい

土の中にいたい

まだ 土の中にいたいけれど

引き摺り出さないで

せめて

ひんやりとしめっている

日陰の 石の下にいたいけれど

春はいやですね

光にさそわれる

ちがう香りの風がつれていく

重いカーテンのむこう

私 明るいところはごめんです

なのに私は

ハリガネムシに寄生されて

水のなかをめざすカマキリのように

光のなかへ

頭の中にもうひとり私がめざめて

止めても歩き出してしまうのです

光のなかへ

そして 沈む

光に満たされた 公園のベンチで

坐って目蓋をとじていたい

ねむりたくなってきて

後先のことはどうでもよくなってきて

とりあえず今 なんとかなればいいやと

春には魔物がでるのです

ねむりからさめたら

夢でみた花はなくて

新緑のそのあまりのまぶしさに

あゝ化かされたと云いながら

土の中へと 帰ってゆくのです

つかのまのゆめのまに

もうひとり 目覚めた私が

なにをしていたかも

じきに知ることになるのです

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山都ウミ

とってもひよわです。札幌出身、仙台在住。いまとなっては仙台大好き。サッカーと相撲と虫も大好き。

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