夕方、住宅街の道を歩いていたときのことだ。ふと視線の先に、小さな家が七件か八件ほど並ぶ一画があった。どの家も雨戸が固く閉ざされ、物干しには汚れた布切れが絡みついたまま。ひどく埃っぽく、生活の気配はどこにもない。一目で「誰も住んでいない」とわかる場所だった。

思わず立ち止まりながら考えた。 この一画は一体何なんだろう。 すぐ向かいには新しい一戸建てが整然と並んでいるのに、ここだけ時間が止まったように取り残されている。昔は借家だったのかもしれない。あるいは所有者の事情で、手をつけられないまま年月が過ぎてしまったのかもしれない。
日本では、これからこうした“空き家”や“廃墟”がさらに増えていくと言われている。 人口減少、相続の問題、管理の難しさ。 ニュースで見るたびに、これはもう個人の問題ではなく、大きな社会問題なのだと感じる。
思い返せば、東京のような大都会の真ん中にも、もっとひどく崩れかけた廃墟があった。見た目は寂しく、どこかかわいそうで、それでいて少し怖さもある。もし崩れて誰かを傷つけてしまったらと思うと、危険は否めない。お金さえあれば更地にするのは簡単なのかもしれない。けれど、たとえお金があっても、簡単には動かせない事情がある家も多いのだろう。

夕暮れの中で静かに佇むその一画を見ながら、「町の中には、誰にも気づかれず取り残されていく場所がある」 そんなことを思った。
これから日本のあちこちで、こうした風景が増えていくのかもしれない。 その現実を前に、ただ寂しさを感じるだけでなく、 「どう向き合っていくべきなのか」 そんな問いが胸に残った。
