お菓子作りの時の行程の一つ
皆様の中にも、洋風のお菓子を作ったことのある人が多いことと思います。
お菓子は、作り方を頭に入れる、材料を計量する、粉を使うお菓子は粉類をふるう。
という工程が一般的です。
では、なぜ、粉をふるう、という工程を行う必要があるのか、考えたことがおありでしょうか。
精製された粉の画像
まず、お菓子に入れる粉類をふるう、という工程は、
現在では「粉の中に空気を含ませる」「粉の材料を均一に混ぜる」という意味があります。
昔の粉ふるいの工程でも、この目的は一緒ですが、もっと怖い理由もあったのです。
粉をふるう理由その1、製粉技術の問題
大昔、日本でいう江戸時代、イングランドでいうとヴィクトリア朝の時代の頃までは、まだ製粉技術が今ほどの水準に達していませんでした。
そのため、大きな麦の粒の塊、口触りの悪い穀物の殻の破片などが小麦粉の中に入っていて、ふるってみてそういうものがあったら取り除き、必要なら計量をし直す、という行程が必要だったのです。
製粉用の水車小屋の画像
粉をふるう理由その2、異物、毒物が入っている可能性があったから
昔はもちろん防虫剤の類は今よりも発達していませんでした。
さらに、建築物の密閉性も高いとは言い難い状態でした。
そのため、販売されている粉の中に小さな虫、運送や袋詰めの過程で意図せず入ってしまった砂や石臼にかけた時の小石が混ざっている。
という、現代人からしてみるとかなり怖い事態が日常茶飯事でした。
そこで、粉類は何度もふるって確認してから使う、という必要があったのです。
これを裏付けるように、ヨーロッパの昔の料理や菓子のレシピには、最低4回は粉をふるってから使うように、と書いてあるものが大半です。
それだけ、危ない粉が「普及」していたためでしょう。
近代的な粉ふるい器の画像
なお、小麦や大麦の粉の場合、小石や虫や大きい粒が入っていてもそんなに健康上の問題にはならないのですが、特にライ麦粉だった場合には、「麦角」という毒物が入っていることが結構な確率であり、油断できないという事情もあったようです。
この「麦角」が入った粉を使ったパンを食べると、精神錯乱状態になったり、妊婦の場合は流産をする事があり、大変に危険なのです。古くから麦食文化のあるヨーロッパ地域では、村に1軒のパン店にて麦角が入った粉を使った為に、村人全員が錯乱して騒ぎになった、という事も昔は珍しくなかったそうです。同じイネ科である米に麦角がついた例は今迄に無いのですが・・・
現在の粉事情
もちろん、現代に於きましては、虫や異物が粉に入っていたり、大きな砕ききれない粒が粉に入っていることはほとんどありません。もちろん、国産の大手メーカーの粉なら、「麦角」が入っている心配はまずありません。
理論上はふるいにかけなくても「安全」です。
ですから、現在のレシピサイトには、ざっくりした家庭のお菓子なら、粉をふるいにかけなくてもよい、と書いてあったり、泡だて器で混ぜ合わせるだけで作ってもよい、と書いてあったりしますが、
粉はふるってから使った方が、お菓子の仕上がりや口当たりはよくなります。
材料が均一に混ざりやすく、空気も含んだ状態になるからです。
プロのパティシエがお菓子を作る場合は、粉類の種類+1を基本にしているそうです。
例えば、粉とベーキングパウダーを使うなら、混ぜて3回ふるってから使うという事になります。
よく膨らんだパウンドケーキの画像
最近出現した「便利な粉」
今は、いろいろな粉をよい割合で混ぜて何度もふるってベーキングパウダー等も配合した
「ホットケーキミックス粉」というものもあります。
そのため、お菓子作りは大変楽になりました。ここまでの進歩をありがたく思いながら、いろいろと賞味させていただきたいものです。
ホットケーキの画像
これは、私個人の意見です。
「香料」が入っていないホットケーキミックス粉がもっと普及してほしいと思います。
どうも「感性に合わない香料」が入ったミックス粉が多くて、気軽に使えないのです。
参考にしたサイトのURL
ウィキペディア 麦角菌
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BA%A6%E8%A7%92%E8%8F%8C
小麦粉の歴史
https://www.seifun.or.jp/pages/92/
篩網(粉ふるい器具)の起源