みなさんは健康ですか?
非常にシンプルなことですが、私は今までそのことを自覚できないくらい心身ともに病んでいました。
言葉にするのが難しいのですが、なぜか生きにくさというものに全身が覆われてしまい、生きる力が弱くなっていたのです。
これといった理由が見つからず、しかも便利で豊かな世の中で過ごしているはずなのになぜ生きにくさがつきまとっていたのか不思議で仕方がありませんでした。
そんな時、鈴木祐さんという方の「最高の体調」という本を読む機会がありました。
読み終わった後に気づかされたり、思い当たることがたくさんありました。そんな自分の経験も照らし合わせてこのコラムを書いていきたいと思います。
結論からいうと現代の病気の大半は文明病なのです。
文明病
日々の不調や不満には様々なレベルがありますね。
朝起きれないという人もいれば集中力が続かない人もいます。
さらには怒りや不安がコントロールできずに人生が上手くいかない人、つねに体調不良に襲われている人、毎日の暮らしに張り合いがなく空虚な気持ちのまま暮らしている人など、症状や問題の深刻さには個人差があるはずです。
うつ病、肥満、散漫な集中力、慢性疲労、モチベーションの低下、不眠、弱い意志力など、一見バラバラのように見える問題も、根っこまで下りてみれば、実は同じものなんだそうです。
すべては一本の線でつながっていて、その線の正体を暴くカギが「文明病」という考え方です。
「文明病」が心と体を蝕んでいくという考え方。「文明病」から脱却し、本来の自分を取り戻すにはどうしたらいいのでしょうか。
1995年 ワシントン州の牧師、ボブ・ムーアヘッドのエッセイ「現代の矛盾」を引用します。
「私たち人間は、長大なビルを作りあげたが、いっぽうで気は短くなった。
道路を広くしたわりに、視野は狭くなった。
お金を使っても身につくものはなく、ものを買っても楽しみは少ない。
家は大きくなったが、家族との関わりは小さい。
便利になったのに、時間はない。
専門家が増えても、それ以上に問題も増えた。
薬は増えたのに、健康な人は減った。
私たちは、酒を飲みすぎ、煙草を吸いすぎ、時間を無駄に過ごし、少ししか笑わず、毎日を急ぎすぎ、怒りすぎ、夜更けまで起きすぎ、目覚めたらすでに疲れている。」
どう感じられましたか?
実際、これだけ豊かで便利になったにも関わらず、現代人は幸福からほど遠い場所にいるといえないでしょうか。
一般的な例えをすれば、朝起きてもどこか体調が悪く、重い足取りで会社に向かい、やる気は起きず、適当な食事で腹を満たしたら、疲れ切って家に帰り眠る。
自分の暮らしは上手くいってないのではないか?自分の人生はこんなはずではなかったのではないか?そんな疑問を持つ人は少なくないのではないでしょうか。
なによりも問題なのは多くの人がそんな自分を責めていることだと著者は指摘します。
仕事のミスが多いのは自分が不注意だから。太った体は自分の意思が弱いから。仕事が終わらないのは自分がノロマだから。夜、不安で眠れないのは自分が気弱だから。
その結果、日ごとに自己を否定する気持ちが強くなり、少しずつ心と体は蝕まれていく何とも悲劇的な状況になります。
「悪いのは自分」という考え方は現実的な解決をさまたげるどころか、単純に仮説として誤っているのです。なぜなら抱える問題の大半は現代人特有の「文明病」が原因だからです。
進化医学
ここで進化医学という考え方が提示されます。
もともと人類は進化の過程で古代の環境に最適化してきたと考えるのが自然であり、自然のなかで獲物を追い、太陽の運行とともに暮らし、少数の仲間と語り合う。
ヒトの脳と体は、そんな環境のなかでこそ最高のパフォーマンスを発揮するように進化してきたという考え方です。
人間に備わった生存システムが現代の豊かな環境ではうまく働かず、古代ではあり得なかった現象が現れました。この人類の進化と現代のミスマッチが進化医学の根幹になります。
心のトラブルや脳のパフォーマンス低下も、やはり進化のミスマッチが原因だと考えられます。心理学的な実験を行ったところ集中力と認知コントロール能力の2つにおいて現代の都市部に住む者よりも突出して高かったそうです。
豊かになればなるほど鬱病が増えるのはなぜでしょうか?現在、世界中で増え続けている病気です。私も鬱病にかかり長年苦しみました。その辛さはわかっています。
鬱病は人生を破壊する病です。日中の活力は消え、夜は眠れなくなり、人生の喜びを味わう能力まで消えてしまいます。そこまで行かずとも、なんとなく毎日が空っぽに感じられたり、いつも気分が沈みがちだったりと、軽い鬱の症状に悩む人は少なくないでしょう。
よく考えてみると不思議な話です。100年前に比べて現代人の環境は大きく向上してきました。日々の食事に悩むことはなくなり、蛇口をひねれば清潔な水が飲め、瞬時に誰とでもコミュニケーションを取ることができます。
それなのになぜ、精神を病む人の数は世界レベルで増え続けているのでしょうか?まさに現代の矛盾です。鬱病の原因はまだ解明されておらず、近代化の何が悪いのかははっきりしていないとのことです。
一つだけ確かなのは現代人の心のトラブルの多くにも進化のミスマッチが関わっているということです。
今回はここまでにします。次回もよろしくお願いします。