TSS #05-2

THRILL SHOCK SUSPENSE #05

2023年1月    変わらない評価を受ける名作推理ADVを紹介    愛及屋烏

一柳和の受難シリーズ

雨格子の館 一柳和、最初の受難

奈落の城 一柳和、2度目の受難

氷の墓標 一柳和、3度目の受難

Continuation from last page. 05-1 https://no-value.jp/game/35306/

ミッシングパーツ3話の面白さをよりダイレクトに。

ミッシングパーツにあった時間経過のシステムも時間ゲージの消費という形で視覚的にも管理的にも分かりやすくなっている。

見立て殺人の謎を解き、犯行に使われそうな物品を『隠蔽』し、標的に『注意喚起』をし、更に犯行日の夜間に『護衛』する事で、事件の犠牲者を減らす事が出来る。

そして生き残った関係者からは、事件や他の情報について『聞き込む』機会が得られる。

また関係者との間には会話や行動で上下する信頼度のパラメータがあり、それに基づいて会話が可能な回数も変動する。

連続する犯行を防げなかった場合、単純に頭数が減り、普通に考えれば犯人は残った者の中にいるのだから特定は容易になる。また犯行の中での犯人のミス、というか物証やアリバイの数も犯行が増える程に多くなっていく。

基本的に事件解決に失敗すればするほど通常のミステリーのような連続殺人物になり、それぞれの事件に対する解決策を見つける事で被害者を減らして行く事も出来るため、事件の謎を解くことに対する報酬もしっかり用意されておりやりこみがいがある。

成功→死亡の順でプレイする場合、ハッキリと気持ちが擦り減るので余りオススメしない。

具体的なゲームの流れ

和以外の登場人物は本名ではなく映画の役名で呼び合っているという設定であり、洋館の温室には1日ごとに殺害予告として次の標的となる人物の役名を示す「物品」が置かれる。

役名はとある推理小説シリーズのゲストキャラクター(日織以外)から取られており、該当する本を書斎で読むことで和が次の標的に気付くことが可能になる。

本作の犯人は「小説に見立てた殺人」に固執しており、見立ての為に使える「物品」を館の中から探し出して犯人より先に全て入手すれば、ひ弱な和が見張りをしているだけといった警戒の薄い状態でも犯行を諦めてしまう。

次の標的となった人物への警告では、主に「その人物に危険が差し迫っていることを示す根拠」を示しながら説得する必要がある。

殺人阻止には各事件ごとにいくつかの条件が設定されており、「標的の特定」「見立て阻止」「警告・見張り」のうちどれか1つにミスがあってもリカバリーが可能な場合もある。

油断していると護衛している和の前で毒入りの飲み物を普通に摂取してしまう、うっかり者の標的もいるので十二分に注意してほしい。

クリア後のオマケモード

厳密には本編で書斎の古い本棚の月刊推理を全て読んだり、ランクC以上でのクリア後に解放されるOMAKE ROOMの書棚で書籍・魔法の杖を読了し、問いに答える等の準備が必要。

その上で本編で一定タイミングまでに縁起物を捜索中に取得しておくとオマケモードへの選択肢が出現する。

内容としては、とある被害者の幽霊を和が視認してしまう、というシナリオ。

殺された人の幽霊が、自分が見える人間の前に姿を現し無念を晴らして貰おうとする────と、粗筋だけなら普通の怪談なのだが、超怖がりの和と超カン違いお喋りおっさんの斑井さんの幽霊が揃うと、これが見事にコミカル路線に。

周囲の反応や絡み方も上々で、何故か聞こえない筈の斑井幽霊と漫才が成り立ったり、次の標的さんのシーンも犯人との対決シーンも爆笑もの。

PSP版では、更に筋肉ルート?が追加される。

フィジカルは全てに優先すると言うか、普通に毒を飲んだ後に起き上がる。必見のカオス。

総評・1

推理ADV界の小野田坂道とか言われそうなビジュアルの主人公・和。

怖がりでちょっとした事で気絶してしまうが、翌日になって見知った人が殺されて居ない、という状況の方が「怖い」とし、犯人の妨害に動く様から「アグレッシブ怖がり」と呼ばれる。

クセが強い性格なので賛否はあるが、一定のファンもついている。

事件の動機の方向性としては、金田一少年の事件簿の『悲恋湖』に近く、復讐をしたい標的が分からないので可能性のある相手を皆殺しにする、というもの。

しかし、その動機自体が業界の無責任な風評と、ある被害者の虚言がトリガーになっており、見当違いかつ、はた迷惑な連続殺人である。

ゲームをプレイしていると、助けられない被害者についてはそもそもの原因なんだから、別に助けれなくても仕方ないかな、という気分になる。

ミステリにおける「ここをこうしてたら殺人を防げたのでは」「もしあの時点でこのことを知っていれば」といった、誰もが想像する事をゲームとして形にした意欲作として評価はそれなりに高い。

捜査の自由度が高い分、真相に辿りつく為の難易度は高くなっているが、様々な情報を集め、それを元に自分で推理するゲームデザイン。

その推理を元に殺人事件を防げるというのは他のミステリゲームにはない魅力だろう。まだ1作目だけにまだまだ粗削りな面も残っている…のだが、まさか続編の方が荒いとは。

to be next page. 05-3 https://no-value.jp/game/35956/

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愛及屋烏

ゲーム好き、小説好き、アニメ好き、三役揃いの物書きの端くれ。 ピンチに陥っても、それはそれで気楽にやるタイプ。 ●好きな言葉:続編・クロスオーバー・オールスター・アンサーソング・データ引継ぎ ●好きなゲーム:DQ・軌跡&イース・スパロボ・ゼルダ・神宮寺・逆裁・ラチェクラ ●好きなサブカル:ロボ全般・特撮全般・少、青年誌系 ●好きなドラマ:科捜研・相棒・CSI・キャッスル・十津川警部・赤い霊柩車 ●利用ソシャゲ:へプバン・ギアスロススト・Dr.STバトクラ・シンフォギアXD・スパロボDD・うたわれLF・ギター少女・勇者の飯 ●経歴:宮城出身、30代、なろう出版経験有 ●現在:脳梗塞療養にともないリハビリ&失業中

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