前回①の続きになります。
現代人の不調の原因を取り除くキーワード。それが「炎症」と「不安」です。
「文明病」の考え方を使えば解決は容易にシンプルになります。
①自分が抱える問題について、どこに遺伝のミスマッチがあるのかを特定すること。
➁ミスマッチを起こしている環境を、遺伝に沿うように修正すること。
この2段階を着実にこなせば、ほとんどの問題は解決します。
悩みの原因を特定するために現代にありがちな不調の原因を、まずは大きく2つの要素に分類し、そこからさらに個別の対処法を見ていくことにします。
炎症
炎症とは何か?
炎症が長引くと全身の機能が低下します。
炎症そのものは進化の過程で人体に備わった防御システムであり、私たちが生きていくためには絶対に欠かせません。大事なのは、炎症が体の表面だけに起きる現象ではない点です。
わかりやすいのは外傷やアレルギー、風邪などの炎症反応です。
ところが、現代人は、もっとわかりにくい形で起こります。
切り傷や火傷といった短期の症状なら問題はないですが、長期の感染やアレルギーのように炎症が長引くと、一気に話は変わってきます。
内臓脂肪が減らない限り、体は燃え続けます。内臓脂肪とは肝臓や腸といった臓器のまわりにこびりつく体脂肪のことです。
人体にとって、内臓脂肪は異物でしかありません。そのため私たちの体は、内臓脂肪が増えると免疫システムを動かしはじめ、脂肪細胞が分泌する炎症性物質が臓器に炎症を引き起こします。
しかし、いくら免疫システムが頑張っても、内臓脂肪ばかりはどうしようもならりません。体脂肪を落とすには、食事や運動でカロリーを減らすしかないからです。
内臓脂肪が減らない限り体はジワジワと燃え続け、炎症性物質で傷ついた血管や細胞が動脈硬化や脳梗塞の引き金になります。これがメタボリックシンドロームの発症プロセスです。
このようなタイプの炎症には、ハッキリとした自覚症状がありません。風邪のようにわかりやすい症状が出ないため、「何だか調子が悪い」や「よく寝たはずなのになぜか疲れている」といったレベルの、謎の体調不良として認識されるケースがほとんどです。
そのせいで多くの人は不調の原因がわからないまま時間を過ごしています。つまり謎の不調と炎症は、明確に連動しているのです。
慢性炎症は、脳の機能にも激しいダメージをおよぼします。代表的な例が鬱病です。その原因には所説ありますが、これまで有力視されていたのは脳の化学物質に注目した説でした。
セロトニンやドーパミンといった脳内ホルモンのバランスが崩れ、精神の不調を引き起こすという考え方です。いっぽうで狩猟採集民にはその特徴が見られません。
違いをまとめると、
狩猟採集民は外傷や感染による短中期的炎症がメインです。激しい発熱や嘔吐など周囲から見てすぐにわかるような症状が出ます。
現代の日本人は体内で延々とくすぶる長期的な炎症がメインです。誰にでもわかるような症状は表に出ず、少しずつ不調が進行します。
この違いは何か?
古代と現代のミスマッチが起きる3つのパターン。
①多すぎる:古代には少なかったものが、現代では豊富すぎる。
②少なすぎる:古代には豊富だったものが、現代では少なすぎる。
③新しすぎる:古代には存在していなかったが、近代になって現れた。
この分類を使うと、複雑だった問題の見通しがよくなります。
たとえば多すぎる代表例はカロリーです。
我々の脳と体は低カロリーには上手く対応できるが高カロリーを処理するようには設計されていません。高カロリーの状態が続けばあまったエネルギーは皮下脂肪や内臓脂肪として貯蓄され、炎症サイクルにはまり込んでいきます。つまり多すぎるは炎症につながります。
睡眠と炎症の関係
現代の生活で少なすぎるものは何か?物質と情報増大を続ける現代において、古代より足りないのは何か?
まず思いつくのが睡眠です。現代人の睡眠は量・質ともに悪化を続けています。
平均の睡眠時間が1日7~9時間の範囲を逸脱すると体内の炎症が激増します。
夜中に何度も目が覚めてしまうような場合も、体内の炎症は増えます。
狩猟採集民には寝不足の感覚がありません。睡眠の質が高く、パターンは正確そのもので夜中に何度も眼が覚めてしまうケースは一度も確認されません。
人類は長らく社会的な動物として進化してきました。たいていの部族は100人前後で行動し、生まれてから死ぬまでほとんど変化しません。食事や睡眠はつねに仲間たちと一緒でした。古代の厳しい環境では、グループからの離脱は死を意味しました。現代の日本人にとってはプライバシーがゼロの状況も、原始人や狩猟採集民にとっては適したライフスタイルでした。
そのため、我々の脳には「人間関係が希薄な環境」に対応するためのシステムが備わっていません。現代のように核家族や地域コミュニティーのような仕組みが消えつつある状況では、「孤独」は自分の生存を脅かすものとして認識されます。
次回から「不安」について書きたいと思います。